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いま、なぜリメイク作品が注目されるのか?スラムダンク等の検索行動から背景を探る

データで見えた、リメイク作品ならではの盛り上がり方

 注目される理由を確認するため、「スラムダンク」と一緒に検索されたキーワードを分析しました。ここでおもしろかった点は、男性と女性で検索キーワードから見える盛り上がり方が異なることです。

 下の散布図は、2022年7月以降に「スラムダンク」と一緒に検索されたキーワードを、検索ユーザーの性別・年齢別にプロットしたものです。横軸が性別、縦軸が年齢を表しており、たとえば他の性年代と比べて若年女性が多く検索しているキーワードは、図の右下に位置します。

 図を見ると、女性は「試写会」「上映」など映画情報に関する検索が多いことが特徴として表れています。「声優」「グッズ」といった検索からも、スラムダンクファンというよりはアニメファンという印象を受けます。一方で、男性は「動画」「(アニメの)打ち切り」「名言」など、アニメや原作漫画に関する検索が目立ちます。当時好きだった作品を懐かしむ気持ちが検索ワードに表れているのではないでしょうか?

【クリックして拡大】2022年7月~12月「スラムダンク」との掛け合わせキーワード(Dockpit/PC・スマホ合算)
【クリックして拡大】2022年7月~12月「スラムダンク」との掛け合わせキーワード(Dockpit/PC・スマホ合算)

 どちらも映画化を起点に盛り上がりを見せている点は同じですが、矢印の向きが異なるように思います。“当時からのファン”が持つアニメや原作漫画から映画に向かう矢印と、“新規ファン”の逆向きの矢印とで、盛り上がりが二分する様子はリメイク作品ならではと言えます。

「クロサギ」でも見られた懐古検索

 当時の作品を懐かしむような検索行動は、ドラマ「クロサギ」にも表れていました。スラムダンクは原作漫画、テレビアニメからの映画化ですが、クロサギは同じドラマでのリメイクです。

 ドラマ「クロサギ」の前作は2006年に放送されたため、スラムダンクと同じように当時のファンを設定するのであれば、放送当時に中高生だった20代後半~30代前半となるでしょう。

 下の表は、直近1年間に「クロサギ」と一緒に検索されたキーワードのランキングです。上位に「山下智久」「山P」「2006」といった前作ドラマに関するキーワードも多くランクインしています。おもしろいのは、これらのキーワードを検索したユーザーの年代です。日本のネット利用者全体と比べ、「平野紫耀(今作主演)」と検索したユーザーは、50~60代の割合が高いのに対し、「山下智久(前作主演)」は20~30代の割合が高くなっています。これはスラムダンクでも見られた、“当時のファン”の懐かしさから来る検索行動ではないでしょうか。

【クリックして拡大】2022年1月~12月 掛け合わせキーワードランキング、検索ユーザーの年代構成(Dockpit/PC・スマホ合算)
【クリックして拡大】2022年1月~12月 掛け合わせキーワードランキング、検索ユーザーの年代構成(Dockpit/PC・スマホ合算)

 さらに下の表は、「クロサギ 山下智久」の検索時に閲覧されたページのランキング(上位10位)です。ここで注目したいのは、前作を見られる配信サイトを紹介したページが閲覧されていることです。リメイク化をきっかけに前作を懐かしく思い、前作の動画を見る。当然と言えば当然の行動ではありますが、VOD(動画配信サービス)がリメイク作品の盛り上げに一役買っていることがデータからわかります。

2022年1月~12月 「クロサギ」「山下智久」の掛け合わせ検索時の流入ページランキング(Dockpit/PC・スマホ合算)
2022年1月~12月 「クロサギ」「山下智久」の掛け合わせ検索時の流入ページランキング(Dockpit/PC・スマホ合算)

リメイク作品がウケるのは現代ならでは

 筆者はリメイク作品の注目度の高さは現代だからこそと考えます。コロナ禍によってコンテンツ消費が増加した人、家族や身近な人との時間が増え共通の話題を探すようになった人も多いのではないでしょうか。そんな中、前作もあって“沼”にハマりやすく、世代を越えて話題にしやすいリメイク作品は嬉しい存在です。

 そして、リメイク作品はレトロマーケティング戦略の一種であるように感じます。懐かしさから肯定的なイメージを引き起こし、製品やサービス購入に結び付ける手法がレトロマーケティングですが、“当時のファン”からの一定の需要が確実に見込めるだけでなく、PRなどのマーケティングコストも通常より抑えられると一般的には言われています。

 そのような戦略的背景を想像しつつも、イチ消費者としては一つの作品を風化させない、世代を越えて愛される作品を生み出すリメイク化に“エモさ”すら感じています。

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この記事の著者

川西 里穂子(カワニシ リホコ)

株式会社ヴァリューズ データマーケティング局 コンサルティングG アシスタントマネジャー マーケティングコンサルタント

調査会社で営業とリサーチャーを務めたのち、2社目ではBtoCメーカー企業のデジタルマーケティング支援に従事。ヴァリューズに入社後は、コンサルタントとして日用品/食品/総合家電メーカーな...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/27 09:35 https://markezine.jp/article/detail/41400

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