花王とパナソニック コネクトが考えるクッキーレス対応
宮本氏はクッキーレスにより広告主が直面している課題として「リーチ」と「フリークエンシー」の2つを列挙。オンターゲット率が低下する、あるいはリーチが広がらないという課題に加え、当て過ぎ──つまり過剰フリークエンシーの課題を指摘する。
広告主として自社のマーケティングを率いるパナソニック コネクトの山口氏と花王の板橋氏は、クッキーレスの影響をどのように受け止めているのだろうか。山口氏は「何が起こっているのかという“ファクト”を正確に把握しなければ」と述べる。
日本アドバタイザーズ協会でデジタルメディア委員長を務める立場でもある山口氏。宮本氏が指摘したフリークエンシー課題について「我々事業主は、広告を介して適切な対象へメッセージを伝えたいのに、広告という手段そのものがユーザーに嫌われると、広告業界全体が発展しない」と危機感を示す。
一方の板橋氏は、2020年にGoogleがChromeでのクッキー廃止計画を発表した際「状況を整理した」と振り返る。当時は「そんなに大きな影響はなさそうだ」と社内に伝えていたものの、その後情報を収集するうちに影響が予想以上の大きさであることを認識。2021年は関係者とともに、フリークエンシー課題などの影響と代替手法について議論したそうだ。
一次メディアの強化とデータの着眼点が鍵
クッキーレスが進んだ後の対策や方向性について、山口氏は「ファーストパーティデータが重要になる」とした上で、次のように考えを説明する。
「デジタルマーケティングの利点は、ターゲティングができることにありました。ターゲティングを可能にしていたクッキーが使えなくなると、具体的に何ができるのかを考えた時、コンテンツでユーザーとつながっている一次メディアとの連携強化も必要だと思います」(山口氏)
山口氏の言葉を受け、宮本氏は「優良な一次メディア・専門メディアはたくさんあるが、広告主がメディア選定やプランニングをしようとした時にそれらのメディアが見える化できていると、打ち手を明確に選べるはず」とコメント。板橋氏はデジタル広告の関連ツールが次々と出てきていることに触れた上で、自身の考えを次のように示す。
「ツールを通じてデータをたくさん得られるからこそ『何を見るのか』を最初に決めておく必要があるのではないでしょうか。この20年でテクノロジーが進化し、データの収集・可視化の動きが加熱気味だったように思います。クッキーレスは、広告主が自社の振る舞いを見直す好機と捉えています」(板橋氏)