DOOHの価値を最大限に活かすには?
──メディアプランニングにDOOHを入れるとき、どのようなことを意識すべきですか?
高橋:以前のOOHはリーチ効率がコントロールできず、効果を読みづらいという難点があったのですが、ここまでの話にあったとおり、それらの点はDOOHでは解決されています。ただ、DOOHを取り入れるとなると、現時点ではまだハードルもあります。
一つは、DOOHとテレビCMやYouTube、SNS広告とでは、動画の見られ方が違うことに起因する課題です。トレインチャンネルや信号待ちの交差点、駅のホームなど、立ち止まっているタイミングで見るものはそこまで問題ありませんが、歩いて通り過ぎるようなサイネージでは、1秒や2秒で広告を目に留めてもらう必要があります。かつ、DOOHは音無しの面のほうが多く、これらを踏まえてDOOHに適したクリエイティブを制作しなければいけないわけです。ですので、マーケティングコミュニケーションを設計していくとき、早い段階からDOOHという選択肢が広告主やプランナーの頭の中にあることが必要になってきます。
また、動画を用いた広告では完全視聴率をKPIにすることが多く、私もこれ自体は間違っていないと思います。ですが、本来の目的は広告によって態度変容を起こすことであり、その成果を測るために便宜上、完全視聴率を用いているに過ぎません。現状は、完全視聴率というKPIありきで考えてしまっている、あるいは完全視聴率の高い広告がよしとされているケースも多く、この状況ではDOOHの効果的な活用にはなかなか至らないように思います。
DOOHは、実はデジタル施策の手段として非常に優れており、個人的にはYouTubeなどのデジタル広告と横比較しながらプランニングするような媒体と捉えています。
──まだ先行者優位が働く媒体とも言えるかもしれませんね。DOOHはモーメントを捉えることができる媒体というのも、メディアプランニングで新たに取り入れられる視点だと思いました。
高橋:CTV広告が注目されているのと同様に、スマートフォン以外の場所で起きているオフライン広告のデジタル配信は、既に広告の大きなトレンドになっています。まさにその中心を担っていく可能性があるのがDOOHです。そして、個人をターゲティングすることももちろん大事ですが、昨今の時代の流れを踏まえても、ターゲットのモーメントを捉えることの重要性はより高まってきていると感じます。ブランドや商品の課題と消費者のモーメントをうまく切り取る意識で、プランニングにあたっていきたいです。
また、海外のDOOHの事例を見ていると、ブランドの課題や広告の目的と広告表現がマッチしている好例を見かけます。ヘアケアブランドが駅のホームに配信しているDOOHで、電車がホームに入ってくると、サイネージの中に映っている女性の髪がきれいになびく仕掛けになっている広告を見たことがあるのですが、DOOHだからこそのクリエイティブでブランドの目的をしっかり果たしているなと感心しました。
我々は広告をプランニングするとき、汎用性と拡大性を重要視します。例に挙げたような海外のDOOHのクリエイティブを日本でも行うには、まだ技術的な開発が必要な部分もあると思います。一つの施策のためだけに企画するのではなく、成功事例を次につなげて、継続・拡大していけるような技術開発をLIVE BOARDさんに期待しています。
小林:サイネージの枠を最大限に使うとなると、たしかにクリエイティブの届け方、表現方法もさらに進化させていかなければなりません。リアルタイムで行っているイベントの映像をDOOHで配信できるようにしたり、サイネージの前にいる人のリアクションを受けて映像が変化するインタラクティブな広告表現を取り入れられるようにしたり、現在LIVE BOARDでは、クリエイティブ面での技術開発にも力を入れています。高橋さんがおっしゃるように、広告主やプランナーのみなさんが汎用的に使えるところまで、ソリューションとして落とし込んでいきたいですね。
