企業が避けては通れない著作権
野口:今回は、著作権に詳しい福井健策弁護士をお招きし「企業のコミュニケーション活動に潜む著作権侵害リスクとは」をテーマに、お話を伺っていきます。
企業はコミュニケーション活動のために様々なコンテンツを多様な手段で活用・発信しています。しかし誤った著作権の認識で活動を行った場合、ブランド毀損など様々なリスクが生じます。その中で今回は、特に直面しやすい4つのケースを取り上げ、解説いただきます。
福井:骨董通り法律事務所で代表を務めている福井です。まず、著作権の基本について簡単に整理します。
著作権とは、人が創作したといえる情報に対して生まれる権利です。思想・感情を創作的に表現したものを「著作物」と呼び、そこに著作権が生まれるわけですね。著作権法では例として、以下のものが著作物にあてはまると示されています。
・小説や脚本や講演など
・音楽(歌詞・楽曲など)
・舞踊/無言劇(ダンスやパントマイムの振り付けなど)
・美術(絵画、彫刻、イラスト、CGなど)
・建築(表現性の高い創作性のある建物)
・図形(創作性のある設計図や地図)
・映画(動画作品全般)
・写真
・プログラム
著作権の有無を見極める、5つのポイント
野口:まずお聞きしたいケースは、企業が発信するビジュアルの中に他社のロゴが映り込んでいる場合です。ロゴを消す対応は必要なのでしょうか?
福井:著作権の有無を判断するには、著作物、つまり創作的な表現かどうかがポイントになります。その判断に役立つのが、著作物に当たらない情報の例です。次の5つに当てはまる場合は、著作権のことを考慮する必要はなく基本的に自由に使えます。
まず1つ目が「定型的な表現」。小説丸々1本は創作性があるものですが、その中から一文だけ抜き出した場合は、ありふれた表現になることが多いですね。2つ目が「歴史的な事実」です。どこで・いつ・誰が・何をしたといった事実のみを抽出しても、これ自体には通常著作権はありません。
3つ目は、作品の根底にある「アイデアや方法論」です。優れたアイデアは流通させるほうがよいという考え方のもと、着想だけを使うぶんには問題ないとされています。4つ目が創作性のないような「名称や単純なマーク」。5つ目は「実用品のデザイン」になります。ペットボトルや既製服、眼鏡などのデザインは原則著作物には当てはまりません。
福井:質問のロゴの映り込みについては、単純なマークなら著作物には当たらない可能性もあります。またロゴマークが仮に著作物だとしても、イメージ画像に少し写り込んでいる程度であれば、30条の2「付随対象著作物の利用」という例外規定があるため問題ないでしょう。例外規定については後ほどお話しします。
ただ企業ロゴは商標権にも関わるため、トレードマーク的に使うのはアウトです。宣伝物で使う際は注意が必要ですね。
野口:使う文脈による判断が重要となってくるのですね。