デジタルへの親和性が高い「ミレニアル世代」
近年のマーケティングシーンでは、現役世代の一つである「ミレニアル世代」に向けた施策が重要視されています。デジタルに慣れ親しんだミレニアル世代の特徴を正確に把握することで、より効果的なアプローチが可能です。
本稿では、企業のマーケティング担当者向けに「ミレニアル世代の概要」「Z世代との違い」「ミレニアル世代に向けたマーケティング施策のポイント」などを解説しますので、ぜひお役立てください。
ミレニアル世代とは?
ミレニアル世代とは1981年〜1996年に生まれた世代です。新世紀が到来した2000年代に成人した世代であり、2022年には26歳〜41歳を迎えます。
米国などでは、1980年代初頭〜1990年代中頃に生まれた世代を指して「ジェネレーションY」と呼ぶことから、ミレニアル世代は「Y世代」とも呼称されます。米国では、ジェネレーションXの次の世代として、Yと名付けられました。
「◯◯世代」という呼び方、もとを辿ればハンガリーの写真家ロバート・キャパ(Robert Capa)が唱えたのが始まりとされています。彼は第二次世界大戦後に成長した若者をテーマにしたフォトエッセイのタイトルに「未知の世代」を意味する「X世代」を冠し、そこから「◯◯世代」の呼び方が広まったといわれています。
ミレニアル世代という用語は、後述するZ世代と同じく、マーケティングや人材などを語る際に用いられます。
ミレニアル世代の特徴や価値観
ミレニアル世代が持っている特徴や価値観は、以下のようなものです。
- デジタルテクノロジーへのリテラシーが高い
- ワークライフバランスを重視する
- 多様な価値観に理解がある
- モノに対してあまり執着しない
次項より、詳細に解説します。
デジタルテクノロジーへのリテラシーが高い
ミレニアル世代は、それまでの世代と比べてITリテラシーが高い傾向にあります。ミレニアル世代が育ち始めた1995年にはWindows95が発売され、その後もデジタルテクノロジーが着々と進歩したため、学生時代から携帯電話やパソコンに触れていた層も少なくありません。
ミレニアル世代の多くは、さまざまなデジタルデバイスを使いこなせるだけではなく、情報収集や取捨選択、発信も得意とします。さまざまなアプリやネットサービスを活用することに慣れているため、インターネット上のコミュニケーションやショッピングにも抵抗がありません。
分からないことがある場合は、人に聞く前にインターネットやSNSを活用して調査する傾向がある点も、ミレニアル世代の特徴です。
ワークライフバランスを重視する
仕事とプライベートを両立させる「ワークライフバランス」を重視する傾向があるのも、ミレニアル世代の特徴の一つです。
ミレニアル以前の世代は、高度経済成長やベビーブームなどから「仕事>プライベート」の優先順位の価値観を持つ人も少なくありませんでした。
しかし、ミレニアル世代ではその両方の質を保つことを理想として、仕事は「効率重視」で進め、残業や休日出勤を避ける傾向があります。
ミレニアル世代が「テレワーク」「ギグワーク」といった、デジタルを活用した働き方を積極的に取り入れている背景には、こういったワークライフバランスを重要視する思想があるといえるでしょう。
モノに対してあまり執着しない
ミレニアル世代は、それまでの世代と比べると物欲が少なく、モノを所有することにあまりこだわりがありません。生まれた当時から、モノが豊富にある社会環境であったためか、「必要最小限のモノがあればよい」と考える傾向があるのです。
さらに、商品やサービスそのものではなく、そこから得られる「体験価値」を重視する傾向があります。価値があると感じる体験や経験をSNSなどでシェアして共感を集めることで、さらなる喜びを感じる人も少なくありません。
そのため、モノを所有するよりも、シェアハウスやファッションレンタルなど、シェアリング型のサービスと親和性が高い世代といえるでしょう。
多様な価値観に理解がある
ミレニアル世代は、自分とは異なる生き方や価値観、文化に対しても柔軟に理解を示します。これは、インターネットやSNSなどを活用し、オンライン上でさまざまな情報に触れ、あらゆる人とコミュニケーションを取れるようになったためと推察できます。
ミレニアル以前の世代は「安定」を重視する傾向がありました。一方で、ミレニアル世代はそれぞれの「個性」を大切にし、多様な価値観を受け入れたうえで、より自分らしい生き方を模索する傾向があるといえます。
そのため、「仕事=転職や独立を通して自由と成長を追い求める場所」と考えている人も少なくありません。
ミレニアル世代と比較されやすいZ世代とは?
