※本記事は、2023年6月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)90号に掲載したものです。
【特集】明快な方程式がなくなった、メディアプランニングの今
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─ WBC期間中のテレビCM投下量が話題 カーネクストのメディアプランニング
─ 広告が刺さる瞬間を捉えよ 偶然の出合いを意図的に作る、DOOHのマネージドセレンディピティとは(本記事)
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─ これまでと対極の価値訴求で若年層と女性を取り込んだ「丸亀シェイクうどん」のメディア戦略
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「デジタル化されたOOH」からさらに進化、DOOHの現在地
──はじめに、DOOHが現在までに遂げてきた進化を振り返りながら、今DOOHでどのようなことができるようになっているかを押さえたいと思います。
小林:現在のDOOHは、元来のOOHから大きく2段階の進化を経ています。まず1段階目は、OOHのデジタル化です。決められた期間中・決められた場所に・1社で1種類の広告を掲出するしかなかったOOHは、デジタル化により、複数の企業が複数の広告素材を出し分けられるようになりました。3D素材など多様なクリエイティブ表現ができるようになったのも一つのポイントだと思います。ただ、この時点ではまだ、ターゲティングと言ってもエリア別に掲出媒体を選ぶことくらいしかできませんでしたし、掲出期間は1週間/そのうち1時間に〇回表示させるといった具合に、柔軟とは言えない固定的なものでした。これが、従来のDOOHの姿です。
そこから、広告配信のネットワーク管理が実現し、またNTTドコモ(以下、ドコモ)のビッグデータを活用できるようになったことで、DOOHは大きく進化しました。現在、LIVE BOARDでは、連携している他社媒体も含めて広告枠をすべてネットワークで管理しており、一般的なデジタル広告と同じように、様々なデータを用いながらデジタル上で柔軟に出稿することができます。天候と連動させるなど細かなターゲティングも可能になっており、各配信面のターゲット含有率を1時間ごとに算出し、その数字を基に配信を判断することができます。ここで言うターゲットというのは、デモグラフィック情報だけでなく、趣味嗜好や利用しているアプリ、よく来訪する施設などといった定性データからも設定でき、いずれも許諾のとれているドコモの会員データ、位置情報などを利用しています。
──デジタル化されたOOHというよりは、もはやデジタル広告の一種として運用が可能になっているんですね。効果検証についてはどうですか?
小林:ドコモユーザーの位置情報などから広告に接触した人と接触していない人を割り出し、DOOHによる態度変容を検証できるほか、たとえば、飲食・流通業界の企業においては来店計測をKPIにした効果測定をしたり、SNSやゲームなどアプリ系の企業ならアプリのダウンロード・起動率を検証できたりもします。
また、ドコモのビッグデータと電通の持っているメディアデータを統合管理し、テレビCM、デジタル広告、DOOHを横並びで検証するための分析環境として「docomo data square」を構築しています。たとえば、テレビCMのリーチ補完としてDOOHを展開するとき、人単位で各媒体の接触状況を把握することができるため、媒体ごとの単体効果はもちろん、媒体の組み合わせごとの重複効果などを分析することも可能です。