フリークエンシーと広告効果のとらえ方
インターネット広告のフリークエンシー(広告接触頻度)は少ないほうがいいというのは、インターネット広告の黎明期から定説となっている。広告を1回目や2回目でクリックしなかった人が、5回目や6回目でクリックする確率は極めて低いというのだ。すなわち、フリークエンシーが多くなると広告効果がバーンアウトする(燃え尽きる)と考えられている。
広告効果をクリックで計測するのであれば、この定説は正しいかもしれない。しかし、広告効果を多面的にとらえようとするとき、この定説を受け入れることはできない。
テレビ広告や新聞広告は、フリークエンシーが増加するにつれて効果も高まると考えられている。広告に何度も接触すれば、その広告を認知する人の割合や、メッセージを理解する確率が高まっていくのだ。インターネット広告についても、クリックという特殊な指標を除けば、広告効果はフリークエンシーと正の相関があると考えるべきだ。
アメリカと日本による効果測定調査の結果~インターネット広告でもフリークエンシーは多いほうがいい!~
これについての研究はアメリカが先行している。インターネット広告の効果測定を専門とするダイナミックロジックは、多数の調査実績からフリークエンシーとブランド指標のノーム値を算出している。それによると、ブランド認知率や購入意向率などは、フリークエンシーが多くなるほど高まっていくという。
日本においてインターネット広告のフリークエンシーと広告効果の関係を最初に立証したのは、インターネット広告推進協議会が2002年11月から翌年2月にかけて実施した調査だ。各回答者のバナー広告のフリークエンシーをクッキーによって把握したところ、フリークエンシーが多い人ほど広告認知率が高かった。
2006年になってからは、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムが、USENとともにインターネットCMの広告認知率を調査している。クッキーで判別したフリークエンシーごとに分析してみると、広告認知率はフリークエンシーの増加にともなって上昇していた。広告認知率は広告接触8回目あたりから上昇が鈍化して、13回目あたりから上昇は見込めなくなっていた。
これらの調査から、インターネット広告においてもフリークエンシーが多いほうが広告認知率の上昇やブランディングに有効といえる。
しかし、この知見を出稿計画に活かすことは、現在では残念ながら困難だ。なぜなら、ターゲットの過半数に5回以上広告を到達させようなどという出稿計画は、テレビ広告ならありえるが、リーチとフリークエンシーを予測できないインターネット広告では不可能だと考えられるからだ。また、インターネット広告には、1人当たりの広告接触回数の上限を設定するフリークエンシーキャップという手法があるが、それを適用できる広告枠は限定されていて現実的ではない。ただし、フリークエンシーキャップをはじめとする出稿条件のオプションは、将来的には拡充されるかもしれない。いまのうちから基礎研究を積んでおくことは無意味ではないだろう。