ミレニアル世代と対比されやすい概念として「Z世代」が挙げられます。下記より、Z世代の概要や特徴を解説しますので、ミレニアル世代について深く理解するためにも把握しておきましょう。
Z世代とは?
Z世代とは1990年後半から2012年ごろまでの間に生まれた世代と定義されており、「Y世代(=ミレニアル世代)の次」との意味から「Z」と名付けられました。
2022年現在では、Z世代は20代前半から10代が該当します。今後社会の中心として活躍する世代として位置づけられており、近年Z世代に向けたマーケティングや採用強化の必要性も叫ばれています。
Z世代の特徴
Z世代の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- 自分らしさを大切にする
- 他者からの評価に敏感
- 現実的で安定志向
- 所有にこだわらない
ミレニアル世代と同様に、Z世代も多様な価値観に触れながら育ってきた世代です。そのため、広い視野を持ち、多様な価値観や文化にも理解を示しやすい傾向があります。
「それぞれ違いがあって当たり前」という考えのもと、安易に周囲に同調するのではなく、自分らしさを大切にします。
そのため、商品やサービスを購入する際も、ブランドの知名度や人気ではなく「自分とのマッチ度」などを基準にします。その一方で第三者からの評価に敏感な点もZ世代の特徴です。
Z世代は、親がリーマンショックの直撃を受けた世代にあたり、幼年期から経済的に不安定な社会を経験しています。そのため現実的な人や安定志向の人が多く、消費に対しては慎重な姿勢を持っているといえるでしょう。
ミレニアル世代とZ世代の違い
以上の内容を踏まえ、ミレニアル世代とZ世代の違いについて論考します。おもな相違点は、以下のとおりです。
- ミレニアル世代は「デジタルパイオニア」の時代に生まれた
- ミレニアル世代の方がよりブランド重視
- ミレニアル世代は体験重視だがZ世代は実用性重視
- 貯蓄傾向はZ世代の方が高い
- ミレニアル世代の方が情報収集のチャネルが幅広い
ミレニアル世代は「デジタルパイオニア」の時代に生まれた
ミレニアル世代は、ITの発展とともに成長した「デジタルパイオニア」ともいえる世代です。インターネットや携帯電話(スマートフォン)、SNSなど、デジタルテクノロジーの発展とともに育ってきたため、テクノロジーに対する心理的な壁を感じていない傾向が見られます。
一方のZ世代は、物心ついた時点でインターネットをはじめとするITテクノロジーが発展していたため「デジタルネイティブ」とも呼ばれています。
- ミレニアル世代…デジタルパイオニア
- Z世代…デジタルネイティブ
ミレニアル世代の方がよりブランド重視
ミレニアル世代が10代だった当時、アパレルやコスメを中心にブランドがブームになり、ブランド品の所有がある種の「ステータス」になりました。そのため、ミレニアル世代にはブランドに対して愛着を持っている人も少なくありません。
対するZ世代は、ミレニアル世代ほどブランドにこだわりがなく、自分らしさを重視して購買行動を行う傾向にあります。
- ミレニアル世代…ブランド重視
- Z世代…自分らしさ重視
ミレニアル世代は体験重視だがZ世代は実用性重視
ミレニアル世代は、購買行動において「体験価値」を重視します。プロダクトの質そのものだけでなく、どんな体験や経験ができるのかを考慮して商品やサービスを選ぶのです。
Z世代はというと、反対に商品やサービスの「実用性」を重視する傾向があるといわれています。購買の意思決定においては、常にコストパフォーマンスを重視し、お買い得感のある消費を好む傾向にあります。
- ミレニアル世代…体験重視
- Z世代…実用性重視<
貯蓄傾向はZ世代の方が高い
ミレニアル世代は、派手な浪費をするわけではありませんが、自分が価値を感じること、使うべきところには資金を投じる傾向があります。
