大抵はスルーされる?意外なほど伝わらないブランドの理念
新しく事業を始めるにあたり、限られた予算の中で、どのような施策を打っていくのか。
ECの場合、施策ごとにコンバージョンを見ながら細かく予算配分をして運用していくことで、ある程度は迷いなく運用ができることと思います。
それでもやはり、「自分たちのブランドは、お客さんからどう見られているのだろう?」ということは、作り手からすると気になるのではないでしょうか。
以前このコラムでも、エコやエシカルを打ちだしたようなコンセプトは、調査を行うと実態よりも購買意向や好感度が高めに出やすい、という事例を紹介しました。ブランドの価値伝達がうまくいっているか、本当の意味で明らかになるのはやはり発売後なのかもしれません。
そして、ある意味当然のことではあるのですが、実際に購入いただいたお客さんであっても、意外なほどこちらの思惑は伝わっていないケースがあります。特にパーパスのような理念やビジョンのようなものは、たとえばブランドサイトにコンテンツとして置いたとしても大抵はまずスルーされます。
だからこそ、各社表現を工夫し、言葉だけでなくビジュアルや動画など様々な手法を用いながら価値伝達していらっしゃるわけですが、つまるところパーパスというものは単に表明すればよいというようなものではなく、体現することが一番重要なのです。
「みらいのごはん」のパーパスは「子どもたちのみらいを守り続ける」こと。そのために、チームは製品開発を通じて地域コミュニティへの貢献、顧客の役に立てるようなコンテンツの充実などを、まずは地道に行うことにしました。
今後、ブランドの活動全てが一貫して「子どもたちのみらいを守り続ける」というパーパスを体現していくため、さらなる仕組みづくりと成果が問われてくるフェーズになります。
企業が顧客に提供すべき「より積極的な社会参加の仕組み」
パーパスを体現するための仕組みには、今回本編に登場したクラウドファンディングや、いわゆる「コーズ・リレイテッド・マーケティング」のような気軽に寄付に参加できる仕組みもありますが、筆者が個人的に今後存在感を増してくると考えているのは「より積極的な社会参加の仕組み」です。
たとえば、高級なスキンケアクリームで知られる「ドゥ・ラ・メール」というブランドは、製品に海藻由来の成分を用いていることから、一貫して海を守る活動「ドゥ・ラ・メール ブルーハート」を行っています。主な活動として、海洋保護のための基金や情報発信だけでなく、顧客も参加できるビーチクリーン活動なども積極的に行っています。
高級スキンケアクリームの顧客像と地道なビーチクリーン活動は、一見ミスマッチのようにも思えますが、実際は顧客に社会活動に参加する機会を提供することがブランドへの深い信頼につながるからこそ、このような活動を実施されているのではないかと思います。
内閣府の調査によると、ボランティアに参加する人の主な理由として「社会の役に立ちたいと思ったから」が約半数を占めています(出典:『平成28年度 市民の社会貢献に関する実態調査 調査票』PDF)。
一方、ボランティア活動をしていない人の主な理由は「参加する時間がない」「十分な情報がない」などが上位に挙がっています(出典:同上)。時間の制約が最大の要因ということになりますが、実際には、それほど多くの時間を割かなくてもできる社会参加はたくさんあります。要は情報も含め「踏み出すきっかけがない」ということなのではないでしょうか。
ここでもしブランドが顧客に、社会活動に踏み出すきっかけを提供することができれば、結果的に「社会の役に立てた」という自己肯定感をお客さんに提供しつつ、社会課題解決の担い手を増やしていくこともできるのかもしれません。
「みらいのごはん」は顧客と一緒に「子どもたちのみらいを守り続ける」活動を体現できるのか? プロジェクトチームの今後の活動にぜひご期待いただければと思います。
