単なるツール導入で終わらせない
新型コロナウイルス感染拡大によって、小売業界においては「非接触、非対面」「三密回避」「短時間での購買行動」といった対応が求められるようになりました。パンデミック収束後2~3年後までの対策を中長期的に見据えていくべきとも言われています。
消費者はキャッシュレス決済・モバイルオーダーなど新しい生活様式で浸透したデジタルツールに慣れ始め、リアル店舗もDX化が進み始めています。しかし、その一方で自社のユーザーが求めるニーズや行動様式を見出せずに単なるデジタルツール導入で終わっているケースが出てきていることも事実です。そのような店舗DX・OMOでは結果的にユーザーとのつながりが増えず、新しい販路を見出せずに失敗してしまいます。
重要なことは自社が抱えるユーザーのニーズに沿って「その店舗でどんな体験ができるのか」の価値をデジタルとリアルの観点で見出すことです。ユーザーにとっての体験価値を整理し土台を整え、必要な施策を洗い出し、実施後には得られるデータや行動を可視化し、次の施策や販促に向けた取り組みを行えるサイクルを作るようにしていく必要があります。
ECも発達し、リアル店舗へ行く理由を探すようにすらなった今だからこそ、「このお店へ行きたい」「便利だから使いたい」とユーザー自らが求める体験を届けるにはどうしたら良いのでしょうか?まずはユーザー視点のフレームワークを使って、自社のユーザーがどのようなタイプで何を求めているのかを整理してみましょう。
ユーザー視点でのフレームワーク
自社が提供している価値を整理
最初に、自社の店舗やサービスは「どのような価値を提供しているのか」「サービスの売りポイント」について体験シートを用いて整理します。まずビジネス=自社の視点で現在提供している価値を書き出します。次に、ユーザー視点である「ユーザーが店舗に求めていそうなこと」の項目の中から、自社の価値提供とフィットしそうなことにチェックを入れていきます。該当しそうな項目がない場合は空欄に記載していただいても構いません。
ユーザーが求めていることは何か?を深く考える
次に、体験シートでまとめた売りポイント・自社に求めていることを体現しているユーザーはどのような人なのか?を捉えていきます。
年代、性別、在住地域などの属性に加え、店舗への来店頻度、よく買うものや買い方のスタイルなどの項目を記載します。幅広い層をターゲットとして捉えている場合でも、属性によって求めるニーズや施策の内容は変わるため、ある程度絞った状態で整理すると良いでしょう。また、自社のユーザー層が多岐に渡っている場合は、ユーザーシートは何パターン作っていただいても問題ありません。
自分とかけ離れた年代や性別のユーザーを想像しにくい場合は、身近なロールモデルになりそうな人に声をかけて簡易的にヒアリングするだけでも、想像と現実のギャップを埋めやすくなります。
なお、この時点では細かい属性まで洗い出す必要はなく、プロジェクトメンバーで認識を合わせられるレベルに落とし込めれば問題ありません。時間をかけすぎずにまとめてみましょう。最終的にはメインターゲット層・サブターゲット層で切り分け、2パターンほどにまとめることを意識してください。
体験価値シート・ユーザーシートの記載後はプロジェクトメンバー全員で認識を合わせる場を作り、特に注力したいユーザーについて議論しましょう。すべてのユーザーのニーズを叶えようとすると、施策としての最終着地点が曖昧になり、失敗する可能性があるため「特に注力したいユーザー」に絞ることが大事なポイントです。そして、仮説レベルの状態から、より具体的なユーザーに着地させるために定量的・定性的な調査を組み合わせ、「現実のユーザー」とシートで仮説立てた内容にギャップがないかを確認します。たとえば、次のような調査が考えられます。
定量的調査の例:アンケート・アクセスログ(ECやWebサイト等)
定性的な調査例:インタビュー・フィールドワーク(現場での視察)
これにより、想定していたユーザーを具現化でき、次のステップである「行動の可視化」を行いやすくなります。
POINT
1:まずはメインの担当者でユーザーシートを全て埋めてみる
2:会議の場でプロジェクトメンバーを集め、担当者が埋めたシートの中身をディスカッションする
3:今後、特に注力していくべきユーザーの層をマッピングする
4:定量・定性調査を用いて、想像レベルのユーザーをより具現化する