パーパスを押し出すコミュニケーションが有効な場合とそうでない場合
――自社のパーパスを整理し、顧客や社会とのコミュニケーションに反映させていきたいという企業もあると思います。気をつけるべき点はありますか。
一人ひとりの生活者にとってブランドがどのような立ち位置にあるかを考えたうえで、コミュニケーションを設計する必要があります。図表2の最下層に位置する「知らない」企業が必死にパーパスを訴えていても、なかなか興味を持てませんし、「そもそもあなたは誰ですか?」と聞きたくなりますよね。
逆に、「知っている」「嫌いではない」企業が社会に対してどんなことをしていきたいのか語っていたら、「普通の企業だと思っていたのに、意外とやってくれるじゃない」となんとなく好きになるのではないでしょうか。
ダイキン工業では獲得したいブランドの全体構造については、図表3のように整理しています。
中段にあるABCの要素が、コミュニケーションを行う上で指針となる要素です。
「C.何をやってくれる(提供価値)」というのがパーパス寄りの話で、ブランドを「知っている」人が「嫌いではない」「なんとなく好き」に引き上げたい時に、効きやすい要素です。一方ブランドを全然知らない人に対しては、「A.実績のある総合空調専業企業」という要素を伝えていきます。ちなみに「B.果敢なリーダーとしての思い」はパーソナリティの話で、発信のトーン&マナーを合わせるために設定しています。
この整理を基に、発信内容を組み立てていきます。たとえば若年層がターゲットのインターネット番組に出る場合は、社名を認知していない視聴者が含まれるので、Aを強調するでしょう。ビジネスパーソン向けの雑誌ならば、既に多くの読者が事業内容や実績を知ってくださっているのでBとCの側面を押し出して、さらに好きになってもらうことを目指します。
――最後に、パーパス・ブランディングの実効性を高めていくためのアドバイスをお願いいたします。
どれだけ腹落ち感のあるパーパスを掲げられるかが重要です。「なぜ我が社が」というところが極めて重要で、「別に他の会社でもできるよね」と思われてしまっては、行動は変わりません。ほかの会社にやられると嫌だ、という部分を見つけ、地道に働きかけていくことで、社内外の関係者、社会との共通認識を作っていけるはずです。
