成長過程で「オーガニックのハイエンド化」を回避
MZ:マッシュビューティーラボでは、Cosme Kitchenを中心にさまざまな新規ブランドを立ち上げ展開されています。こうした事業展開の狙いは?
椋林:ひとえに「オーガニックライフを広めたい」という思いがあります。たとえば、2013年に立ち上げた「Biople(ビープル)」というブランドがありますが、これは本当の意味でオーガニックライフを日本に広げていくためには、欧米の先進エリアのようにオーガニックの商品をデイリーに当たり前に使えるようにしていかなければいけない。そうでなければ、Cosme Kitchenは奇をてらったハイエンドな空間になってしまう――そう考えて、誕生させたブランドです。

Biopleではスキンケアやメイクアップの商品だけでなく、「未病予防」という観点から、サプリメントやスーパーフードによる「内側と外側のダブルアプローチでのセルフケア」を提案しています。また、クリアリングアイテムによる「心のデトックス」、女性ならではのお悩みに寄り添った「フェムケア」など、さまざまなカテゴリをいち早く提案し、積極的に取り扱ってきました。「BIOPLE.jp」というオウンドメディアでは、オーガニックにまつわるいろいろな情報も配信しています。
デジマ黎明期から当たり前に行っていた「デジタル活用」
MZ:ここからマーケティングについて伺っていきます。まずは、基本方針から伺えますか?
椋林:冒頭でお話したように、もともとモバイルコマースの領域から始まっているので、デジタルも活用しながらマーケティングを考えるというのは、我々にとってはごく当たり前なことです。たとえば、商品棚にQRコードを付けておき、そこからECサイトへ誘導するという施策がありますよね。これは今でこそよく見かけるようになりましたが、我々の場合、ブランドがスタートした2004年から同じことをやっていました。まだ当時はガラケーで、しかも従量課金だった時代です。あの頃から、QRコード先のページに動画を載せてみよう、などの話をしていましたね。

MZ:Cosme Kitchenは、SNSの運用にも力を入れています。ブランドごとにSNSアカウントがあるほか、スタッフが運営する店舗ごとのアカウントもありますよね。
椋林:SNSをはじめとするデジタル上の接点も、お店作りとまったく同様に考えています。リアル店舗で空間を作り込むのと同じように、デジタルではSNSやホームページを通して我々の世界観を表現するという考えです。
実は、Cosme Kitchenで提供している商品のうち約9割は通年同じものです。つまり、ずっと定番の商品をお客様に提案しているのです。ですので、春夏秋冬ごとに、あるいは2021年、2022年とその年の世の中の流れを汲んだ上で、形を変えて表現していかなければ、飽きられてしまう。マーケティングは、その方法論を構築することも含めて考えています。
アプリを基軸に店舗&ネットの購買体験をパーソナライズ化
MZ:マッシュビューティーラボでは、アプリ「GO GREEN MEMBER’S」も提供されています。これは、デジタルマーケティングの基盤となるものだと思いますが、いかがでしょうか?
椋林:そうですね。アプリには、将来の購買体験を見据えた機能がぎっしり詰まっています。
まず一つ目に「お客様のことを理解する」ための機能として、アプリ内でアレルギーに関する質問をしています。小麦や大豆など何かアレルギーを持っているものがあれば、設定でチェックを入れることができるようになっていて、今後はその成分が入っている商品をカートに入れると会計時にアラートが出るような機能も実装検討中です。同じように、肌タイプ別のエントリーもできるようになっており、こちらは商品レコメンドのパーソナライズ化に向けてデータベースを蓄積中です。
こうした商品提案のパーソナライズ化が、リアル店舗でもネット上でもできるようになってくると、たとえば、敏感肌のお客様がいらっしゃった時にその後の経過を一緒に観察していけるような仕組みも生まれてくるのではないかと思っています。そんな未来予測も含めて、アプリの重要性はますます増してくると考えています。【後編へ続く】
後編『【後編】コロナ禍でも大きく成長 日本に“オーガニック”を広めるべく進み続けるコスメキッチンの挑戦』は、明日公開予定です。女性に広く支持されているブランド「Celvoke」の誕生秘話、コロナ禍での躍進、OMO店舗の出店などについて伺っています。