変数を最小限にし、枠組みを整える
──マネージャーとしてメンバーや各リーダーと関わっていく上で、特に留意していることを教えてください。
石井:マネジメントには、「誰が」「誰を相手に」「どんなシチュエーションで」と3つの変数があるので、どんな時にも当てはまる正解はないと思っています。
変数が3つもあると大変なので、自組織のマネージャーには、3つのうちの「誰が」にあたる自分のスタンスをぶらさないように伝えています。自分がどう思われているかを把握し、ある程度固定した上で他者と関わる手法はおすすめです。変数はなるべく少ない方がいいですからね。加えて、自分がメンバーのことをどれほど考えているかを、表に出したほうがいいとも思っています。
──組織の価値を最大化するために、マネージャーができることは何だと思いますか。
石井:やるべきことは非常にシンプルです。競合他社の一歩先を行こうとした時、必要なケイパビリティを持っているメンバーがいなければ、誰がやるか、どういう体制を整えればいいかを議論していけばいいのです。
私たちは常に2つの競争にさらされています。1つは事業としての競争環境、もう1つは個人の人材としての競争環境です。この両軸において勝つことを考えた時に、「勝てる組織のあるべき形」が見えてくると考えています。
後者に関しては、メンバーそれぞれの考えもありますし、マネージャーには言いにくいこともあると思います。しかし、マネージャーは恐れずに人材の競争環境と目指すべき組織のカタチを語ることが必要です。そうするからこそ、メンバーは組織のことを自分事として捉え、納得して変化する選択をとれるようになるのだと思います。

マネージャー同士の共通言語を増やし、部署間の連携をスムーズに
──社内の他組織との連携する際に、マネージャーとして気をつけていることはありますか。
石井:組織間で問題が生じた時に、自分と同じレイヤーのマネージャーと腹を割って話をすることです。シンプルにそれに限ると思っています。
マネージャーが自らしっかり動いていくことはもちろん重要ですが、マネージャーが動いていても問題解決できないこともあります。こうしたことの要因は、コミュニケーションが足りず、組織間の共通言語が作れていない可能性が高いです。なので問題が発生する前に、自分と同じレイヤーの組織長同士で腹を割って話せる環境作りをしておくのは、とても大事なポイントです。
──最後に、これから組織のマネジメントをするかたに向けてメッセージをお願いします。
石井:マネージャー個人のパフォーマンスには誰も興味はありません。「マーケティング組織のパフォーマンスこそが、マネージャーのパフォーマンス」というのが私の持論です。どんなに優れた戦略や戦術も、すべては組織があってこそだという意識が大事なのだと感じています。
私はというと、組織作りを通してメンバーが人材市場で高く評価される人にしたいと心から思っています。その結果、会社全体としてもより高いバリューを提供できるようになり、社会をさらに良い方向に変えていく存在になっていけたら、これ以上の喜びはありません。