BtoB企業の出稿で急成長するタクシー広告
──まず、タクシー広告の現状について教えてください。
現在は供給を需要が上回りとても好調です。2020年、最初の緊急事態宣言が発令された時期は厳しい状況だったものの、早期に改善して現在まで成長を続けており、直近の広告枠は満枠になっています。
──それだけタクシー広告が成長を続けているのには、どのような理由があるのでしょうか。
一番の理由は、決裁権を持ったビジネスユーザーに対しリーチしやすいメディアだからですね。「GROWTH」では、東京23区内で月間820万人のタクシー移動時間の中で広告を出稿することができます。その中でも一番乗車割合を占めるのが決裁権を持ったビジネスユーザーです。弊社調べでは、東京都23区のタクシー利用者のうち4割が会社員、3割が経営者と7割以上がビジネスパーソンとなっています。
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そして、この特徴に目を付けたのがBtoB向けにサービス・製品を提供する企業です。新型コロナウイルスの影響でリアルな営業活動やイベントへの出展が難しくなり、新たに企業・サービスの認知を獲得するための施策が必要になりました。特にSaaSモデルのサービスを提供する企業は、「競合より認知度が低い」ことで検討・導入に至らないケースがあるため、認知拡大を目的に出稿する企業が増えました。
そのSaaSモデルの企業成長に貢献した事例がいくつか出てきたことで、今では様々な業種、規模のBtoB企業がタクシー広告を出稿するようになっており、それが昨今のタクシー広告の急成長につながっています。
より楽しく、快適な移動体験を実現する
──非常に好調な「GROWTH」ですが、2022年10月に媒体・広告メニューを大幅にリニューアルしています。その背景を教えてください。
タクシーを利用いただくお客様に、より新しい体験を届けたいと考えたのが背景です。これまでは一方通行的に広告やコンテンツを配信してきましたが、中には「高い金を払っているのに、なぜ広告を見なければならないのか」と感じている方もいらっしゃいました。
今回のリニューアルでは、タクシーに設置されたサイネージを通じてお客様が移動時間を楽しく、快適に過ごしていただけることを目指しました。
また、自動運転が導入される未来も少しずつ近づいていて、そうなればモニターやタブレットで好きな動画を見たり、ゲームをしたりと、車中が第二のリビングになるはずです。その世界観をタクシーで実現していくための第一歩として今回のリニューアルを行いました。
欲しいものに出会うきっかけが生まれる場所に
──では、「GROWTH」のリニューアルの詳細に関して教えてください。
今回のリニューアルを機に、新しいコンセプト「移動時間に、新体験を。」を掲げました。一方的にサイネージからコンテンツが流れるのではなく、お客様が自ら見たいコンテンツを選択できるようにし、移動体験をより新しいものにしたいと考えています。
そのためにまず行ったのが、新型サイネージの実装です。旧型に比べて156%サイズアップし、Full HDの解像度で高精度に放映が可能なサイネージを開発しました。
サイズアップしたことでサイドバナー・メニューバーを表示できるようにし、お客様によるコンテンツの切り替え、広告で紹介されている商品の詳細情報の表示などを可能にしました。
また「GROWTH」オリジナルの情報番組「HEADLIGHT」の放映を開始しました。MCには、青木源太アナ・山崎怜奈さんの就任が決定しました。「知る、買う、出かける。新体験ぞくぞく。」をコンセプトに、タクシーの中で欲しいものや行きたい場所を見つけるきっかけを作りたいと考えています。番組内でのタイアップコンテンツの制作も可能です。
そして、最後は乗車直後の待機画面に静止画広告を掲載できる「RIDE VIEW」の提供開始です。「RIDE VIEW」では、時間と曜日単位で素材の切り替えが可能なため、特定の時間に広告を掲載したいという企業におすすめのメニューとなっています。
不動産、金融、ラグジュアリーブランドなどの活用も視野に
──リニューアルによって、これまでと広告の活用方法は変わってくるのでしょうか。
よりBtoC向けにビジネスを展開する企業様にも使っていただける可能性は高まったと思っています。タクシーユーザーの平均年収1,000万円以上の割合(都内)は、28%と非利用者の10%に比べて高い特徴があります。そのため、不動産や金融、ラグジュアリーブランドといった高単価商材・サービスとの相性も高いと考えています。
サイネージが大きくなったことでよりブランドの世界観や商品・サービスを訴求でき、サイドバナーで詳細情報やQRコードを載せればお客様の興味関心を引き上げることもできます。
また、テレビ局や動画配信サービスとのコラボレーションも検討しています。たとえば、ドラマの冒頭15分をサイネージで見せることで番組の告知にもなりますし、お客様にも楽しんでもらえます。メディアサービスに使える可処分時間は限られているので、タクシーの移動時間にコンテンツを見せたい企業からの出稿が増えると嬉しいです。
普段タクシーに乗らない人も呼びこめる方法とは?
