歴史の教訓
インターネット広告市場は今後も拡大していくだろう。しかし、5年後や10年後のインターネット広告は、現在とはまったく異なるものになっているかもしれない。むしろ、現在と同じであるはずがない。市場が順調に拡大すると楽観的に考えていては、変化への対応を誤るだろう。道は平坦ではないはずだ。
なぜ、そう言い切れるのか。それは、過去のインターネット広告の歴史を振り返ればわかる。わずか10年ほどの歴史だが、広告手法の盛衰はまさに諸行無常だった。衰勢の手法としてポップアップ広告と電子メール広告を、盛況な手法としてリスティング広告(検索連動型広告)とビデオ広告を紹介しよう。
広告手法の栄枯盛衰
まず、絶滅しつつあるポップアップ広告について。ポップアップ広告は消費者から評判が悪かったが、絶滅の決定打となったのはWindows XP SP2だ。2004年9月に同ソフトウェアがリリースされ、ブラウザーにポップアップ防止機能が追加されたことは、ポップアップ広告にとって死刑宣告を受けたようなものだ。また、ポップアップ広告ほどではないにしても苦しんでいるのは電子メール広告だ。消費者の受信ボックスがスパムと呼ばれる迷惑メールであふれかえるようになり、電子メールの開封率や精読率は低下している。広告主としては、どれだけ閲覧されるかわからない広告には費用をかけられない。
一方、このところ隆盛が著しいのはリスティング広告(検索連動型広告)だ。新興の手法ながらすっかり一般化した。検索結果画面に表示される広告なので、需要が顕在化した消費者にのみターゲティングできて効率がよい。効果的な運用には手間がかかるものの、小額の予算でも展開でき、クリック課金なのでリスクも低い。個人ブログなどにも掲載できるので、いわゆるロングテールから見込み客を獲得する手法としても注目されている。
また、ビデオ広告も活況だ。もちろんその背景には、ブロードバンドの普及によって大容量のビデオでもストレスなく視聴できるようになったことがある。それ以外に、ビデオ再生技術の進化も忘れてはならない。フラッシュがビデオに対応したことによって、ビデオを取り込んだバナー広告が一般的になった。ウェブページにビデオを掲載しようとすると専用プレイヤーが立ち上がるまでに時間がかかるなどの問題があったが、フラッシュによって解決された。ストリーミングコンテンツにビデオ広告を挿入する手法も、GyaOのような有力サービスの登場によってリーチが期待できるようになってきた。