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博報堂生活総研が「行動と意識」で紐解く明日の欲求

コロナ禍でむしろ消費支出が増えた人々は一体何を買うようになったのか?

 社会が混迷を極める現在、マーケターが生活者をより深く理解するにはどのような手段が求められるのだろうか?本連載では、博報堂生活総合研究所の酒井崇匡らを著者に、ビッグデータを活用した新たな生活者分析手法「デジノグラフィ」の研究事例を紹介。第1回となる本稿では、家計簿アプリに蓄積されたデータから、コロナ禍がもたらした消費の変化を紐解く。

生活者一人ひとりの「時系列変化」を可視化する試み

 博報堂生活総合研究所の酒井崇匡です。この連載では私たちのチームが研究を進める、ビッグデータを活用した新たな生活者分析手法「デジノグラフィ」の研究事例を紹介していきます。

 第1回で紐解くのは、家計簿アプリに蓄積されたデータから、コロナ禍がもたらした消費の変化。既に様々な分析が行われているテーマですが、ビッグデータの強みの一つは単発のアンケート調査では難しい、生活者一人ひとりの時系列変化を可視化できることです。

 「一般的には消費が抑制されていたコロナ禍中に、実は消費を加速させた生活者が一定数存在している」という事実から分析はスタートします。今回解説するのは、ともにデジノグラフィ研究を進めている佐藤るみこ研究員です。

4人に1人は、コロナ禍前より支出総額が増加していた

 研究員の佐藤です。今なお続くコロナ禍。コロナ禍前と比較して、生活者の家計の消費金額は増えたのでしょうか。それとも減ったのでしょうか。

 まず、総務省「家計調査」でコロナ禍前の2019年の年間消費支出金額を100%とすると、20年は94.7%、21年は95.1%となっています。2年続けて、コロナ禍前に比べ5%程度マイナスになっていた、ということです。

 では、これを生活者自身が支出管理に使っている家計簿アプリに蓄積されたビッグデータで検証すると、どうなるのでしょうか。株式会社Zaimの協力のもと、オンライン家計簿サービス「Zaim」でも「家計調査」と同様の支出傾向が見られるのか分析してみました。

 下記のグラフはZaimユーザーの月毎の支出総額について、19年の月平均支出総額を100とした場合の推移を赤で示したものです。青で示しているのは先程紹介した総務省の家計調査における月毎の消費支出金額の推移です。Zaimユーザーの支出総額も、家計調査とほぼ連動した動きをしており、コロナ禍の20年、21年は大きく支出が落ち込む時期が続いていることがわかります。

図1
図1

 私たちはさらに、今回の調査に協力を得た2019年1月以降、毎月Zaimで家計簿データを入力している2,953人の一人ひとりについて、コロナ禍前後の支出総額の変化を分析しました。下記のグラフを見るとわかる通り、全体の過半数、55%はやはり、コロナ禍が起こった後に支出総額が1割以上減少していることがわかりました。しかしその一方で、約4人に1人(28.2%)は、支出総額が1割以上、逆に増加していたのです。

図2
図2

飲み会や旅行などソト消費は激減

 では、世の中全体の動きとは反して、コロナ禍中に支出総額が増えたこれらの人たちの「消費」の傾向はどうなっているのでしょう?

 私たちは、コロナ禍前の19年1月以降家計簿データを蓄積している2,953人の中でも、21年の支出総額が19年よりも増加した767人に、さらにフォーカスして分析しました。それと同時に、これらのユーザーに対して意識調査を実施し、消費行動の裏側にどんな意識が存在しているのかに迫りました。行動データと意識データの2つのデータをつなげて分析をしてみることで、より立体的に生活者を捉えることができるのではないかと考えたからです。

図3
図3

 まず、コロナ禍中に支出総額が増えた人の家計データについて、各カテゴリでの支出金額の増減を見てみました。すると、全てのカテゴリで支出金額が増えた、というわけではなく、飲み会や旅行、レジャー、外食と言ったソトでの支出はやはり大きく減少していました。「行動制限を無視して遊び歩いていた人」というわけではないようです。

図4
図4

 ちなみに、「単純にお金持ちだから支出が増えているのでは?」という可能性もあったので、支出が増加した人たちの属性を全体と比較してみました。

 すると、性別にはほぼ差がなく、年代では30代、世帯年収では800万以上の層が全体に比べ若干多いのですが、それほど明確な差はありませんでした。特定のデモグラフィックな属性の人で、支出が増加している、というわけでもなさそうです。

図5
図5

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この記事の著者

酒井 崇匡(サカイ タカマサ)

博報堂生活総合研究所 上席研究員 2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして諸分野のブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。12年より博報堂生活総合研究所に所属。デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

佐藤 るみこ(サトウ ルミコ)

博報堂生活総合研究所 上席研究員 2004年博報堂入社。営業として、飲料、食品、製薬、化粧品などさまざまな企業の戦略立案・広告制作・メディアセールス等に携わる。3年間の産休・育休を経て2019年から現職。生活者観察手法(エスノグラフィ)の視点でデジタルデータを分析する新手法「デジノグラフィ」を推進中...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2022/12/27 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40876

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