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リゾームマーケティングの時代

データビジネスの本質とGAFAの狙い――Google銀行と情報銀行の不可能性、そしてBaaSの破壊力

 今、データビジネスに何が起きているのか。「データを集めればビジネスになる」という幻想から抜け出し、激化する戦いの中で成功を収めるには。データビジネスの本質とGAFAの狙いを押さえる。

「データや情報」そのものに価値はない。

 「エジソンは電球を発明したのではない。光を発明したのだ。光の売り方を!」

 これは、Googleなどプラットフォーマー側で働いて学んだ、データビジネス成功の秘訣だ。

 2021年10月、私はあるオンライン・イベントに登壇した。情報銀行やデータビジネスがメインのテーマだったのだが、そのパネラーの一人が以下のような発言をした。

「うちの社内には、たくさんデータがあるのですが、いくらの価値がありますか?」あるいは、「どうやって、データの価値を算出すればいいでしょうか?」こんな質問をクライアントからよく受けるんです。

 この手の質問は、私も、何度か受けたことがある。その度に、「データや情報そのものには価値はない」と答えている。

 先のオンライン・イベントでも、「データや情報を集めたら、それだけで、価値が生まれる訳ではない。それは幻想だ。需要と供給があって初めて価値が生まれる」という趣旨で、冒頭のエジソンの話をした。

電球の発明者はエジソンだと言われていますが、実際、白熱電球を発明したのはジョゼフ・スワンという人物でした。エジソンが行ったのは、スワンの発明した白熱電球を「改良」して「実用に耐えうる品」に改良した事だった。

出典:「エジソンと日本の意外な関係」(NTTファシリティーズ「でんき案内板」)

 ここで重要なのは、「実用に耐えうる品」という点だ。スワンが発明した白熱電球のフィラメントは紙を炭化させたもの。そのため非常に耐久時間が短く、発光時間が1分も持たないという唯一にして最大の欠点があったそうだ。

 発光時間が1分では、その白熱電球は使えない。使われなければ、需要はない。需要がなければ、売れないのだ。だから、「光をどうやって売るのか?」が問題になる。光に潜在的な需要があるのはわかっている。だが、その売り方が、つまり、発光時間を延ばす方法が、誰にもわからなかった。

エジソンに学ぶ、データビジネス成功の秘訣

 エジソンの話を教えてくれたのは、Googleの戦略チームにいたアメリカ人だった。彼は、「エジソンは光をパッケージにした」と言った。「家庭でも使えるように『耐久性のある電球というパッケージ』に仕立てた。それが、エジソンだったのだ」と。

 これが、私の学んだ、データビジネス成功の秘訣だ。少し乱暴な言い方だが、光とデータは本質的に同じだ。

 光は、至るところにある・普遍的に存在する(universal)。つかみどころがない・触ることができない(intangible)。普遍的、あるいは、遍く(あまねく)とは、「ここ」にあると同時に「あそこ」にある。「今」あると同時に「過去」にもあるし「未来」にもある。つまり、時空を超越した存在である。

 データ(あるいは、情報)は、そもそも、抽象的な概念である。ゼロは「0」を意味するが、触ることができない(intangible)。「イチ=1」も同様だ。抽象的な概念なので、遍く存在する(universal)。「過去」にもあったし、「現在」もあるし、「未来」にもある。私の頭の中にもあるし、世界中のインターネットの中にもある。つまり、時空を超越した存在である。

 だから、データビジネスは、エジソンの光から学ぶのだ。エジソンが光をパッケージに仕立てたように、データや情報をパッケージに仕立てるのだ。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/01/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38129

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