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自社EC強化のため、Speeeがデサントと行ったSEO改善戦略とは?最新SEOトレンドも併せて解説!

 企業が収益率をアップさせる手法の1つとして、D2Cの販売経路を強化することが挙げられる。スポーツウェアで有名なデサントジャパンも収益率アップを目指し、公式ECサイト「DESCENTE STORE」を強化するためSpeeeと共にSEOの見直し・改善を実施。MarkeZine Day 2022 Autumnに登壇したSpeee マーケティング部部長の藤井慧里氏が、その戦略・運用のポイントを具体的な事例を踏まえながら解説した。

デサントジャパンがSEO改善を決断した理由

 直営店だけでなく、ECサイトなどD2Cビジネスを強化しているデサントジャパン。しかし、社名やブランド名で検索した際に自社の公式ECサイトよりも大手ECモールが上位にくる、自然検索で1位を取得しているキーワードにリスティング広告を同時出稿しているといった課題を抱えていた。そこで同社は、これらの課題解決と全体の最適化を目指して、SEO改善を決断したという。

SEO強化の背景・課題感

1.自社名を含むキーワードで、自社EC以外の大手モールサイトが1位を獲得している
→外部サイトに流れ、D2C比率低下を招く

2.ランクインしているが、目的としたページではないケースが存在する
→購入意欲の高いユーザーの離脱を招く可能性

3.通常検索結果で1位を取っているキーワードでもリスティング広告を出稿している
→リスティング広告戦略を再検討する上で、通常検索結果部分の最適化も必要

 本講演ではデサントジャパンの改善事例を踏まえ、Speeeの藤井氏がSEO改善の戦略立案から実際の運用のポイントまで紹介。まず、SEOに取り組む4つの利点を解説した。

SEOの4つのメリット

1.アプローチ品質の高さ

2.カバー領域の広さ

3.ROI(投資利益率)の良さ

4.法規制の影響を受けにくい

 1番目は「アプローチ品質の高さ」だ。「検索を行っているユーザーは、そのキーワードに関心があり能動的に何かを知りたいという状態です。この関心が高い時に適切な情報を提供できれば、ユーザーの高いエンゲージメントを得られます」と藤井氏。すなわち、ユーザーの関心が一番高い瞬間である検索した時(=アプローチ)にSEOの効果で上位に情報を表示できれば、ユーザーと深いつながりを構築できる。

 2番目は「カバー領域の広さ」。ユーザーの購買行動における最初(認知)から終わり(購買)まで、検索行動はついて回る。そのため、検索で上位を獲得できれば幅広くユーザーに訴求できる。

 3番目は「ROI(投資利益率)の良さ」となる。一般の広告と比べ、SEOは導入当初はコストが多めにかかるものの、それ以降は効果が上がってきても低コストだ。よって最終的にはROIは高い、つまり割安だといえる。

 そして最後は「法規制の影響を受けにくい」点だ。個人情報保護法の影響で、ネット広告への規制は高まっている。対してSEOはサイトそのものへの創意工夫なので、法規制や外部の影響を受けにくい。

 SEO改善にはこれらの利点があり、デサントジャパンが改善の決断を下す後押しとなった。

SEO戦略で重要なのは「キーワード」「目標設定」「優先度」

 次にSEOを改善する際の戦略や運営について、詳しく見ていく。まず戦略の立案について、藤井氏はポイントに「対策キーワードの抽出」「目標の設定」「対策優先度の策定」の3つを挙げ、この順にステップを進めていくと説明した。

1:対策キーワードの抽出

 デサントジャパンの場合ECサイトのSEOであるため、「サイトの特性を見極めたうえで対策キーワードを抽出する必要がある」と藤井氏は語る。ECサイトには大きく分けて2種あり、商品数が多くて1カテゴリーに数百点ほどある「多品型」と、商品数は少なく1カテゴリーに数十点程度の「少品型」に分けられる。多品型の場合はSEOキーワードとしてポロシャツ、コートといったカテゴリー名が妥当となる。また少品型ならブランド名とカテゴリー、つまり「デサント、Tシャツ」といった掛け合わせが有効だという。

 少品型サイトの場合、ブランド名とカテゴリー、オリジナルのシリーズ名といった検索で確実に1位を取ることが総合的な売り上げに貢献できる。どこのポロシャツを買おうか悩むユーザーを相手にするより、ある程度志向が見えているユーザーをしっかり掴むほうが重要だからだ。デサント公式ECサイトは少品型であるため、まずはブランド名や特定の商品シリーズ名を含むキーワードで確実に上位を獲得することを目指した。

2:目標の設定

 キーワードが決まったら、検索された時の順位をどこまで上げるか、検索結果から自社サイトにどれだけ誘導するかといった目標数の設定を行う。検索結果は通常、広告がまず上位に表示される。その後に表示される結果を「自然検索結果」、クリックしてサイトを訪問するユーザーの数を「自然検索流入数」と呼ぶ。

 キーワードで検索したサイト順位をたとえば10位から4位へ上げたい場合、4位になったら増えると考えられる自然検索流入数を目標値とする。実際にデサントジャパンでも、主要キーワードについて目標順位と理論上の流入数増加量を算出し、自然検索流入数のKPIを設定した。

