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「2021年に活用を始めないと乗り遅れる」電通天野氏に聞くTikTok活用の今

 昨今マーケティングにおける接点として注目を集め始めているTikTok。電通メディアイノベーションラボの天野彬氏によれば「マーケターの多くが抱いているTikTokのイメージと現状には大きな開きがある」という。本記事では、マーケティング活用におけるTikTokの誤解、そしてTikTokをマーケティングに活用するポイントを解説してもらった。

幅広い世代の隙間時間を支える存在に

MarkeZine編集部(以下、MZ):TikTokユーザーの現状について、天野さんはどう捉えていますか。

天野:ユーザー数の増加トレンドに注目しています。AppAnnieが8月に出した2020年のアプリダウンロード数世界ランキングでは、Facebookを抑えTikTokが1位になりました。つい先日、TikTokのグローバルにおけるMAUが10億人を突破したと発表されましたし、日本の16歳以上のMAUも2021年8月時点で約1,700万まで増加しています(App Annie調べ)。

 また、体感的にもTikTokユーザーを見かけることも増えました。通勤中や待ち合わせなど、ちょっとした空き時間にTikTokを見る習慣が幅広い世代で起きているのを感じます。ワイヤレスイヤホンの普及や通信環境の進化により、隙間時間に動画を音声付きで見やすくなっているのです。

株式会社電通 電通メディアイノベーションラボ 主任研究員 天野 彬氏

MZ:TikTokと言えば若年層に強いイメージがありますが、その点はいかがですか。

天野:ダウンロード数の増加にともないZ世代をはじめとした10代から20代だけでなく、30代や40代を含めユーザーの幅が広がり始めています。App Annieのデータによれば、16歳以上の国内MAUは2019年8月から2021年8月までの2年間で約1,000万から約1,700万まで伸びています。また、25歳以下の構成比は、同期間内で45%から40%に低下しています。25歳以上の構成比は、同期間内で55%から60%に増加しています。

TikTokの国内MAU推移(16歳以上) ※端数は四捨五入

MZ:若年層以外へのアプローチ方法としても検討できるフェーズに来ているのですね。隙間時間にTikTokを見る習慣が浸透し始めているとのことですが、それはなぜだと思いますか。

天野:一番はレコメンドの精度の高さにあります。TikTokには「フォロー中」「おすすめ」という2つのタイムラインが存在しますが、「おすすめ」のタイムラインを見ている方が多いことが我々の調査でもわかっています。それだけ、TikTokのおすすめの精度を信頼しており、自然と自分が見たくなるコンテンツが流れてくると思っているのです。

 加えて、TikTokはショートムービープラットフォームなので、隙間時間でも数本の動画が見られて、何かしら役立つ情報やおもしろいコンテンツに出会える可能性が高いことも要因に挙げられます。

コンテンツも多様化が進んでいる

MZ:ユーザーの増加に合わせて、人気コンテンツにも変化が起きているのでしょうか。

天野:ユーザー数が増えるとUGCの多様化が起こります。2018年ごろはダンスなどの自撮り系、きれいな女性やかっこいい男性が出てくる眼福系の動画が人気で、企業側もダンスコンテストなどを催して新しい形のブランドコミュニケーションを試していました。

 2019年以降になるとお笑い系の動画やVlog(ブログの動画版)をはじめとした日常系の動画が流行しました。また、瑛人さんの「香水」やひらめさんの 「ポケットからきゅんです!」など、TikTok発でヒットする音楽も多数登場しました。

TikTokコンテンツの変遷

天野:最近では、東京オリンピックの期間中に各国の選手が選手村の様子や開会式、閉会式の様子を投稿していたのも印象的です。ソーシャルメディアは原理的に「いま」をみんなに伝え拡散する機能を持ちますが、TikTokでもそれが発揮されていると感じました。

 他にも、ソーシャルメディアや動画プラットフォーム上で人気の高い3B(Beauty、Baby、Beast)の動画、高度な編集・制作技術によるクリエイティブな動画、ビジネス関連の動画、食事や旅行、ファッションなどのライフスタイル系動画、メディアによるニュース動画など、コンテンツの種類も増え続けています。

