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WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ

正しい「セグメンテーション」で事業の成功確度を引き上げる──ターゲット、潜在ビジネスサイズの捉え方

セグメンテーションの実行方法

 分類の項目が決まれば、この項目に従って定量調査を行います。これまでに定量調査を行ったことがない方はイメージが湧きづらいかもしれませんが、量的調査では、インターネットリサーチなどを通じて、選択式のアンケート調査を行うことが多いです。

 実際に量的調査をやってみると、工程は意外とシンプルで、自社で調査設計を行うことも可能です。

 調査のプラットフォームは様々ですが、今回はLINEリサーチを例にして説明を行います。LINEリサーチは、若年層から中高年まで日本最大級のパネル人数がいることはもちろん、初めて自社で調査を行う方にとっても比較的簡単に設計できるのでおすすめです。調査では、スクリーニング調査、本調査の2段階で調査を行うことが一般的です。LINEリサーチで行う際もスクリーニング調査で調査の回答者として適切なユーザーを選別し、本調査で実際の質問を聞いていく流れとなります。

 たとえば、先に例に挙げた「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」への調査を行うことを考えます。

 調査では、「Z世代」「環境に意識が高い」「ナチュラルメイクを好む」「女性」の4つの条件を満たすユーザーに対して、「普段使用しているスキンケアブランド」や「肌の悩み」といった質問をしていくことになります。

 そこで、スクリーニング調査では、上記の4つの条件を満たすことを確認できる質問を設置し、条件を満たした回答者だけに本調査を表示します

 そうして絞り込んだ回答者に対して、「普段使用しているスキンケアブランド」や「肌の悩み」といった本来聞きたい質問を設置し、期待する対象者から十分な回答を集めていきます

 細かな内容は割愛しますが、セグメンテーションでは、上述のようにして集めた回答を基に、対象者の量的データを取得し、ターゲットのボリュームを計算していきます。

 今回の例では、既に「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」というターゲットが定まっている前提でしたが、サービスの段階に応じて、様々な対象者に対し調査を行うことが可能です。

潜在ターゲットサイズの考え方

 潜在ターゲットサイズを推定するにあたっては、統計データが必要になります。

 経済産業省や厚生労働省をはじめとする国が発表しているデータを起点にして、定量調査の結果を掛け合わせて算出します。

 たとえば、「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」が人口に占める割合は、定量調査のスクリーニングの質問ですぐに見ることができます。

 調査パネルのZ世代の女性にのうち、環境への意識の高さについて1~5段階(1が全く意識していない、5がとても意識している)で質問したときに、上位2の回答(とても意識している、意識している)の人たちの割合が、仮に30%だったとします。

 さらに、30%の人の中で、好むメイクがナチュラルメイクであると回答した人達が50%だとします。

 そうすると、30% × 50%で、Z世代の女性のうち、約15%の人達が「環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」であると言えます。

 さらに、日本の全女性のうち、Z世代の割合は約15%なので、日本の全女性のうち、「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」の人たちの割合は、約2.3%で、約145万人いる、と想定することが可能です。

 ここで得た数字を起点にして、定量調査の質問のセグメントの比率を掛け合わせていきます。

 たとえば、メイクをする頻度だと、毎日する層、週に3~5回する層、週に1~2度だけする層でセグメントを分け、それぞれの%を掛け合わせることで各セグメントのボリュームが見えてきます。

 さらに、各セグメントのうち、現在使用しているブランドによる分類や、他のメイクではなくナチュラルメイクを好む理由による分類などを掛け合わせていくことにより、細やかなセグメンテーションに応じた、潜在ボリュームの算出が可能です。

 上述のように分類したターゲットセグメントでは、「毎日メイクをし、大手の外資系ブランドを使用している層」と「週に1~2度メイクをし、オーガニック系D2Cブランドを使用している層」では、潜在ターゲットボリュームが異なるため、サイズを把握することによって、本質的にターゲットにすべきかどうかをビジネスの観点で、早い段階で判断することが可能です。

セグメンテーションと潜在ターゲットサイズのイメージ(※図表に入っている数値は架空の数値。クリックすると拡大します)

 また、それぞれのセグメントに応じて、インサイトやブランドに対するタッチポイントも大きく異なるため、その後にブランドとして行うマーケティング活動が少しずつ明確になってきます。

 つまり、これらのセグメントにいる顧客が、自社ブランドで買ってくれるか否かの獲得難易度や、ブランディングの観点で、継続的に使用をしていただきたい顧客がどうかを判断するための解像度がより高まってきます

 たとえば上記の図式の例でいくと、セグメント1の方が潜在ボリュームは大きいですが、自社ブランドの強みを考慮すると、セグメント2にいる顧客の方が、獲得の難易度は低いかもしれません。また中長期のブランド戦略を鑑みると、2の方により使用してもらいたい可能性もあります。つまり、ボリュームだけではない観点も考慮した上で、慎重にターゲティングを行う必要があります。

 次回の連載では、セグメンテーションの次のステップあたるターゲティングの具体的なステップと手法について解説をしたいと思います。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/21 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40594

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