VMDとDXを掛け合わせ、オフラインもパーソナライズする
──VMDとDXを掛け合わせるとは、どういうことでしょうか。
畠山:VMDと言えば、ショーウィンドウのディスプレイという印象が強いかもしれません。それもVMDの一部ですが、我々博報堂プロダクツが定義しているVMDはもっと領域が広く、生活者にとって「立ち寄りやすく・選びやすく・買いやすい」売場を作るためのノウハウすべてを含みます。
VMDは店内コミュニケーションにフォーカスしたノウハウなので、元々オンラインの領域は入っていませんでした。しかし今後、生活者にとって選びやすく買いやすい買い物体験を作るためには、DXと掛け合わせて、オンラインを含めたカスタマージャーニーも踏まえることは外せないと思っています。
西塚:VMDだけですと「その日に来店した顧客にどうコミュニケーションするか」だけです。しかしOMOも含めて考えると「事前情報を得た上で、売場でどうコミュニケーションをするか」といったプロセスも含めていく必要があります。
顧客の年齢・性別や特性がわかり、システムによってはオンラインでの閲覧履歴や購入履歴から、何に興味があるのかまで割り出せます。データで顧客を事前に把握し、店頭のデジタルサイネージに欲しいものを適切なタイミングで表示することで「買いたい気持ち」を後押しすることができるのです。
畠山:OMO化が進めば、店頭で顧客ごとに1to1のコミュニケーションができます。従来以上に顧客像を明確に細分化でき、生活者の多様なニーズに対応した訴求ができます。オフラインでもコミュニケーションのパーソナライズ化を推進すれば、より店舗や商品・ブランドに対する好意度が上がるほか、LTV向上も期待できます。
変化する購買心理に合わせた店舗設計理論とは?
──御社にはVMD×DXを推進する独自メソッドがあるそうですが、どのような理論なのでしょうか。
西塚:我々は店内コミュニケーションを5つのプレゼンテーションに整理し、変化する購買心理に合わせた最適なコミュニケーションを行っています。一般的なVMDは、下図のビジュアルプレゼンテーション、ポイントプレゼンテーション、アイテムプレゼンテーションの3つだけを指します。
西塚:これに顧客を把握する段階である、ウェルカムプレゼンテーションという段階を設けました。タッチログインやBeaconを活用して顧客を把握する仕組みです。ウェルカムプレゼンテーションが入ることで、ポイントプレゼンテーションとアイテムプレゼンテーションの打ち手を顧客によって変えることが可能となります。
次にアフタープレゼンテーションを追加しました。これは退店後のオンラインでのコミュニケーションです。店内で興味を持ったものや検討したけれど買わなかったもの、長時間滞在していたエリアなどのデータを活用します。
畠山:少々時間を置いてから、セール情報を案内したり、再来店を誘引するクーポンや特典を出したりもできます。オフラインでの出来事がオンラインに影響を与えられるOMOが完成します。最終的には、オフラインでは難しかった1to1コミュニケーションがオンオフの両方で実施できる状態になります。
吉田:VMDの全体設計をOMO観点で実行する際、ウェルカムプレゼンテーションで取得した顧客データやアフタープレゼンテーションで得た反応はビジュアルプレゼンテーション、ポイントプレゼンテーション、アイテムプレゼンテーションと相互に作用します。出し分けや効果検証をしながら、コンテンツのPDCAを媒体・オンオフをまたいで行えるようになるのです。
アプリ会員を獲得すると、ユニークIDで店頭補足や買い物後の追客が可能になります。まずそこから進めるのも1つの手です。