SoftBank World 2020は法人向けのアニュアルイベント
「SoftBank World」は、ソフトバンクの法人向けのアニュアルイベント。開始当初、ソフトバンクはコンシューマー向け通信キャリアのイメージが強く、法人向けのソリューションを提供している認知が低かったため、その認知拡大を狙い実施してきたという。
2020年は初の完全オンラインイベントとして開催。B2B向けのイベントとしては国内最大クラスのオンラインイベントとして、2日間の開催期間中に70を超えるセッションが行われた。
登壇者は孫正義氏をはじめ代表の宮内氏やマイクロソフトやZoomなど各パートナー企業からのエバンジェリストや海外のエグゼクティブなどITの最先端を行くそうそうたる顔ぶれだ。参加登録者4.4万人、視聴者数(再生回数)は11.9万人と、昨年対比682%を達成。1セッションあたりの視聴者数は平均1,000人を超えた。
ソフトバンクのオンラインイベントは約4年前、コロナウイルス感染拡大以前から始まっていた。「ただ、メインはオフラインのリアルなイベントで、展示やブースを設けて会場に集客し、それを一部オンラインで流す状況でした」と住谷氏は述べる。
オフラインイベントでは、会場のキャパシティーによって参加人数に限りがあったり、遠方の人が参加しにくかったりする。そこで、基調講演や一部の特別プログラムはオンラインでも見られるように中継して配信していた。
また、海外のエグゼクティブは以前からビデオ会議システムを使ってリアルタイムでセッションに参加していた。こうした背景から2020年開催が完全オンラインイベントといってもテクノロジーとして新しいものを使ったわけではなかったという。
初の完全オンライン開催には既成概念の打破が必要だった
完全オンライン開催に舵をきったのは2020年の夏頃。そこから同年10月末の開催まで、試行錯誤を繰り返してきた。それまで中継配信はしてきたが、あくまでリアルがメイン。オフラインでの既成概念にとらわれすぎず、オンラインならではの利点を最大限に活かすことに注力したという。
「物理的なイベントではアカウント営業がお客様をご招待してコミュニケーションを深め、エンゲージメントを高める場として活用できていました。それができない状態でイベントという場をどう活用すればいいのか。根本から考え直す必要がありました」(住谷氏)
大野氏が中でも苦労した点を尋ねると「一番苦労したのはオフラインイベントの前提や思い込みから抜け出すことだった」と振り返った。しかし、オフラインの「この日この会場に来られる人」という縛りから抜け出すことで、アイデアの幅が広がって企画も充実していったという。
では、結果的にオンラインはオフラインと同様のバリューを出せたのだろうか。
住谷氏は、ブース作りにおいてオンラインでもパートナーの動画やドキュメントを掲載して参加者が視聴できる仕組みを作り、同じような効果を出せたと自負する。ログイン認証など動線を考えたうえで、顧客のストレスにならない設計にしたユーザーエクスペリエンスはオンラインならではの工夫点だという。
大野氏によれば、そもそもオンラインイベントは、見たいセッションだけを見て消してしまう視聴者も結構多く、そこで興味のあるコンテンツを提示できるかはとても重要だ。一方で、オンラインでもイベント企画がまったく変わるわけではない。「ソフトバンクはUXやカスタマージャーニーに重きを置いている点が独特だ」と大野氏は語った。