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WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ

「狙うべきターゲット」を、ブランドとビジネスの観点で明確にする。ターゲティングに必要な思考と実践法

 現役でユニリーバのマーケティングから経営まで実行している木村元氏が、自身の経験をもとに開発したWHOとWHATを正しく設定していくためのフレームワーク「WHO/WHATの10ステップ」。本連載では、事例とともに同フレームワークの使い方を解説していく。今回は、ステップ3~5にあたる「ターゲティング」について解説していく。

ターゲティングを誤れば、その後のあらゆる施策が非効率になる

 前回の記事では、WHOとWHATを明確にしていく10のステップのうち、ステップ1と2について説明しました。セグメンテーションによって市場のどこを狙い、どういった目的の顧客を狙いにいくかを明確にしたあとは、ターゲティングの工程(ステップ3~5)に入ります。ここで自社のターゲットを決定し、決定したターゲットに対して自社のポジショニングを打ち立てていきます。

WHO/WHATの10ステップ

STEP1:セグメンテーション
STEP2:潜在ターゲットサイズ
STEP3:獲得難易度チェック
STEP4:ブランドセンスチェック
STEP5:優先順位付け

STEP6:デプスインタビュー(N1インタビュー)
STEP7:インサイト発掘
STEP8:タスクマップ
STEP9:コンセプトライティング
STEP10:コンセプトテスト&ロック

 せっかく素晴らしいセグメンテーションができていても、プロダクトやサービスが売れる可能性が高いターゲット層にアプローチできなければ、購入には至らず、売上や利益につなげることはできません。そしてターゲティングが誤っていれば、その後のあらゆるマーケティング活動は非効率なものになります

 また、セグメンテーションをもとに、ただ顧客層を絞り込むことだけがターゲティングではありません。ターゲティングの本質的な目的は、自社のプロダクトやサービスが、それぞれのターゲットのどのような課題を解決するのかを明確にすると同時に、自社のブランディングの方向性に合わせた顧客を再定義することです。

 ここからは、仮想のプロダクトを例に、それぞれのステップで行うことを詳細に解説していきます。

STEP3:獲得難易度チェック

 まずは定義したセグメントごとに、「ターゲットが本当にプロダクトやサービスを購入してくれるのか」、可能性を探っていきます。

 前回同様、オーガニックのスキンケアブランドの例で考えてみましょう。ターゲットを「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」としたときに、下記のようないくつかの項目で、セグメンテーションを定義したとします。

  1. 年齢
  2. メイク頻度
  3. 現在使用しているブランド
  4. ナチュラルメイクを好む理由
セグメンテーションの例(クリックすると拡大します)

 実際にはより多くのセグメントを定義しますが、今回は内容をわかりやすくするため、上記2つのセグメントを例に考えてみます。

 潜在ターゲットサイズで考えると、セグメント1のサイズが大きく、ビジネス機会があるように見えます。

 ステップ3では、このセグメントにいる顧客が、自社ブランドで獲得しやすいかどうかをスコア化して判断していきます。スコア化と言っても、3段階の評価で「獲得しやすい」「獲得しづらい」「どちらとも言えない」ということが判断できれば十分です。

 インタビューなどを通じて、ヒアリングをしながら判断することも可能です。セグメントにいる顧客ごとに、現時点のサービスやプロダクトに関する情報を提示し、商品を購入したいか、サービスを使ってみたいかをヒアリングし、反応を確認します。インタビューが難しい場合は、マーケティング担当者の仮説でも、ターゲティングをしていく上では十分だと思います。

 ただし、これまでと異なるカテゴリーの新製品であったり、新規事業の場合は、マーケターの仮説自体が大きくズレている可能性も否めないので、やはり実際の顧客と会話をするほうが良いでしょう。顧客と会話をした上で、3が最も獲得しやすく、1が最も獲得しづらい指標として、各セグメンテーションの獲得難易度の点数化を行ってください(※)

(※)Brandismでは「ターゲティングシート」というフォーマットを使って、ターゲティングのプロセスを実行しています。無料のテンプレートを準備したので、ぜひご活用ください。

「ターゲティングシート」テンプレートのダウンロードはこちらから

「ビジネスサイズ」をとるか、「獲得難易度」をとるか

 たとえば、セグメント1の顧客は、ほぼ毎日メイクをし、大手ブランドを使用しているナチュラルメイクを好んでいるユーザーで、自分のファッションや雰囲気と合うことがナチュラルメイクを好む理由です。現時点でオーガニックのブランドを使用している訳ではないですが、ナチュラルメイクが好きなこともあり、また毎日メイクをしているので、オーガニックのスキンケアのブランドに対して興味を持つ可能性はあるでしょう。一方で、現時点でオーガニックがメイクの選定理由ではないことや、現在大手のブランドを使用していることもあり、スイッチングさせることが簡単とは言えないと思うので、獲得難易度のスコアは「どちらとも言えない(=2)」とするのが良いでしょう。

 一方で、セグメント2の顧客は、毎日ではなく、週に2~5回メイクをしており、比較的新興ブランドを使用しています。また、ナチュラルメイクを好む理由が、インフルエンサーの影響や、肌への負担を気にしているという特性を考えると、今回のプロダクトが新ブランドかつオーガニックコスメということもあり、比較的獲得がしやすそうな顧客と想定し、獲得難易度のスコアは「獲得しやすい(=3)」となります。これらはあくまでも仮説なので、実際には顧客との会話の中から、スコアを決定していくことをお勧めします。

 この工程によって、ビジネスサイズによる優先順位ではなく、獲得難易度も考慮したターゲティングを行うことが可能になります。これは個人的な経験にともなう私見ですが、大手のレガシー企業では、潜在ターゲットサイズから、スタートアップなどの新興企業では獲得難易度からターゲティングをする傾向が強いように感じます。

 潜在ターゲットサイズに偏りすぎると、マーケットは大きいですが、その中にいる顧客に刺さりづらいプロダクトやサービスになるケースが多いです。一方、獲得難易度に偏りすぎると、獲得はできますが、マーケットが小さく、成長後伸びづらくなるケースが多々あります。そのため、「潜在ターゲットサイズ」と「獲得難易度」両方のバランスを取りながら進めていくことが重要です

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism代表取締役ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/27 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40856

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