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マツキヨPBの発起人が語る「強いブランド」が持つ価値【お薦めの書籍】


  昨今の不安定な経済状況によってやむなく値上げをした企業も多いはず。顧客が離れ、売上が下がる心配をする企業も少なくないでしょう。コスパで勝負せずに成功しているブランドはどのように価値を創造しているのでしょうか。今回はそんな強いブランドを作るための極意を解説する本を紹介します。

マツキヨPBを立ち上げた乙幡氏が考える「強いブランド」の条件

 今回紹介する書籍は『儲かるブランドは、「これ」しかやらない 弱者でも1位をとれる!』。著者はブランドテーラーの代表取締役を務める乙幡満男氏です。

『儲かるブランドは、「これ」しかやらない』 乙幡満男(著) PHP研究所 1,705円(税込)
儲かるブランドは、「これ」しかやらない 弱者でも1位をとれる!
乙幡満男(著) PHP研究所 1,705円(税込)

 乙幡氏は新卒で入社したメーカーで、数多くのヒット商品を開発。その後、米国クレアモント大学院大学ドラッカースクールでMBAを取得し米系コンサルティング会社でイオンのPBのブランディングに従事。経験を得て入社したマツモトキヨシでは、同社のPBを新しく立ち上げてヒットに導きました。

 現在は大手流通やメーカーなど、様々な企業のブランドコンサルタントとして活動中の人物です。

 本書で語られるのは、数々のブランドを手掛けてきた乙幡氏が考える、ブランドを強くする方法です。これまで日本では、競合よりも機能的な優位性がある上で値段が安いこと、つまりコスパの良さが重要だと思われてきました。一方乙幡氏は、コスパではなくブランドが好きだからという情緒的な価値で商品を選んでもらえるように、競合と比較して「強いブランド」を作り上げていくべきだと述べています。

 マーケティング業界においてブランドの価値は重要とされるものですが、改めて、強いブランドを作り上げることで得られる利点は一体何なのでしょうか?

強いブランドが長期的に価値を生む6つの理由

 本書で乙幡氏は、そのブランドを使いたいという情緒的な価値があれば、自社に長期的に利益をもたらしてくれると述べ、その理由として以下の6つを挙げています。

  1. 価格で競わなくていい
  2. リピーターが指名買いしてくれる
  3. 顧客が自ら宣伝してくれる
  4. 従業員も売りたくなる
  5. 取引先との交渉で有利
  6. 良い人材を採用しやすくなる(P.33)

 情緒的価値によってコスパでの競争から離れられるだけでなく、そのブランドに魅力を感じるリピーターの出現や顧客による宣伝に波及し、さらには従業員、メーカーなら直接的な取引先にも好影響を及ぼすと整理。ブランドは強くなるほど相乗的に利益をもたらすことを示しています。また乙幡氏は、このブランド価値の重要性を次のようにも表現しています。

企業にとって、ブランドは長期的な利益を生んでくれる「資産」と言える。ブランドがないことによる損失を考えれば、その価値の大きさがわかるだろう。(P.47)

 2022年2月にインターブランド社が発表した「マツモトキヨシ」の2022年度のブランド価値評価額は約4億7,900万ドルにもなっています。

 乙幡氏が述べている通り、もし「マツモトキヨシ」のブランドを一切使えなくなり、無名のドラッグストアになってしまったらと考えると、ブランドの重要性がわかります。

顧客の自己表現の手段になるブランド作り

 前述の通り、情緒的価値で差別化をすることが強いブランドの形成に重要ですが、本書ではそれに加えて自己表現価値が加わるとそのブランドはさらに強くなると説明されています。

 その理由を乙幡氏は以下のように述べています。

機能的価値の優劣や、「好き」「嫌い」といった情緒的価値による判断ではなく、自己の理想を表現するために必要なものになれるからです。(P.168)

 アップルユーザーが「クリエイティブな人」、スターバックスの利用者が「都会的で洗練されている人」といったイメージを与えるように、強いブランドの多くには、ブランドのイメージを借りて自己表現できる価値があると乙幡氏は言います。

 このように顧客がブランドを通じてどのような「理想の姿」を実現できるかを考え、それに向かって築いていくとブランドはより強固になると本書では説明されています。

 本書では、 他にも強いブランドの特徴やどのように作り上げていくかといった方法を、乙幡氏自身が手がけた「マツモトキヨシのPB」の例などを使いながら詳しく解説しています。強いブランドはなぜ強いのか、なぜ強くあり続けられるのかを理解できる一冊です。

 値上げによって競争が激しくなる中、改めて商品やサービスの差別化を図りたいと考える方はぜひ手に取ってみてください。

本記事はPHP研究所からの献本に基づいて記事作成しております

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。

 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/26 20:55 https://markezine.jp/article/detail/40910

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