【特集】2022年の急上昇ブランド~本質的なブランディングの核に迫る~
─ インターブランド「ブランド価値評価」の仕組み――強いブランドが有する10の要素とは?
─ 先の見えない時代にこそ「ブランドの価値」が問われる。未来の競争力を高めるブランディングの在り方
─ 事業成長を通じて社会課題を解決する。味の素グループが全社で取り組んできた「ASV経営」の現在地
─ 選ばれ続けるブランドの確立を目指す。ANAが徹底した顧客起点で取り組むCX戦略
─ 信念であるパーパスを体現し、ブランド・お客様・社員を繋げていく。SK-Ⅱに学ぶ、ブランド体験の作り方
─ 技術と歴史が築き上げてきた、富士フイルム「らしさ」のブランディング(本記事)
富士フイルムの歴史、ブランドの浸透が課題に
――まず、2022年を振り返って、御社の市場や業界、ブランドが置かれている環境の変化をどのように捉えていますか?
堀切:2022年はコロナ禍の生活様式がますます浸透してきており、ブランドの信頼に対する重要度も高まったと感じています。コロナ禍を通じて人を介さずにモノを買う、サービスを受ける体験が当たり前となり、仕事の場面でもオンライン会議が増えました。このように直接触れる・見る機会が減っているからこそ、信頼できるブランドかどうかが判断の基準になっていると思います。
そして、富士フイルムがより信頼されるブランドになるために、会社の歴史とブランドを今以上に社内外へ浸透させたいと感じています。富士フイルムの歴史を振り返ると、元々写真フィルムを生業にしていた会社で、商品と企業ブランドが同一イメージで成り立っていました。しかし、2000年以降デジタル化が加速して写真フィルムの需要は減少していき、事業改革が必要になったのです。
その中で、弊社は写真フィルム事業で培って進化させてきた様々な技術を活かし、多岐にわたる事業へ進出しました。その結果、写真フィルムやカメラ関連の「イメージング」のみならず、医療機器・バイオCDMO・創薬支援・化粧品などの「ヘルスケア」、半導体プロセス材料などの「マテリアルズ」、働き方革新やデジタルトランスフォーメーションを支援する商品やサービスを提供する「ビジネスイノベーション」の4つの領域で成長し続けています。
写真関連事業の売上の割合が小さくなってきたため、「富士写真フイルム」という社名から「写真」を取りましたが、写真フィルム事業で培った技術から新しい事業が生まれていることなどから、フイルムは社名に残しています。この歴史や富士フイルムの持つ価値を社内外にブランディングを通じてもっと伝えていく必要があると感じているのが、直近の変化です。
~インターブランドジャパン代表 並木将仁氏より選定理由に関するコメント~
富士フイルムは自社が有する根源的な機能価値を展開する形で、ビジネスポートフォリオのシフトを進め、それを強化させてきました。またその際、メディカル領域など、いずれのビジネスシフトにおいても将来価値の高い領域に入っている。これらの点がまず素晴らしいところです。そして、富士フイルムはそのブランド名と事業の実態に乖離がありますが、すべての事業活動の結果がしっかりと「富士フイルム」というブランドにたまるようになっています。ブランドアセットの整理と展開に長けており、ブランド戦略がしっかり機能している企業のお手本だと思います。