 これに合わせて、企業のコミュニケーションも変化してきました。たとえば、日常系のコンテンツを通じて生活シーンを描く動画や商品・サービスのHow toやユースケースをわかりやすく伝える動画などを企業が発信するようになりました。また、人気のTikTokクリエイターと企業によるコラボレーションが増え始めました。

 「TikTokと言えばダンスでしょ?」と思う方もいるかもしれませんが、この数年でその状況から大きく変化しているというわけです。

短時間でフルアテンションを取れる強み

MZ:これだけTikTokの人気・影響度が大きくなっているのは、なぜだと思いますか。

天野:世の中の流れとTikTokの特徴が起因しています。世の中の流れに関しては、ユーザーの情報発信・取得が動画にシフトしていることが挙げられます。スマホの性能、通信速度が向上し、誰もがいつ・どこでも動画をストレスなく見ることができるようになりました。

 LINEリサーチの調査によると、「スマホで調べものをするときに使っているものは?」という設問でTikTokやYouTubeなどの「動画アプリ/サイト」と答えた割合は5割弱となっており、情報収集の手段としても主要なものになっているのがわかります。

そして、TikTokの特徴に関しては、フルスクリーンでフルアテンションを取れる点があります。TikTokは縦画面でフルスクリーンの音声ありと、視聴者が注視するフォーマットになっています。TikTok For Businessの調査からも、他の主要プラットフォーム3社のユーザー平均よりも、「音声ON」が160%、「全画面視聴」が162%という調査結果が出ていて、主体的な視聴態度だと言えます。

 これまでもVineなど短尺動画に関するサービスはありましたが、タイムラインの中に動画を埋め込むという発想で、既存のプラットフォームの範疇を超えるものではありませんでした。フルスクリーンというのはスマートフォンのポテンシャルを活かす一つの発明だったということです。

 さらに、前述したようなTikTokのレコメンドの精度の高さにはこういった現代的意義もあると考えています。話題を呼んだ一冊『中動態の世界』(東京大学大学院准教授・國分功一郎著、医学書院、2017年)では、私たちのよく知る能動態/受動態という二項対立にはあてはまらない「中動態」がテーマとなっています。

 ここでは単純な整理にとどめますが、能動態と受動態は、行為と行為する主体そのものを切り離して対立させるようなありかたを指す一方で、中動態は行為する主体がその行為の過程に含まれるような形式を指している。私たちの行動履歴が機械学習データとなり、それが「おすすめ」として戻ってくるという再帰的な情報との出会い方こそ、まさに中動態なのです。

 受動的に情報を受け取るだけでは飽き足らず、能動的に情報を探しつくせない現代において、若者を中心に求められているのは中動的な情報との出会いに他ならないのではないでしょうか。

広告メディアとしての価値も高まっている

MZ:最近では、企業によるTikTok活用も増えていますが、どのような活用法が考えられるのでしょうか。

天野:TikTokと言えばハッシュタグチャレンジの印象が強い方もいるかもしれませんが、TikTokでは様々な広告プロダクトなどの整備が進んでいます。そのため、基本的には他の動画プラットフォームと同じような構造で活用できるようになっています。

 公式アカウントの開設や予約型と運用型の広告配信、TikTokクリエイターを起用した広告キャンペーン、UGC創出を目的としたキャンペーンなど、他の動画プラットフォーム活用で行われてきたことはほとんどできる状況です。

 MAU(16歳以上)も1,700万近くまで増加しリーチも拡大しているため、広告メディアとしての価値も高まっています。テレビCMや動画広告を制作し、その素材をTikTokで広告配信することも可能です。これまでだとテレビCMとYouTubeやTwitterの広告を並行して配信することはありましたが、今後のメディアプランニングにおいてはTikTokも選択肢に入るのが定着してくると思います。

 また、TikTokのコンテンツレコメンデーションを応用した興味ターゲティングも活用できるため、的確なリーチが可能になります。広告を配信すればターゲットの反応がわかるので、それを踏まえた上でインフルエンサーマーケティングなどの施策に広げていくのが良いと思います。

