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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

クッキーレス攻略のカギは「コンバージョンリフト」リクルート『Airペイ』×Yahoo!広告の最新事例

 リクルートが展開する決済サービス『Airペイ』では、今後のクッキーレス時代に備え、新たな施策を模索していた。その中で、ヤフーの保有するマルチビッグデータを活用し、コンバージョン見込みの高いオーディエンスカテゴリーにYahoo!広告の配信を行った結果、広告想起、検討意向はともに約15%アップ、コンバージョンリフトは約5倍となった。今後は、広告接触による「コンバージョンリフト」を評価する配信設計を狙うという。本記事では、2022年6月10日に行われたオンラインカンファレンス「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2022 DEEP FACT!」で語られた先述の事例セッションについてレポートする。

振り返りができるかどうかが導入の基準

 今回のセッションには、リクルートのSaaSマーケティング領域 ディビジョンオフィサーを務める石井智之氏と、ヤフーのマーケティングソリューションズ統括本部 第二営業本部長である三村真氏が登壇した。石井氏は、リクルートが提供する業務支援サービスのマーケティングを統括している。

画像左:株式会社リクルート SaaSマーケティング領域 ディビジョンオフィサー 石井 智之氏画像右:ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 第二営業本部長 三村 真氏
画像左:株式会社リクルート SaaSマーケティング領域 ディビジョンオフィサー 石井 智之氏
画像右:ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 第二営業本部長 三村 真氏

 事例として紹介された『Airペイ』とは、リクルートが提供している、店舗の決済サービスの名称。来店したお客様が、店舗にある『Airペイ』の専用カードリーダーを使うことで、クレジットカード・電子マネーなどでの決済が可能となる。

 セッションの最初に語られたのは、『Airペイ』のメディアプランニングについて。『Airペイ』では、認知から獲得までの全ファネルを対象にアプローチを行っており、マス広告とデジタル広告を組み合わせた統合プランニングに力を入れている。そして石井氏は、どの施策においても振り返りができるかどうかを重要視しているという。

 マス広告・デジタル広告問わずどの媒体でも、メディア選定の基準は、出稿したことでどの程度の成果が得られたのか、そして改善できる点はどこか、が明確にでき、PDCAを回せること。Yahoo!広告に関しては、認知から獲得までフルファネルで活用している。

『Airペイ』が抱えていた3つの課題とは?

 続いて、石井氏の口から語られたのは『Airペイ』の抱えていた3つの課題だった。

 1つ目の課題は、「ミドルファネル以上へのアプローチ」。『Airペイ』のような業務支援サービスという市場は、「今あるものをよりよくしていく」という特性があるので。「今すぐに導入しなければならない」という状況が起きづらい。そのため、ロウワーファネルのターゲットにだけアプローチしていても成果を上げるのは難しい。

 こういった理由から、ミドルファネル以上を重要視し、導入について考えるきっかけを作ることを心がけており、認知獲得や商品理解に力を入れる必要があった。

 2つ目の課題は「クッキーレス時代における最適配信の模索」だ。近年、プライバシー保護の観点から「サードパーティークッキー」に対する規制が強まり、広告配信のオーディエンスソースとして今後用いることが難しくなると予測されている。

 本格的なクッキーレス時代の到来の前に、石井氏は複数の新しい手段を模索したいと考えていたのだ。

 そして、3つ目は「BtoBの最適セグメントは何か?」という課題だ。この理由について、石井氏は以下のように説明した。

 「BtoBのマーケティングは非常にターゲット幅が狭いです。そのため、広告の配信効率を向上させるには、最適なセグメントを見つける、または作ることが求められます。しかし、様々なツールを試しても精度が荒削りで、最適なセグメントが見つからない状況が続いていました」(石井氏)

 これら3つの課題解決に向けて石井氏は、Yahoo!広告を活用した取り組みの実施に至った。

クッキーレス時代の新指標、コンバージョンリフト

 では、実際にどのような取り組みを行ったのか。ヤフー側が特に強調したのは「コンバージョンリフト」という指標の重要性だ。

 「広告のゴールとしては、当然CVR(コンバージョン率)やCPA(コンバージョン単価)を追求しなければならないと考えています。ただ、これらを追っていくだけだと成果は次第に縮小し、長期的なビジネスの拡大に支障をきたしてしまいます。そのため、ヤフーでは、広告接触によるコンバージョンリフトも評価すべきだと考えており、そちらをご提案しました」(三村氏)

コンバージョンリフトの考え方
コンバージョンリフトの考え方

 これまでのCVRやCPAをKPIにした広告配信だと、広告に接触しなくてもコンバージョンしていた可能性の高いユーザーへの配信も行ってしまい、本来アプローチすべき、広告接触でコンバージョンリフトを示すであろうユーザー群への配信について、見逃しが発生してしまう。

