会員登録の際のストレスをアプリで軽減
ノーコードで簡単にアプリ開発ができる「Yappli」を提供しているヤプリ。創業10年目を迎える同社では、これまでの導入実績は750アプリ以上にのぼり、そこで開発されたアプリの累計ダウンロード数は1億件を超える。
まず中川氏から、アプリから始めるCRM施策の利点や特徴について説明。アプリというチャネルの最大の特徴は「会員獲得が得意なこと」だと語った。
サービスの会員登録をする際、店頭で用紙に個人情報を記入し、その情報をスタッフがパソコンで入力をして初めて会員登録ができるケースはまだまだ多い。Webフォームの入力においても、小さな欄に情報を1つ1つ入力していき、エラーが出るとその項目に戻って入力し直す……という「イライラ」は誰しも1度は経験があるだろう。
「従来の情報の入力のさせ方は、ユーザーにとって利便性が高い登録方法とはいえません。アプリはインターフェースがシンプルなため、簡単なフォームに入力するだけで、時間をかけずに会員登録をしていただけることがメリットです」(中川氏)
企業にとってもアプリ活用のメリットは大きい。アプリで入力された情報はそのまま会員データとして蓄積ができ、会員証の発行やメッセージの配信の出し分けにも活用できる。また、自社プラットフォームとなるため、お気に入り店舗や趣味嗜好などの情報の追加・変更を継続して取得することも可能だ。
アプリのCRMは会員数を増やすことが最優先
2つ目の特徴は、メッセージ配信が得意なことにある。CRM施策でよく使われるメールは、セグメントごとに情報の出し分けが安易にできる一方で、メールボックスの中で埋もれてしまいやすいというデメリットも発生する。アプリのPUSHメッセージもメールと同様に情報の出し分けができることに加え、自社のプラットフォームのため他社の情報が入ってくることはなく「埋もれやすさ」も回避できるのだ。
アプリの3つ目の特徴は、顧客理解が得意なことだ。中川氏は「アプリは顧客理解に役立つ有用なデータが手に入りやすいツール」だと指摘。購買データからは「何が売れたか」しかわからず、実際に購入者がどういう使い方をしていて、結局その商品を買って満足しているのかまでは計測のしようがない。しかし、アプリであれば「スタイルブックを見ている」「修理のQ&Aを見ている」など、商品購入後のアクションまでを接点として持てる。そしてそこで得られた情報を、商品企画へとフィードバックできるのだ。
「アプリでCRMを行う際は、いかに購入後の接点の情報を取得して、さらにはその情報をいかに顧客理解に使える形で保持していくかがポイントです」(中川氏)
中川氏は、アプリでのCRMには3つのステップが必要であると語る。まず、顧客の囲い込みとして「会員数を増やす」こと。次に知識・意識の向上として「アクティブ率を上げる」こと。最後に売上につなげることとして「購入率を上げる」ことだ。
「当社では、いきなり購入率を上げるのではなく、まず会員数をきちんと増やすところから始めることをおすすめしています。その次にアプリを使ってくださる環境を整え、最後にアプリユーザーがより購入しやすい施策を行っていく。この順番で施策を打ち、PDCAをまわすことが重要だと考えます」(中川氏)
【事例紹介】店頭で登録促進しやすい機能によりDL数7倍に
ここからは神田氏が、Yappli導入企業の事例から大きな効果を得た施策を紹介。1社目は紳士服のサカゼンだ。1日1回チャレンジできるガチャ機能を搭載し、アプリならではの特徴を活かして毎日開きたくなるようなアプリへとリニューアルした。
また、店舗で購入する際には、アプリを開いてくじ引きをしてその結果に応じたクーポンが受け取れる施策も導入。店頭でスタッフからアプリ活用や新規登録を促しやすくした。
スーツの購入には接客が伴うため、顧客との関係値が深まりやすく、スタッフからのアナウンスによりアプリのダウンロードが伸びやすい傾向があった。さらに店内での呼びかけを強化したことで、ダウンロード数は前年比7倍にも跳ね上がった。
2社目の衣料品チェーンのRight-onでは、会員証などユーザーがよく使う機能をホーム画面に集約するなどアプリにおける利便性の向上を図った。その結果、アクティブユーザーが20万人から55万人に増加するなど大きな効果が出ている。
また、店頭で気になる商品があれば、スタッフに声掛けをせずともアプリを通じてQRコードを読み込むことで商品詳細を見られる機能も搭載。店頭で購入に至らなかった商品も、自宅に帰ってからアプリ上での購入も可能にした。こうした施策の改修を進めた結果、アプリ経由での売上が141%にまでアップした。
スタッフコーデの検索性を上げアクティブ率向上