TikTokはコンテンツ・クリエイティブ至上主義

MZ:以前よりもTikTokを活用したマーケティングに取り組みやすい環境になっているんですね。では、TikTokを活用する際他のSNSとどのように使い分けるのが良いのでしょうか。

天野:コンテンツを新たに用意するコストや余裕がない場合には、テレビCMなど他の媒体で使っている動画をそのまま展開する、もしくは縦型動画に再編集する形でも、高いターゲティング精度とリーチ力で十分に効果は引き出せると思います。なぜなら、短尺動画と15秒のテレビCM素材の親和性が高いためです。

 ただ、より高い成果を追い求めるのであれば、TikTokユーザーの短い動画で役立つ情報を得たい、おもしろいコンテンツを見たいというインサイトを踏まえたコンテンツ・クリエイティブ制作も必要だと思います。

 TikTok上のほとんどの動画が短尺になるので、短い時間で訴求ポイントを明確に伝えていかないといけません。商品の強みや実際の使い具合、ユースケースなどを短い時間で解像度を高く伝えられると効果も高まります。

 また、TikTokはコンテンツ・クリエイティブ至上主義と言えます。他のSNSの場合、フォロワー数がある程度増えないとコンテンツが見られないコールドスタート型ですが、TikTokはユーザーの多くが「おすすめ」を見ているため、フォロワーがまったくいなくても動画の再生数を伸ばせる可能性があります。

 これから活用を始める企業にとっては、フォロワー増加などを頑張る必要がないため敷居は低いとも言えるのではないでしょうか。

TikTokは短期間での盛り上がりが必要

MZ:TikTokはコンテンツ・クリエイティブ至上主義とのことですが、ではどのような動画を作っていく必要があるのでしょうか。

天野:短い時間で起承転結の展開を作り、盛り上がりのポイントを用意することが求められます。あえて単純化するなら、Instagramで必要なのが「映え」だとすると、TikTokには「盛り」が求められるというわけです。

 TikTok上の動画を見ると、多くのクリエイターの方は動画にきちんとオチを付けています。また、あえてオチを付けないでユーザーからのコメントによる突っ込みを生む方もいます。そのようにユーザーが最後まで離脱しないよう、驚きの期待感を持続してアテンションが継続する構造になっていることがわかります。企業が公式アカウントや広告で発信する際も、この点は非常に大切です。

 ただ、いきなりそのような動画を作るのはハードルが高いと思いますので、最初は商品紹介動画やレビュー動画など、クリエイティブジャンプをそこまで仕込まない形の動画でも十分です。

 また、クリエイターとコラボレーションしてTikTokと親和性の高い動画を制作する手もあります。その際はクリエイターの特性と商品・ブランドの間にどのような接点があるのかを考えることが求められます。

 フォロワー数が多い、動画が再生されている人気の人なら誰でも良いわけではありません。きちんと自分たちの訴求したい内容に合わせて、そのスタイルに近いコンテンツを投稿しているクリエイターをキャスティングすることが重要です。ファンもその辺りが満たされていない動画は楽しんでくれません。

 そして、彼らにきちんと伝えてほしいポイントを説明しましょう。その先は、クリエイターの自主性をある程度尊重すればクオリティの高い動画が完成するはずです。

MZ:では、最後に読者の皆さんにTikTok活用に関するアドバイスをお願いします。

天野:今後ますますショートムービー領域は盛り上がっていきますし、その動向や考察をまとめた私の新著『ビジネスはスマホの中にある―ショートムービー時代のSNSマーケティング―』(世界文化ブックス、2021年12月刊行予定)をお読みいただくと、本日語り切れなかったポイントが伝わるかと思います。

 新しいサービス全般にあてはまることですが、活用が早いほうが試行錯誤もできてナレッジも溜まりますし、競合も少ないためチャンスも大きいと言えます。特にこの領域においては、「まずやってみよう」は精神論ではなく、重要な戦略に他ならないのです。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/21 15:47 https://markezine.jp/article/detail/37145