3:対策優先度の策定

 キーワードと目標値が見えたら、どの施策を優先的に実施するかを決定する。ここでは施策で得られる効果を「対策インパクト」と称し、検索流入数などでその大小を測る。

 対策優先度を考えるうえで、あるキーワードにおける自社サイトが10位なら、その際の1位や2位のサイトと比較して課題を検討する方法がある。「titleタグへのキーワード含有率」「重複の有無」「コンテンツ商品の基本情報・紹介情報」などの視点で比較し、それぞれの対策インパクトを想定して具体的に何をすべきかを検討する。もちろん施策を考える際は、対策インパクトの高さ(検索流入数を増やせるかどうか)だけでなく、かかるコスト・時間・手間などを勘案したうえで優先度を策定することが重要だ。

SEO運用で押さえるべき、3つのポイントとは

 戦略が決定すれば、次は実施・運用が始まる。藤井氏は、以下の3つのポイントを挙げた。

1:成果が最大化されるスケジュール

 戦略や個々の施策は、SEO施策を盛り込んだWebページの制作、Googleが評価する期間、必要に応じたSEO施策の修正など、それぞれ月単位で時間がかかる作業が生じる。そのため、たとえばファッションECサイトで7月頃の夏物セールにピークを合わせたい場合、制作で1ヵ月、Google評価で2~3ヵ月、SEO修正の予備日などを考え、4月頃から施策をスタートさせる必要がある。

2:制約・変化を踏まえたプランのチューニング

 「担当者の移動」「制作リソースの減少」などの人的問題が発生した場合も、「チームで目的・KPI・スケジュールなどをしっかり共有することで立て直しが図れる」と藤井氏は語る。

 また施策をスケジュール通りに実施できたとしても、予定通りに成果が出ない、順位は上がったが検索流入数が増えないといったSEO特有の課題が発生することがある。その場合は要因分析に加えて、先に選ばなかったキーワードで改善を試みる、表示方法を工夫してクリック率を上げるなどの取り組みも重要だという。

 なお検索アルゴリズムが変更されると、昨日は1位だった順位が次の日は5位、10位になるといった状況が生まれる。実際Googleは、細かいものを含め年間に数千回も改変を行っていると言われている。こうした時は最新順位をすぐに検索し直し、対策キーワード優先度の見直しを面倒がらずに行うことが大切となる。

3:実行体制

 Speeeと一緒にSEO改善を行う場合は、まずSpeee側のプロジェクトマネージャーや分析官が、企業の担当者に改善施策の提案を行う。その提案を受けて企業担当者は開発担当に指示を出し、開発担当が実装するという流れが一般的だという。

 この時課題になるのが、提案の費用対効果だ。施策単位で対策インパクトを算出し、コストも勘案した結果ROIがどうなるかといった議論が提案の可否判断に必要となる。Speeeでは、こうした流れを企業担当者と一緒に考えていくことが重要と考えている。

 藤井氏は「PDCAのDの部分でつまずくプロジェクトを、我々もいくつか経験してきております。そのためこうした課題の解決について、しっかりと研究をして実績を重ねているところです」と運用への積極的な取り組みを明らかにした。

SEO改善に欠かせない、評価軸や最新トレンドを押さえる!

 続いて藤井氏は、SEOの改善を続けていくうえで重要な情報である2022年にGoogleが発表した検索トレンドを紹介した。

 藤井氏は「UI/UXの改善の比重が高まってきています。UI/UXの出来具合がSEOの評価軸に入ってきています」と述べ、UXを優れたものにするためGoogleが提唱している指標「Core Web Vitals」について解説。そのポイントとして「1:読み込みまでの速度」メインコンテンツの文字や画像の表示を速くする、「2:視覚的な安定性」ページのレイアウトが明白で、間違って広告などをタップしない、「3:操作の応答性」タップしたらすぐにページが切り替わるといった要素を紹介した。

 このようなUI/UXを持ったサイトは、SEOの評価が高くなるため、これらへの対応は「SEOにはもちろん、ユーザーのサイトへのエンゲージメントを高めるためにも有効」だと藤井氏は述べた。

 もう1つ、直接SEOの評価につながらないが注目のUX指標として「INP(Interaction to Next Paint)」がある。これは、たとえばページ移動ボタンをタップした際に次のページをローディング中、といった「合図が表示されるまでの時間」を指す。こうした合図がすぐに表示されれば実際のページローディングに時間がかかったとしても、ユーザーは自分が正しく操作をしたという安心感を得られる。

 また藤井氏は、従来のテキストによる検索ではなく、画像や音声といった方法による検索が今後のトレンドになると言う。このためにGoogleは、AIを利用した検索アルゴリズムの開発・投入を進めているそうだ。

 2019年には「BERT」というAI検索技術を導入し、入力された単語の理解だけではなく「何を知りたいのか」という意図を読み込めるようになった。そして2021年に一部で導入が始まった「MUM(Multitask Unified Model)」はさらに強力で、テキストのみならず画像・動画・音声をまたいで複合的に情報を理解可能。かつ、75の言語に対応でき、1つの言語で学習した情報は多言語に瞬時に横展開可能という特徴もある。

画像や動画検索への対応

 画像検索に用いるGoogle レンズの機能も向上している。たとえば、ワンピースの画像を検索対象にしてそこにGreenという言葉を指定。すると、画像に似た形で緑色のワンピースを探すことができる。藤井氏は「画像検索や音声検索の領域は、日進月歩のような形で進化を続けていています」と言う。それに対応するSEO対策として、コンテンツにも画像や動画を取り入れる、絵の解像度は高めにといった点があると加えた。

 最後に藤井氏は、Speeeではこのように課題発見から効果検証まで一気通貫でプロジェクトを組み立ててSEO改善を目指すサービスを今後も提供していきたいとして、講演を結んだ。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/40141