SaaS企業のブランディングは「未来の賛同者づくり」
登壇した沢村氏は、BtoCマーケティングを経験したのち独立を経てfreeeにジョイン。現在はBtoBビジネス、特にスモールビジネス事業のマーケティングに従事している。
一方の石田氏は、新卒で博報堂に入社。複数のBtoC企業においてマーケティング業務を経験し、現在はクラウドサーカスでマーケティングの責任者を務めている。
石田氏はまず、SaaS企業がブランディングをする意義について解説する。MAやCMSなど「誰もが使いこなせるマーケティングSaaS」を提供するクラウドサーカス。同社がブランディングへ取り組む背景には「企業・事業・商品の未来の賛同・共感者を増やす」という意義があると語る。
BtoBの場合、顧客とサービスの間に社員や流通といった様々なメディア・ステークホルダーが挟まっている。石田氏はブランディングにおいて「オセロをひっくり返すように関係者を共感者へと変えてゆき、最終的には未来の顧客にも賛同者になってもらうこと」がポイントだとした。
賛同・共感者作りを一朝一夕で実現するのは難しい。そのため、立ち上げ期から急成長期、拡大期、成熟期と「ブランドサイクルにあわせた戦略をとり、時間を味方につける必要がある」と指摘する。
ブランディングを広義と狭義に分けて推進
実際、石田氏が2年ほど前に行ったリブランディングでは、ばらばらだったブランドを資金投資する手前でファミリー化。賛同者を増やしやすい構図にデザインした。限られた資金の中でたくさんの商材を訴求するのは困難なため「まず立ち上げ期にとるべき戦略は何か」を見極めたという。
沢村氏はクラウドサーカスの一連の取り組みについて「様々なプロダクトの中からスタープレーヤーを作るのではなく、全体を底上げするという意思決定はすごい」とコメント。石田氏は次のように応える。
「大きく賛同者を広げていきたい場合、1ヵ所に投資をしても他と連動できなければ意味がありません。その後のプロモーション効率を考慮しても、全体の底上げが最適解だと考えました」(石田氏)
続いて沢村氏が、freeeとして考えるブランディングの意義を解説。同社ではブランディングを広義と狭義の2種に分けて捉えているという。ロゴの制作やミッションのコピーライティングなどが広義のブランディングにあたり、狭義のブランディングはマーケティングにおけるブランディングを指す。
様々なサービスを展開するfreeeだが、沢村氏曰く「会計ソフト屋としてのイメージが強い」という課題も。ミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」の通り「スモールビジネス全体に価値を提供する企業」というイメージを実現したい──これが広義のブランディングにおいて今のfreeeが目指す姿だと語る。