他者に入り込まれない“出島時間”欲求の高まり
もうひとつトライブとして「ネオノマド」を紹介する。ネオノマドとは東京と長野など、生活拠点を2ヵ所持って暮らす人々のことだ。彼らに2拠点生活のメリットを尋ねたところ、以下のような答えが得られたという。

片道2時間の移動時間を有効活用する様子から、林氏はこのトライブを「出島時間」の欲求と分析する。「出島時間」とは、他者に入り込まれない時間のこと。静かに本を読んだり、考えごとをしたり、戦略を練ったりする時間に価値を感じ、日々の中に確保したい人が増えているのだという。

「出島時間」の観点でみると、移動にこだわらずともブースなどに入ることでもその時間は得られる。「オフィス設計やオフィス家具の会社なら、未来のデザインを考える際に、このトライブを発想の種として使うと議論の出発点としておもしろい観点になります」(林氏)
毎日を上機嫌に過ごしたい「CBDラバー」
続いて林氏は、「ネクストヒット」を生むためのヒントとして、“2030年にはマスユーザーになるかもしれない”3つのトライブについて紹介した。
1つ目は「CBDラバー」。CBDとは大麻に入るカンナビジオールという成分で、ストレスを緩和して痛みを和らげる。世界保健機関(WHO)も安全だと認めているものだ。
CBDラバーとはCBD入りのオイル、サプリメント、ドリンクなどCBD関連のプロダクトを愛用する人々である。アメリカでは2018年にCBD関連薬が認可され、市場が急成長。日本でも法律が定める基準を満たせば、CBDを入手し利用することは合法であり、現在プロダクトやCBD関連の起業家が増加中である。
SDGでは「2030年の生活者は常に上機嫌でいることを目指し日常の行動を工夫する」と予測し、それをムードエンハンス欲求と呼ぶ。

「CBDラバーたちの話から考察すると、毎日において“上機嫌でいられる時間を最大化したい”という価値観が見えます」(林氏)。
ストレスを受けて鬱にならないために行動するのではなく、「普段よりも10%を気分良く過ごす」ためにお金や時間を使う。筋トレも、ファスティングも、CBD摂取も、自分自身で気分が良いと感じる時間を増やすという同じゴールを目指しているのだ。

「新しい価値観を頭に入れて流行っている商品やサービスを捉え直すと、今までとは違う視点で自社製品や技術の活用法が見えてくるのが、トライブリサーチのポイントです。上機嫌で過ごすことができる○○とは? という視点で考えてみると、新たな発想が生まれるかもしれません」(林氏)

