※本記事は、2023年6月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)90号に掲載したものです。
【特集】明快な方程式がなくなった、メディアプランニングの今
─ 本田哲也氏に聞く「人を動かすメディアの使い方」 統合型マーケティングキャンペーンに加えるべき視点とは
─ メディア利用はシーンや習慣に左右される。メディアポジショニングマップから見る、生活者のリアル
─ リーチ最大化を狙いつつ、文脈と新しい取り組みを意識する Uber Eatsのメディア戦略(本記事)
─ WBC期間中のテレビCM投下量が話題 カーネクストのメディアプランニング
─ 広告が刺さる瞬間を捉えよ 偶然の出合いを意図的に作る、DOOHのマネージドセレンディピティとは
─ お金=広告費で買えないものとは?明石ガクト氏が説く、アテンション時代のモノの売り方・広め方
─ これまでと対極の価値訴求で若年層と女性を取り込んだ「丸亀シェイクうどん」のメディア戦略
─ 生活者の心を動かすメディアプランニングとは? 資生堂「みんな、いい顔してる。」キャンペーンの事例
─ 博報堂DYが組織横断で結集し目指す、メディアプランニング×広告クリエイティブの全体最適
ターゲットリーチを最大化しつつ、新しいことに取り組む
──まずは阿部さんのご経歴と現在の担当領域についてうかがえますか。
私は広告代理店で10年ほどメディアプランニングに従事した後に、複数の事業会社でブランドディレクターを務め、1年ほど前にUber Japanへ入社しました。現在は、マーケティングマネージャーとして各プロジェクトのマネジメントを担当しています。また、オーストラリアを中心とするAPACのメディアチームに日本のメディアの現状などを共有し、サポートも行っています。
──Uber Eatsのメディアプランニングの基本戦略や方針はどのようなものか教えてください。
基本的にはターゲットリーチの最大化を考えています。これまでは「今夜、私が頂くのは…」というタグラインで、18歳以上の全人口を対象にしていました。2023年からは小さなお子さんがいらっしゃる家族層のニーズを拾う戦略のもとに、ターゲットをよりフォーカスしています。「Uber Eatsで、いーんじゃない?」のメッセージで彼らに対して最大限リーチできるよう、テレビ・デジタルを含めてプランニングしています。
また、予算の一部は新しい媒体の利用や、今までにない取り組みに投資する方針を持っています。たとえば、「Uber One」という会員制のサブスクリプションサービスにおいて、Twitterで発信されている漫画家さんや、Instagramのインフルエンサーさんと一緒に行ったタイアップが新しい取り組みです。Uber Oneは月額498円で、一定の注文金額を超えた際の配送手数料が何度でも無料になるサービスです。料理だけでなく食品や雑貨も対象なのですが、これを動画の限られた時間内で伝えるのは難しい。そこで、オリジナルの漫画やショート動画などのコンテンツの中で伝えていただきました。
これまでSNSではテレビCMをカスタマイズして配信していましたが、やはりコミュニティの中に溶け込むことが大切だと思っています。一方でインフルエンサーさんとの取り組みはリソースのコントロールが難しく、実施したくとも未着手の領域でした。現在、コミュニティに親和性の高い方々の目線でUber Eatsを語っていただく取り組みをより活用していこうとトライしている状況です。
──今、SNSの話が出ましたが、一口にSNSと言っても様々なものがあります。どのような基準で選定していますか?
選定基準は基本的にエンゲージメントを見ています。ターゲットインサイトをベースに、たとえばファミリー層に向けるなら、該当するユーザーがどれくらいコミュニティにいるのかを効率の面から考えます。しかし、ターゲットが少ないから使わないわけではありません。いかに、そのコミュニティに即した文脈でアプローチしていくかが大切なので、様々な方法で試しています。
ブランドコミュニケーションの一環でTwitchも活用していますが、こちらはメッセージを伝えやすいと考えて採用しました。ゲーム実況が多いTwitchでゲームを止めずにご飯を食べられる様子を見せることで、Uber Eatsを使えば流れを止めずに好きなことに没頭できるという「Stay in the flow」をわかりやすく発信できると考えたのです。これは効率よりも伝わりやすさを選択した取り組みです。