コロナ禍で変化する、コーポレートサイトの課題
従来のコーポレートサイトは、企業概要や製品情報の掲載、サービスカタログとしての機能がメインだった。しかし、コロナ禍で対面での営業活動が制限されている現在、リードの獲得ひいては売り上げ拡大への貢献が、これまでより強く期待されるようになっている。
問題は、前社の機能は広報の担当領域である一方、後者は営業・マーケティングの担当領域であるというように、1つのコーポレートサイトに異なる部門・異なる目的が混在していることだ。同様の課題に直面し、頭を抱えている企業も多いのではないだろうか。
サイトコアでシニアバリューエンジニアを務める青木氏によるセッションは、こうした状況を踏まえて実施された調査『withコロナ afterコロナ時代の企業のWebサイトの在り方』の共有から始まった。同調査は、日本の600社以上の上場企業の協力のもと、広報と営業マーケティングの両方の担当者を対象に実施されたもの。
まずは大前提であるが、対面での営業やオフラインイベントの開催などリアルな場でのコミュニケーション機会の減少は、営業マーケティングと広報担当者の両者で共通の課題となっていることが調査結果からわかった。では、具体的に企業間コミュニケーションにおけるリアルとデジタルの比率はどのように変わっているのだろうか?
「調査結果を見ると、今期は『コーポレートブランディング(51.0%)』や『自社の活動や事業内容に関する認知拡大(52.0%)』など、広報領域のコミュニケーションでデジタル比率が高くなっています。我々が注目したのは、マーケティング領域である『製品・サービスのリード創出・販売支援』の項目です。来期ではリアルの比率が-8.4%と大きく下がっているものの、デジタル比率は+5.0%の上昇にとどまっています。この数字から、リアルのコミュニケーションを減らした分、どのようなコミュニケーションの比率を上げていけばいいのか、悩まれている企業が多いと読み取りました」(青木氏)
部門によって異なる、コーポレートサイトの目的
次は、コーポレートサイト運用の目的および現在の課題について。ここでも部門によって、捉え方に違う傾向が見られるという。
「営業・マーケティングの担当者は『製品サービスに対する認知拡大』を重視していますが、広報担当者は『自社の活動や事業内容に対する理解』を重視しており、やはりはっきり違いが出ています。恐らく、広報担当者も製品サービスの認知拡大、リード創出、販売支援の重要性を理解してはいるものの、他の目的と比較して相対的に優先順位が落ちてしまっているのだろうと思われます」(青木氏)
以上のことから、コーポレートサイトの目的が社内で分断されてしまっている状況が推測できる。その結果危惧されるのは、サイトに蓄積されたデータも分断されてしまう可能性だ。これについて青木氏は、「コーポレートサイトの目的に関する広報、営業マーケティングの認識の違いは、組織内の“仕組み”が整っていないことに原因があります」と話す。
状態チェック:自社のコーポレートサイトのレベルは?
以下は、サイトコアが独自に構築したデジタル成熟度の診断モデルだ。縦軸が戦略的価値、横軸が成熟度を表しており、成熟度が高まるほど戦略的な価値が上がることを示している。
【レベル1】確立:企業活動、製品、サービスの情報を配信することのみに注力しており、訪問者をセグメントできておらず、一対多のコミュニケーションをしている。会社概要をコーポレートサイトにアップしただけの状態。
【レベル2】連動:ビジネスの目標に沿ったデジタル目標を策定・測定できている状態。
【レベル3】最適化:顧客体験が戦略の柱として認識されており、顧客データと体験データに基づいた最適化がなされた状態。
【レベル4】育成:MAやML(機械学習)を使って、よりパーソナライズされたコミュニケーションを実現した状態。
「多くのコーポレートサイトが『確立』の段階でとどまっています。意外かもしれませんが、サービスサイトにMAを導入して最適化をはかっている企業でも、コーポレートサイトはまったく手つかずの状態であるケースが非常に多いのです」(青木氏)
最も高度なレベル5の「個客化」は、関連したすべてのシステムがシームレスに連携し、閲覧者に個別の体験を自動で提供できている状態である。ここに行き着くまでには、単にコーポレートサイトを構築・運営するだけでなく、組織全体で顧客志向、顧客基点に基づいて活動することが求められるという。
1つのプロダクトで叶う、サイト内の顧客体験のパーソナライズ化
では、デジタル成熟度のフレームワークに基づいて、サイトコアではどのようにWeb戦略のサポートをしているのだろうか。ここで紹介されたのが、コンテンツの制作管理から各種チャネルへの配信、eコマースまでをエンドツーエンドで支援するDXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)だ。
DXPは、Webサイトの構築、サイト上に掲載する画像や動画などのデジタルコンテンツの管理、メール配信を中心としたマーケティング、さらにはeコマースの機能を1つのプラットフォームに搭載。サイト上の顧客体験のパーソナライズ化がこの1つのプロダクトで実現する。
「DXPを活用して個別の体験を提供することで、企業やブランドに対するエンゲージメントを高めることができる点が最大の特徴です。ユーザーをいくつかのセグメントに分け、セグメントごとに個別のコンテンツを表示し、ユニークな体験を提供することができるのです」(青木氏)
エンゲージメントが10倍以上アップ!トヨタ・オーストラリアの事例
デジタル成熟度のフレームワークに基づきDXPを活用した事例として、トヨタ・オーストラリアのWebサイトリニューアルのプロジェクトが紹介された。プロジェクトのミッションは、より多くの見込み客をディーラーサイトに誘導すること、新しいカローラの認知拡大の2つ。そして、ポイントはパーソナライゼーションだったと青木氏は振り返る。
「ユーザーをいくつかのセグメントに分け、それぞれ最適なコンテンツを提供し、Webサイトに訪れたユーザーの体験を最適化すること。それがこのプロジェクトで最も期待されていたことでした」(青木氏)
そこで、取り入れたのが「エンゲージメントバリューポイント」という機能だ。サイト内のユーザー行動や閲覧されたコンテンツに応じてポイントを付与し、製品への関心度を計測。そのポイントに合わせて、コンテンツを出し分けたという。
「既存顧客を含む車好きなユーザーと設定しているセグメント“カテゴリリーダー”では、滞在時のポイントが1.187%、つまり約11倍になりました。これは、サイト内でのエンゲージメントが10倍以上高まったと言っても過言ではありません。直帰率も32%低下し、閲覧ページ数、平均滞在時間もデフォルト値を大きく上回りました」(青木氏)
この事例のポイントは、キャンペーン用に構築したWebサイトでなく、通常のコーポレートサイトで行われたプロジェクトだったことだ。キャンペーン用であれば複数のランディングページを用意してエンゲージメントを高めることもできるが、通常のコーポレートサイトでユーザーごとにコンテンツを出し分ける事例は、日本ではまだまだ少ないという。
「コロナ禍で対面営業の機会が減少している今、コーポレートサイトのマーケティングへの利活用は、より一層重要になります。そのためには、複数の部門の目的、要求に応えられる仕組みが必要です。DXPは、ビジネス視点から複数部門の目的と要求に応える機能をそろえています」(青木氏)
サイトコアでは、「デジタルの世界で人と人とのつながりを作る」という企業理念のもと、DXPを提供している。日本企業だけでなく、グローバルな有名企業も多く導入しており、ビジネス成長を実現している。セッションで紹介されたコーポレートサイト戦略を参考に、今一度自社のコーポレートサイトの状態を調べてみてはいかがだろうか。