3社目のファッションブランド「Ray Cassin(レイ・カズン)」は、アクティブ率の向上に成功した事例だ。1日1回アプリを開いてスタンプを貯められるほか、「来店ボーナス」や「試着室の利用」でスタンプが貯められるなど、オンラインと店内の様々なタッチポイントでスタンプラリーを実施している。
「接客経験のある方がアプリの構築をされているからこそ、購入までの導線の中でどこにコンバージョンポイントがあるのか、より効果的に興味を高めてもらえるように設計されています」(神田氏)
また、人気コンテンツのスタッフによるコーディネート一覧も改修を実施。「ブランド」「身長」「骨格」でセグメントを絞れるようにした。その結果、アプリを開く回数が1ユーザーあたり、月々2.5回から4.5回にまで増加。「アプリで商品を見て店舗で実物を見て購入する」という導線も強化されたという。
最後は、購入率を上げた事例として、スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーの施策を紹介。ダウンロード後、ユーザーは性別や興味のあるスポーツなど簡易的な項目を入力するだけで、興味のある商品がアプリ上に表示される機能を搭載。また、「MENS」「ランニング」と設定したユーザーに対しては、メンズのランニング商品に関するプッシュ通知をセグメント配信している。その結果、メルマガと比較してアプリでの購入回数は約20%増加、1人当たりの購入単価は約50%も増加したという。
「ユーザーは、いかに自分にとって必要な情報を受け取れるかが重要ということです。アプリを活用することで、より精緻な1on1コミュニケーションも可能になります」(神田氏)
アプリを開かせるのではなく“ユーザーを育てていく” ための3ステップ
これらの事例を受けて、中川氏はCRMに必要な3ステップの各施策を以下のようにまとめた。
まず「会員数を増やす」ためには、店頭でスタッフがおすすめしやすく、かつユーザーがダウンロードしてみたくなるフックとなるコンテンツを用意すること。また「会員登録で100ポイント進呈」などのインセンティブも有効だ。
次に「アクティブ率を上げる」には、欲しい情報がすぐ見つけられるように動線を整理することと、個人に合わせた情報の出し分けが効果的だ。「自分が欲しい情報は自分で探してね」というのではなく、「あなたはこういう情報が欲しいですよね」と企業側から提案することで、ユーザーは興味のある情報にアクセスしやすくなる。
また、アプリならではの施策として、ガチャやスタンプラリーなどゲーミフィケーションの要素を加えたコンテンツもポイントだ。ユーザーがブランドのことを楽しく学ぶ機会の創出につながる。「ただやみくもにアプリを開かせるのではなく“ユーザーを育てていく”観点でのコンテンツも用意していきましょう」(中川氏)
最後の「購入率を上げる」ためには、商品の検索のしやすさが重要だ。商品名の他にも性別、色、カテゴリー、価格帯、ファッションスナップからの検索など、ユーザーに合わせた様々な検索導線を準備することがおすすめだ。
「アプリならではの施策としては、店舗来店(オフライン)とアプリ(オンライン)で連動した企画もユーザーにとっては楽しみの一つになります。工夫がある企画を用意できるとなお良いですね」(中川氏)
最短1ヵ月でネイティブアプリがリリース可能
最後に神田氏は、ノーコードのアプリプラットフォーム「Yappli」の最大の特徴は、「導入スピードの速さ」だと強調した。最短1ヵ月でネイティブアプリがiOS、Androidそれぞれからリリース可能という。
また、ノーコードのサービスのため自社に専門の技術者がいなくても運用できることも強みだ。機能の追加はドラッグアンドドロップの操作で完了し、プッシュ通知の設定もテキストや画像を選択するだけで簡単に配信することができる。
「PUSH通知の文言は、A/Bテストや試行錯誤をしやすい環境になっています。さらに、同じ管理画面上に様々な分析が可能なダッシュボードも表示されます。Yappli を活用した成功ノウハウも提供できるほか、企業様同士でナレッジをシェアし合うコミュニティーもあります」(神田氏)
2021年の秋にリリースした「Yappli CRM」は、アプリを中心とした顧客管理・ポイント管理・アプリCRM施策を実現するツールだ。これまでYappli単体ではできなかった、より個人に紐づくような情報を使った施策やユーザーのアクションにフォーカスした施策が可能になったという。
「新しい会員登録や会員体験をすぐに実装いただける環境をご用意しています。モバイルマーケティングの重要性が高まっている中で、これから準備を考えている企業様・より強化したい企業様は、ぜひ当社のサービスによってご支援させていただければと思っています」(神田氏)