──現在「GROWTH」以外にも車窓に広告を掲載できる「Canvas」も提供していると思います。今回リニューアルした「GROWTH」と組み合わせることでどのような体験が提供できるようになるのでしょうか。
Canvasは元々屋外広告をイメージして作ったのですが、タクシーアプリ「S.RIDE」と連携してCanvasタクシーの指定配車を可能にしたことで、ユーザーに対してブランドの体験を迎えに行かせることが可能になりました。好きなコンテンツやブランドとコラボしたタクシーが自分のところに来て、乗車すると「GROWTH」で関連したコンテンツを視聴できる。移動空間すべてをブランド体験として届けることが可能になります。
──Canvasは2021年5月より提供を開始していますが、すでに活用事例も出てきているのでしょうか。
はい、特にアニメやマンガなどのIP(知的財産権)やアイドル、スポーツなどファンが多く集まるビジネスと相性が良く、いくつもの事例が生まれています。
たとえば、トータルビューティーケアブランド「LUX(ラックス)」とアジア発9人組ガールズグループ「TWICE」とのコラボレーションプロジェクト「LUX TWICE TAXI」でもCanvasとGROWTHが採用され、車窓に各メンバーのクリエイティブを投影し、車内ではLUX×TWICEの特別映像を放映しました。また、Canvas・GROWTHに加えて用意したのが、数台限定でメンバーのラッピング車両や内装も施した車両です。この車両はタクシーアプリ「S.RIDE」で指定配車することもでき、一部車両では乗車カードも配布しました。
これらの施策の結果、ファンの方がSNSで乗車した感想を投稿し、関連投稿のインプレッションの合計は約100万となりました。S.RIDEの配車数に関しては、通常期間と比較し、約1.7倍を記録しました。走行期間中の配車ユーザー属性の傾向として、女性の比率が半分以上であったことがわかりました。その他にも走行開始日には、200件を超える配車リクエストも確認できました。
4週間の最終週まで需要が継続した結果、合計3,000人を超えるファンの方に乗車体験をしていただくことができ、著名人やインフルエンサーが偶然「LUX TWICE TAXI」に乗車し、Twitterで話題になるなど、SNSでの話題化にも成功しました。
また、プロ野球チームの読売ジャイアンツとコラボレーションした「ジャイアンツタクシー」も好評でした。この施策では、コラボタクシーによる東京ドームまでの送迎と東京ドーム巨人戦チケット、選手のメッセージが聞けるオリジナル映像コンテンツの車内放映、グッズのプレゼントなどの特典を付けた観戦パックを販売しました。これにより、移動以上の価値を付けることに成功しました。
実際の反響に関しては、走行初日は満枠の予約をいただき、手応えを感じました。都内・都内近郊在住の方だけではなく、沖縄など遠方の方からの予約もありました。予約者に関しては、高齢の方を含めた家族連れが多く、コロナ禍で密を避ける移動手段としてもご利用いただけたのではないかと思います。
どちらの事例にも共通しているのが、普段タクシーを利用しない方に対してもタクシーを利用するきっかけが作れている点です。「ジャイアンツタクシー」のように東京ドームという目的地が存在しているケースなど、特定の場所に来てほしい目的がある企業のプロモーションでは有効だと考えます。
移動時間の可能性を広げていく
──最後に今後の展望を教えてください。
「GROWTH」のリニューアルに関しては、新型サイネージの設置作業を順次開始し、2022年10月以降都内のタクシーを中心に切り替えていきます。また、「Canvas」は2023年以降に3,000台の実装を目指しているので、今後都内で「Canvas」が搭載されたタクシーが当たり前に見られる景色を作りたいです。
また、自動運転を見据えたビジョンも常に考えています。公道を自動運転タクシーが走るのにはまだ時間がかかりそうですが、自動運転が普及すれば移動のコストは下がりタクシーの利用時間は増えていくはずです。そこに向けて、新しい移動体験に向けた実証実験を行っていきたいです。
──実証実験とは、具体的にはどのようなものをイメージしているのでしょうか。
今PCやスマホで行っていることはすべて対象になると思います。ドラマを見たり、英会話レッスンをしたり、好きな音楽を聴いたり、様々な体験をタクシー移動の中で快適に行ってもらう方法を模索したいです。よく移動する○○という言葉がありますが、移動時間を別の体験に置き換えるのには、大きな可能性が眠っています。
リニューアルしてサイズアップした「GROWTH」のタブレットであれば、提供できるコンテンツや体験も広がるので、今後も「移動時間に、新体験を。」のコンセプトに即した移動体験を提供していきたいです。