それに比べて堅実な金銭感覚を持つZ世代は、ミレニアル世代が若かった頃と比較しても、より貯蓄を重視すると考えられています。
- ミレニアル世代…消費活動にも抵抗がない
- Z世代…より貯蓄を重視する
実際に、松井証券株式会社が実施した「世代別『お金事情』に関する実態調査 」によると、以下のように報告されています。
<お金に関する不安を感じ始めた年齢の平均>
- ミレニアル世代…27.8歳
- Z世代…22.7歳
<貯金額/月の平均(25歳のとき)>
- ミレニアル世代…5.0万円
- Z世代…5.9万円
以上から、ミレニアル世代に比べてZ世代はお金に不安を感じ出すタイミングが5年も早く、貯蓄に回す金額も多いことが分かります。
ミレニアル世代の方が情報収集のチャネルが幅広い
ミレニアル世代は、インターネット検索を中心に情報収集を行いますが、目的次第ではSNSや動画コンテンツも多用します。さらには、信頼できる情報を得るために書籍を参照するケースもあるでしょう。
Z世代もミレニアル世代と同様にインターネットやSNSで検索を行いますが、YouTubeやTikTokなどの動画コンテンツについては、ミレニアル世代以上に使用頻度が高い傾向があります。
また、Z世代は「本離れ」が加速しているともいわれており、書籍での情報収集をする人の割合は比較的少ない傾向にあります。
- ミレニアル世代…さまざまなチャネル
- Z世代… 動画中心
ミレニアル世代に向けたマーケティング施策のポイント
ミレニアル世代に向けたマーケティング施策を行う場合、「体験価値や経験価値を重視したプロダクトを提供する」「共感からの拡散を狙った情報発信を行う」といった点を意識すると効果的です。
体験価値や経験価値を重視したプロダクトを提供する
ミレニアル世代にとって、商品やサービスは単に消費するだけの対象ではありません。ミレニアル世代の多くは購買行動を通して、価値ある体験や経験を得たいと考えているのです。
そのため、ミレニアル世代に向けたマーケティングのポイントとして、まずは「モノ消費」ではなく「コト消費」を意識する必要があるといえます。
ミレニアル世代は、ほかの人が体験していない特別なものに魅力を感じる傾向があるため、表面的な価値を訴求するよりも、よりエモーショナルな訴求を行う方が届きやすいでしょう。
たとえば、モノを第三者と共有する「シェアリングエコノミー」や、都度課金で使用権を得る「サブスクリプションモデル」などの訴求は、より効果的と考えられます。
共感からの拡散を狙った情報発信を行う
企業がミレニアル世代に向けて自社商品やサービスの認知拡大を図る際は、「共感されやすいか」や「拡散されやすいか」を意識することが大切です。これは、ミレニアル世代が実感や共感を重要視して意思決定を行う傾向があることに起因します。
さらに、プロダクトに共感できる要素があった場合に、InstagramやTwitterといったSNSでフォロワーに宣伝してくれれば、さらなる情報拡散が期待できるでしょう。情報がミレニアル世代間で拡散され続ければ、大幅な売り上げ向上も可能です。
特にミレニアル世代は、企業が発信する広告よりも、第三者の口コミやインフルエンサーの発信を信頼する傾向があります。ミレニアル世代に向けた情報発信では、プロダクトや開発者の「ストーリーテリング」を重視したり、インフルエンサーを起用したりする手法が効果的です。
ただし、ミレニアル世代は家庭科の「男女共修」が始まった世代でもあるため、情報発信の際には性別による偏見が含まれないように注意しましょう。
まとめ
ミレニアル世代はデジタルテクノロジーとの親和性が高い世代であり、多様な価値観を受け入れ、より自分らしい働き方を求める傾向があります。
モノよりも経験や体験を重視する世代でもあるため、ミレニアル世代に向けたマーケティングを行う際は、より「体験価値」に重きを置いたプロダクトを提供したり、共感を呼ぶ「ストーリーテリング」を発信したりするよう意識しましょう。