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生活者データバンク

Z世代理解のポイントは解像度を上げること

 本稿では、Z世代の高校生と大学生の男女4名に対して行ったインタビュー、買い物同行調査の結果について紹介。また、調査の中で見えてきたZ世代のことを解像度高く理解するためのヒントを解説する。

※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。

Z世代理解における「解釈」の危うさ

 「Z世代はこれまでの世代と価値観や消費行動が違う」と耳にするが、その実態を理解することは容易ではなさそうである。なぜ難しいかというと、Z世代が使う言葉の意味合いと、その言葉を聞いて我々が想像する内容がズレていることが往々にしてあるからだ。つまり、「こんな特徴がある」という文字面だけ追っていても、アクションプランを立てるために必要な情報を得るまで理解が深まらない可能性がある。

 さらに、50名近くのZ世代に対してインタビューを実施した中で、ミレニアル以上の世代が持つステレオタイプや世代をひとくくりにした平均値的特徴を足掛かりに彼らの行動を解釈すると実情とズレてしまい、誤認という痛い目に遭いそうな経験が何度かあった。

 そのような考えをもとにZ世代研究の一環として、言葉だけに頼らず、彼らの行動を観察すると何が見えてくるか確かめるため、高校生と大学生の男女4名に対してインタビューと買い物同行調査を行った。

 4名への調査で、かつ、調査の中で登場する商品は彼らの関心が高いファッションやコスメが中心という制約はあるものの、彼らを理解したいと思うとき、解像度を上げると何がわかるか、逆に解像度を上げないとどんな見落としがありそうかイメージをつかんでいただくことで、今後のZ世代理解に向けたヒントとなれば幸いである。

「Instagramを見る」とはどういうことなのか

 彼らの消費行動について話を聞く中で頻出するのが、「Instagramで見て気になって買いました」である。ここで「ということは……」とInstagramを使ったコミュニケーション施策の検討に乗り出すのは、ちょっと気が早いかもしれない。ミレニアル以上の世代が想像する「Instagramで見る・気になる・買う」の一連の流れと、彼らの実際の道のりは同じだろうか。インタビューと行動観察をもとに得られた事例を詳説していきたい。

 まず、Z世代の1日のスマホ利用だが、「これをするぞ」といった目的がなくても、日に何度も自然とスマホに手が伸びている。たとえば、調査に協力してくれた大学生男性は1週間平均で1日6時間程度スマホを見ており、1日でスマホを持ち上げた回数は180回ほどであった。中でもInstagramの閲覧頻度が高い。友人の投稿を見ることももちろん多いが、虫眼鏡マークをタップすると表示される「発見」を頻繁に見ている。

 「発見」はアルゴリズムによって自分の関心が高い投稿を表示してくれる機能で、1画面10以上の投稿が一目でわかるようになっており、どこまでもスクロールできる。表示される投稿は、ファッションやコスメ、音楽や読書や映画などのカルチャーとアイドルなどの推しに関する情報、スポーツ、恋愛関係や勉強・仕事に関するお役立ち情報など多岐にわたる(図表1)

図表1 Instagram の「発見」画面イメージ(タップで画像拡大)
図表1 Instagram の「発見」画面イメージ(タップで画像拡大)

 精度の高いアルゴリズムによって、ジャンルを問わず自分好みに編集されたビジュアルメインの雑誌と言ってもいいだろう。

 さらに、「発見」は更新すると「いいね」や保存など自分のアクションを反映し、今の自分好みになっていく。バレンタインに向けて、可愛くて簡単に作れるお菓子の情報が欲しければ、それに関する何個かの投稿をいいねしておいて、「発見」にバレンタインお菓子情報が多く表示されるように調整する。このようにZ世代は、直感的にアルゴリズムの働きを理解し、使いこなしているのだ(「AIかなんかが自動でやってくれる」)。

 その「発見」一覧から一つの投稿を選ぶと、さらに似たようなトピックの投稿がどんどん表示される。実際の操作画面を見せてもらったところ、投稿から投稿へ飛び回り、気になることができたら検索してみて、また投稿から投稿へ……と関心の向くままに指が動き続けていた。

 Z世代は、このように「発見」で関心のある投稿を見て楽しんだり、「こんなのあるんだ」「こんなふうにするんだ」などとちょっとした知識を得たりしている。たとえば、「おしゃれな彼氏になりたければファストファッションブランドの新商品をこうやって着まわす」「垢抜けたいなら使うべきコスメはこれ」「失恋したときに聞きたい曲TOP5」「血液型によって性格はこんなに違う!」といった投稿を見ているのだ。

 そして「発見」以外にも、フォローしているブランドやインフルエンサー、お役立ち情報まとめアカウントも追いかけている。この常に自分にとって関与度の高い情報の海を漂って楽しんでいる状態は、ミレニアル以上の世代に馴染みのある、何か知りたいことがあって検索バーを起点に探索を進めるような「情報収集」とは様相が違うのではないか。Z世代はこういった、さながら「情報遊泳」中に商品とも出会っているのである。

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この記事の著者

三橋 紗和子(ミツハシ サワコ)

株式会社インテージクオリス リサーチ推進部 リサーチプランナー/モデレーター

 BtoB調査会社を経て、2019年にインテージクオリス入社。定性調査のリサーチャー・モデレーターとして消費財から耐久消費財、サービス、産業財まで、幅広く担当している。2022年にインテージグループ内で発足した、グループ・部署横断の「...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/30 16:10 https://markezine.jp/article/detail/40082

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