デジタルが持つ本来の価値に改めて目を向けてみよう
細田:最後3つ目は「伝達するのではなく、会話をする」ということです。振り返ってみると、SNSやデジタルメディアが出てきた当初は「インタラクティブ」という言葉をよく使っていたんですよね。ですが、最近「インタラクティブ」って聞かなくないですか?
マス広告は一方通行で、デジタルには双方向性がある。ここにデジタルの価値があると言われていたのに、いつの間にかテレビCM以上に一方通行になってしまっているように思います。
――たしかに。プラットフォームが大きくなり、「マス的に使えるデジタル」という言葉を耳にすることも増えてきましたが、そこにデジタルの本来のよさがあるか? と考えると、そうではないように思います。
細田:広告やターゲティングが嫌われるのには、ここにも原因があるのではないかと思っています。「会話をする」ことが広告でうまく作用した例と言えば、パンテーンの「#この髪どうしてダメですか?」と問いかけるキャンペーンがあります。あれはとてもうまくできている、素晴らしい施策だと思います。

――実は、この特集の中でもパンテーンのキャンペーン施策に触れている記事があります。
細田:そうなんですね。あの施策は、髪型に関する校則が厳しいのはなぜなのか? なぜ自由にしてはいけないのか? という学生の問いを「#この髪どうしてダメですか?」というメッセージのもと動画や新聞で提示し、ソーシャルでその問いに対して語っていく、という仕掛けでした。私が注目したのは、学生の味方をするだけでなく、先生側の意見も求めていた点です。「対立」ではなく「対話」を促していけるよう、うまく設計されているんですね。
このように、「伝達するのではなく、会話をする」と考えると、デジタル広告やターゲティングの嫌なところは見えなくなるのでは、と思います。
定期誌『MarkeZine』8月号に掲載した記事『なぜ「ターゲティング=気持ち悪い」になってしまったのか? 進化するアドテクの使い方を考える』では、進化するアドテクとの付き合い方、現在そしてこれからのターゲティングの在り方についても細田さんにお話いただいています。ぜひ、あわせてご覧ください。