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SNSやウェビナー、生成AI活用に潜む著作権リスクと判断方法は?持つべき知識と対応を福井弁護士が解説

著作物の個人利用や音楽のSNS投稿、どこまで許される?

野口:引用のほかに例外規定はあるのでしょうか。

福井:はい。身近な例を紹介すると、テレビドラマの録画は多くの方が経験ある行為だと思います。テレビドラマは著作物で、録画は複製行為に当たってしまいますね。

 実は、このような個人的な使用のための複製である「私的複製」は許されています。先ほどの表の一番右列、上から2つ目のマスに示されている項目です。個人の楽しみや勉強のためのコピーは可能ということですね。

 この私的複製で気をつけるべきは、私的な「配信(公衆送信)」は規定にない点です。ですから、ほとんど自分の友達しか見ないようなSNSであってもアップロードは許されていません。公開という形でインターネットに上げる時点で、それは公衆送信となるためです。また、個人的な目的の中に業務目的は含まれない点も注意しましょう。社内で使う業務用の資料としてコピーする行為も、私的複製にはあたらないといえます。

福井:最初のケースで出た「映り込み」も例外規定の一つです。付随的で軽微な映り込みがあるコンテンツは、権利者の許可なく使うことができます。

野口:映り込んだ他社のロゴも、この例外規定にあてはまるケースが多いのですね。

福井:この他に知っておきたいのは、YouTubeなどの投稿サイトやSNSの多くが、日本音楽著作権協会(JASRAC)などの団体と年間包括契約を交わしていることです。つまり、プラットフォーム側で著作権処理を済ませてくれているのです。

 ただ、この対象となる範囲は作詞・作曲のみです。自分で歌ったり演奏したりする動画をYouTubeにアップすることはできますが、既存音源を使う場合は別途音源の権利元の許可が必要になる点も気をつけましょう。

AI生成コンテンツにまつわるリスクを避けるポイント

野口:最後のケースは、最近話題のAIで生成されたコンテンツの著作権についてです。企業のコミュニケーション活動で使用する際に気をつけるべきことを伺えればと思います。

福井:現時点の世界的通説ではAI生成物に著作権はありませんが、使用するにあたりリスクは存在します。その一つが「人間の指示に基づいて画像生成AIが自動出力した絵が、他者の権利を侵害したらどうなるのか」という問題です。

 この場合、著作権侵害に当たる説と、当たらない説に分かれています。著作権侵害は「依拠」「類似性」という2つの要素で成立します。依拠とは人の作品に基づき似た新しい作品を作ることで、類似性は似すぎていることを意味します。すなわち、人の作品に基づいて似過ぎた作品が生まれたら侵害です。そのため、AIが似た既存の作品を学習していたら依拠ありという立場から、「著作権の侵害リスクもある」との意見も有力ですね。

 一方で、AIは学習した個別の作品を覚えているわけではないため依拠なし、とする説もあります。しかし前述のように著作権侵害の可能性は存在するため、企業ができる対応としては社内でAIガイドラインを作ることなどが今後重要になると考えます。

 ガイドラインに入れる項目の例としては、既存のキャラクター名・作品名など生成時のNGワードを示す、販売物に使うのは避ける、AI生成物である旨を表示するといった内容が挙げられます。

野口:なるほど。企業は直近の動向も確認しつつ、著作権の正しい知識を持って適切にコミュニケーション活動に取り入れていきたいですね。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42655

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