 そのため、コンバージョンリフトもKPIに加えて配信最適化を行うことで、CVRとCPAを改善しながら、ミドルファネルやアッパーファネルにいるユーザー群のリーチを拡大し、長期的なビジネス拡大を支援しようというのだ。

 そして、コンバージョンリフトをKPIとしたときに重要なのが「コンバージョンリフトを示すユーザー群を見つける」こと。今回の取り組みでは、これまでのコンバージョンデータからコンバージョンの見込みが高いオーディエンスカテゴリーを分析。それをもとに広告配信を実施した。

 また、関連性の高いターゲットが必ずコンバージョンリフトにつながるとは限らないため、事後分析も実施。ターゲットごとにコンバージョンリフト値を計測・評価することで、3つ目の課題だったBtoBの最適なセグメント探しにもつなげた。

とにかくシンプルで、すぐに始められる

 今回の取り組みの提案を受け、石井氏は「とにかくシンプルで、すぐに始められると感じた」という。

 たとえば、フルファネルでの広告配信を考えたとき、ファネルごとにオーディエンスを区切って施策・コストを設計するケースや、マーケティング・ミックス・モデリングなどの分析手法を用いて最適配分を導くケースが考えられる。しかし、前者であれば全体として最適化するプランニングが難しく、後者であればモデルの精度を高めるまで安定しないといったデメリットを抱えている。

 石井氏は「もちろん他の手法にもメリットはありますが、早く軌道に乗せたい場合、デメリットの影響が重くなってしまう」と話した。その中で、ヤフーが提唱するコンバージョンリフトをKPIとした広告配信は「納得のいくものだった」という。

 「われわれはダイレクトレスポンス目的のプロモーションの計測はラストクリック、ブランディング目的のプロモーションの計測はコンバージョンリフトで見ています。どちらもコンバージョンに関連した指標なので、成果の要因を解釈しやすいのです。何より、すぐに始められるというのはとても大きなメリットでした」(石井氏)

 石井氏が高く評価する「導入のしやすさ」は、先ほど三村氏から説明のあった「コンバージョンデータから見込みの高いオーディエンスカテゴリーを作成できる」ことが理由となっている。コンバージョンデータをもとに最適なセグメントの仮説を考えられるため、しらみつぶしに施策を展開する必要がなく、導入後すぐ軌道に乗せることができるのだ。

コンバージョンリフト5倍など高い成果を実現

 では、実際のパフォーマンスはどうだったのか。三村氏は「効果検証ではブランドリフト調査とコンバージョンリフト調査を行った」と説明。その結果、ブランドリフト調査では広告想起、検討意向がともに約15%UP。コンバージョンリフト調査では、広告接触によってコンバージョンリフトが約5倍となった。この結果に対し、石井氏はこう振り返った。

 「今回取り組みをしてよかったです。数値がよかったのはもちろんですが、クッキーレス時代に向けて、ミドルファネル以上への打ち手を増やしたかったので。加えて、運用型であるのも嬉しいポイントで、状況に合わせてチューニングできるのでとても助かります。こういう変数がリフトに寄与していそうなのでこういうセグメントを作っていった方がよい、というのが見えるのはありがたいです。うまくいけば、そのセグメントを動的にずっと使い続けられると思います」(石井氏)

今回の取り組みにより、得られた成果
今回の取り組みにより、得られた成果

今後はマルチビッグデータを活用した広告配信を

 セッションの最後には、今後の展望について三村氏と石井氏が議論した。

 三村氏は「クッキーレス時代に向けて、ヤフーのマルチビッグデータをさらに活用したい」と語った。これにより、ユーザーのインサイト分析やPDCAサイクルの高速化を支援したいという。

 これに対し、石井氏は「サービス内外のデータから新しいインサイトなどが得られ、それがマーケティング施策の分析やプランニングにも使えるというのは、すごくよい」と評価。今後についても高い期待を寄せた。

 「今後、複数の施策を同時に運用していくことが想定されるので、並行して管理、運用していくための開発などを期待したいです」(石井氏)

 そして、三村氏は最後に、セッションの視聴者へメッセージを残し、締めくくった。

 「今回リクルート様にコンバージョンリフトの最適化をご提案し、認知からサービスの本登録までをつなぐ施策を実現しました。リクルート様のように、ミドルファネル施策のKPIに悩む広告主様も多いと思いますので、参考にしていただけたらと思います。今後もヤフーは、データを活用したPDCAの支援を行い、中長期でのビジネスの最大化に貢献してまいります」(三村氏)

Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2022のアーカイブ動画を配信中!

 2022年6月10日に行われた本カンファレンスでは、「DEEP FACT!」をテーマに掲げ、ヤフーのこれからのメディア戦略、ファクトドリブンで実現する、ヤフーでしかできないPDCAの事例などをご紹介しました。「クッキーレス時代へ向けたリクルート『Airペイ』のミドルファネル攻略」のアーカイブ動画、他セッションも含めたアーカイブ動画全編はそれぞれのリンクからご覧ください。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/07/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39340