【事例で考察】文脈の“悪用”となりかねない2つのケース
【ケース1】競合記事を集中的にターゲティングした例
とある自動車メーカーは、新しいSUVの発売にあたり、競合他社からのシェアを奪いたいと考えていました。そこでコンテクスチュアル広告を使い、他社のSUVが取り上げられている記事を選んで集中的に新車の広告を掲載しました。
その結果、SUVオーナーや購入を検討している層から新車への興味を獲得することに成功。ブランドサイトへのトラフィックや試乗申し込みを多く得ることができました。
これは、一見、順調に成果を上げたように見えますが、注意が必要な例でもあります。競合からのシェア獲得を目指すのは間違ったことではありませんが、コンテクチュアル広告においては、慎重に検討することをお勧めします。
なぜなら、明らかに競合他社をターゲティングしていることが、ユーザー側からも透けて見えるリスクが大きいからです。コンテクチュアル広告の良いところは、プライバシーに配慮しユーザー体験を大切にする点で、いわば、その健全性や良心にあります。こうした健全さや良心が企業姿勢を伝え、良い企業イメージに結び付くと私は考えますので、あからさまに競合記事をターゲティングすることが自社の長期的なイメージにとってプラスかどうか、一度立ち止まって考え直すことをお勧めします。
【ケース2】ネガティブな文脈から興味関心に繋げた例
とあるダイエット食品メーカーは、運動不足や肥満を気にしているユーザーに向けて、自社商品をアピールしたいと考えていました。そこで、コンテクチュアル広告を使って、「運動不足」「肥満」「成人病」などの文脈を集中的にターゲティングしました。
その結果、こうした不安や心配を抱える人々からの商品ページへのアクセスが増え、購買促進の効果も見られました。
これも一見あり得るアプローチに見えますが、私は懸念を示したいと思います。
文脈を使って特定の関心をターゲティングすること自体には何ら問題ありませんが、ターゲティング先の記事がネガティブまたは不安を煽るニュアンスのものである場合や、掲載する広告表現がその不安に乗じて自社をアピールするものである場合、ユーザー側から見てこのメーカーの印象は必ずしも良いものにはならないでしょう。
同じ「関心を捉える」と言っても、ターゲティング先の記事を前向きなウェルネス・ヘルスケア関連とする、広告のクリエイティブを前向きなものに見直す、などの工夫が必要です。現在のコンテクチュアル広告技術は進んでいますので、多くの場合、こうしたネガティブ文脈への広告配信は回避することができますが、文脈設計・広告表現開発の際には気を付けたいポイントです。