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博報堂生活総研が「行動と意識」で紐解く明日の欲求

『CanCam』20年分の目次データ×歴代編集長の言葉から読み解く生活者の変化【後編】

 ビッグデータを活用した新たな生活者分析手法「デジノグラフィ」の研究事例を紹介する本連載。第3回は前回のファッション誌『CanCam』の20年間のデータ分析を引き継ぎ、特に 2010年代から2020年代にかけて、今まさに起こっている変化を読み解きます。本連載の著者である博報堂生活総合研究所の酒井氏と佐藤氏が、現職の編集長である安井亜由子氏(雑誌担当)、加藤真実氏(Web担当)のお二人から話を伺う。

★前編はこちらから!

「紙」と「Web」の二軸体制に

酒井:CanCamでは、2016年より紙の雑誌とWebの二軸体制をとっていますね。雑誌とWebの役割はそれぞれどのように位置づけられているのでしょうか?

加藤:一般的には「紙の雑誌にはオーソライズされた情報が書いてあって、Webのほうはなんでもあり」みたいなイメージがあると思います。でも、その感覚はCanCamではまったく通用しないんです。

 見る人にとっては、Webや動画もCanCamの一部。ちょっと外したことをやってしまうと、すぐに「公式がこんなことをやっている」と炎上する。CanCamとしてのブランド力を保ちながら、Web上のプラットフォームに適したコンテンツを出していくのがWeb担当の役割だと感じています。

加藤さん
加藤真実さん(小学館)
2020年~編集長(Web担当)

安井:ブランディングの部分は、主に紙の役割だと思っています。その意味では、新しいモデルやタレントを発掘したりするのも紙で行うのがベターという考えですね。

 ただ、紙だけで通用するとは思っていなくて、紙の内容をSNSやYouTubeに展開できるような仕組みは必要です。そうでないと、お互いの行き来がなかなか生まれないので。

 たとえばWebでバズりそうな企画を本誌でも取り上げて、両方のメディアで使えるようにしよう……みたいなことは、日々意識していますね。

佐藤:紙媒体とWeb媒体の協働というか、相互作用みたいなものは、コンテンツの方向性にはどのように反映されているのでしょうか?

加藤:たとえば誌面でも「Aさんという人、Bさんという人のどっちを出そう?」となったときに、Bさんのほうがリリースを出したときにニュースサイトが多く取り上げてくれるだろうし、YouTubeでも反響があるだろうし……といったWeb的な要素は、判断の大きな部分を占めるようになっていますよね。

安井:加えて、Webのほうが当たったワードがはっきり出ますよね。こういう人が当たるとか、「骨格診断」の企画が当たるとか。

 そういう反響がリアルにわかるので、そこで得た情報を誌面にも反映すれば、先ほども言ったようにWebへの流用も増えるし、お互いにWin-Win。なので、Webで当たった言葉は、折に触れて取り入れるようにしています。

安井さん
安井亜由子さん(小学館)
2020年~編集長(雑誌担当)

「量産型」から「あか抜け」へ

酒井:「Webから誌面に逆輸入される言葉が増えてきた」というのは注目すべき流れだと思います。そのなかで、とりわけ何度も特集で組まれているキーワードはありますか?

安井:あか抜け」という言葉は、とてもよく使っている印象がありますね。

佐藤:確かにそうですね。「あか抜け」は、2016年からぐっと増えてゆき、20年代に入ってからも安定して登場回数が多い。これは、Web発の表現なのでしょうか?

加藤:元々「あか抜けるコツ」みたいなものを誌面で紹介していくという姿勢は、CanCamのベースとしてあるんです。ただ、それを「あか抜け」という言葉でタイトルに打ち出してきたかというと、そうでもなかった。

 でも、YouTubeなんかを見ていると、「あか抜けコンテンツ」がすごく人気になっている。なるほど、今の読者層には「あか抜け」というストレートな言葉が響くんだなと思って、特集のタイトルに取り入れてみたら、やっぱり反応が良い。そこで、リピートしている……という流れですね。

酒井:以前、ヤフーさんと一緒に時系列で検索キーワードの推移を見ていたときに、「量産型」という言葉の検索数がこの2~3年で急増しているのが印象的だったんです。それも、18歳くらいの、ちょうど大学に入るタイミングの女性が「量産型女子になりたい」みたいな文脈で検索している。これは、「あか抜け」へのニーズとも関連すると思いますか?

酒井さん
酒井崇匡(博報堂生活総合研究所)

安井:「量産型女子になりたい」というのは、「(ファッションやメイクの)スタンダードが知りたい」というようなニュアンスですよね。個人的には、「量産型」の先に「あか抜け」があるのかなと思っています

 私たちは「社会人になったらCanCam」と言っているのですが、そこには大学生までは「量産型」でも、社会人になったらそこから一歩抜け出して「あか抜け」よう……というメッセージが込められていたりもします。

酒井:なるほど。「あか抜け」を「量産型」の上位互換と解釈すると、しっくりきますね。

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この記事の著者

酒井 崇匡(サカイ タカマサ)

博報堂生活総合研究所 上席研究員 2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして諸分野のブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。12年より博報堂生活総合研究所に所属。デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

佐藤 るみこ(サトウ ルミコ)

博報堂生活総合研究所 上席研究員 2004年博報堂入社。営業として、飲料、食品、製薬、化粧品などさまざまな企業の戦略立案・広告制作・メディアセールス等に携わる。3年間の産休・育休を経て2019年から現職。生活者観察手法(エスノグラフィ)の視点でデジタルデータを分析する新手法「デジノグラフィ」を推進中...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/30 07:00 https://markezine.jp/article/detail/41680

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