オンラインコミュニケーションの変化
ユーザー層だけではなく、オンラインでのコミュニケーションにも変化が見られます。日経クロストレンドがまとめた「トレンドマップ2020年夏」では、「デジタル接客」という言葉が注目キーワードとして取りあげられました(参考:日経クロストレンド「トレンドマップ2020夏」)。
ZOOMやチャットを使ったコミュニケーションの増加
新型コロナウイルスの影響で外出の自粛を求められる中、アパレル業界を中心に、従来は実店舗で店員が行っていた接客対応をZOOMやチャットを利用してオンラインで実施しようとする取り組みが増えました。
直接店員さんとコミュニケーションが取れることには一定の意味があります。疑問や不安の解決や、探しものを見つけるサポートであれば、接客のチャネルがオンラインになってもその役割を果たせることでしょう。
しかし、ZOOMやチャットで実店舗の「接客」行為すべてをデジタル化できたかというと、そうではありません。例えば優秀な店員さんに「接客のコツ」について話を伺うと、コミュニケーションの内容と同等かそれ以上に「顧客に声をかけるタイミング」にかなりの注意を払っていることがわかります。
皆さんも、店頭で店員さんに声をかけることにためらいを覚えたことがあるのではないでしょうか。そんなときに店員さんが察知して声をかけてくれるとありがたみを感じます。こうしたことも接客行為の本質といえますが、ZOOMやチャットだけではこのような接客行為を再現するのは困難です。
オンラインはよりパーソナライズ精度を高めていく必要がある
オンラインでは、ユーザーが「なぜ離脱したのか」をデータから読み解くのは非常に困難です。実店舗では「背を向けて帰る」という具体的な行動として目に見えますし、注意して観察していれば「離脱の要因が何か」を推察することも不可能ではありません。「接客」行為を会話とだけ捉えるのであればZOOMを使うかチャットを使うかという話でいいでしょう。しかし、ユーザーの状態を観察から察知し、離脱を防ぐ行為も「接客」行為として考えるのであれば、それだけでは足りません。
これからの顧客の体験は、オンラインでの発想だけではなく「リアルの良い点をどう取り入れるか」「リアルで何気なく行われている行為の本質は何か」を考える視点が大切です。
パーソナライズというと、Amazonの商品レコメンドを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、パーソナライズは単に過去の購入履歴や属性情報だけで行うものではなくなってきています。今後は顧客の心理やリテラシーレベルを読み解くようなデータの活用の仕方、声をかけるタイミングなどの要素を織り込むなど、商品提案以上のより広義なものとしてパーソナライズを捉えていく必要があるのです。