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有園が訊く!

コンサルのその先へ/dentsu Japan 榑谷CEOが語る、生成AI時代の企業変革の現在と未来


 Microsoft Advertisingの有園雄一氏が業界のキーパーソンや注目企業を訪ね、デジタルが可能にする近未来のマーケティングやブランディングについてディスカッションする本連載。今回対談したのは、電通グループの日本事業を統括するdentsu JapanのCEOと、株式会社電通の代表取締役社長執行役員とを兼任する、榑谷典洋氏だ。生成AIの波及など、激変にさらされるデジタルマーケティング市場で、電通のビジネスはどのように進化していくのか。トップの考えを聞いた。

生成AIの衝撃により、電通はどう変わる?

有園:電通はビジネスモデルの変革を急速に進めており、もはや旧来型の広告会社とは異なる形態になっています。榑谷さんはデジタル領域に明るく、特に社長に就任されてから、大きく変革が進んでいるイメージです。

 最近は生成AIの進化も激しく、テクノロジーの活用に強い思いをもって臨んでいるのではないでしょうか。まずは、生成AIのインパクトについて、どのように捉えていますか。

榑谷:当社では、生成AIの登場以前からAIの活用を積極的に進めてきました。機械学習によるビッグデータのアナリティクスの効率化やインサイトの精度向上などです。例えば、視聴率予測システム「SHAREST」のα版の開発は2015年、実戦配備は2017年で、メディアプランニングの最適化に大きな進歩をもたらしました。

 生成AIは自然言語や画像を含むマルチモーダルなデータを取り扱うことができるため、あらゆる業務に応用できると期待されています。私たちが目指しているのは、クライアント、社会の発展に貢献することですので、既存のタスクの自動化に留まらず、課題に対するソリューションの圧倒的な高度化を実現したいと考えています。

 具体的なプロダクトとしては、2022年末に発表した「∞AI(ムゲンエーアイ)」があります。クリエイティブ・プロセスをAIで革新するサービスで、現在は「GPT-4」を実装し、既に運用を開始しています。

 クライアントのマーケティングROIの最大化に向けては、顧客対応のパーソナライゼーションが鍵を握っています。しかし、その作業をすべて人が受け持つということには無理がありますので、お客さま一人ひとりの状況に応じて、最適な顧客体験を提供するためには、AIの徹底活用が不可欠になります。

有園:生成AIに関してコンサル企業の方々から聞いた話では、「社内業務の効率化に使う」というケースが約8割を占めており、マーケティング領域に活用するケースはまだ少ないようです。∞AIは既にクライアントへの提案で使っているとのことですが、今後どのように発展させていきますか。

榑谷:現時点では、まず、デジタル広告の制作にあたって、ベースとなるアイデアの効果予測を行うとともに、投入効果を最大化するための改善プランを提示できるようになっています。既に100案件を超える利用実績があり、CPAが50%以上改善するようなケースも出ています。検索やバナーに加えて、動画の表現も扱えるようにするのが次のチャレンジですが、既に実装の目途は立っています。

dentsu Japan CEO 兼 株式会社電通 代表取締役社長執行役員
dentsu Japan CEO 兼 株式会社電通 代表取締役社長執行役員

あらゆる企業がデジタルプラットフォーマーに変貌を遂げる

有園:そうすると、動画を作ってきた人の仕事はどう変わっていくのか、という話も出てきます。以前、クリエイターの方と話したときに、「コピーもバナーもAIが作ってくれる。クリエイターとして何をしたらいいのか」と言っていたことが印象に残っています。

榑谷:すべてをAIで完結できるとは思っていません。クリエイターとAIの効果的なコラボレーションが大切です。過去のデータからどれ程うまくインサイトを掘り起こしても、それだけではこれまで機能していたアイデアからのジャンプには直結しません。もちろん、AIにも過去の延長にはないクリエイティブワークの生成は可能ですが、それが社会にどのように新しい価値観を生み出し、未来につながるかを見通すのは、クリエイターの役割ではないでしょうか。

 当社では、広告の世界で培い実績を上げてきたクリエイティビティをあらゆる顧客体験のデザインにも拡張していますが、生活者一人ひとりに対して最適化された顧客体験のエグゼキューション(実行・実装)の段階においては、やはりAIの力を借りています

有園:顧客体験というとWebサイトやアプリのUXが思い浮かびます。AIの力を借りて最適化するとはどういうことでしょうか。

榑谷:今、あらゆる企業がデジタルプラットフォーマーに変貌を遂げつつある、というのが私たちの大局観です。企業は、Webサイトやアプリ、ソーシャルなどに限らず、いろいろなチャネルで顧客とつながることができるようになりました。クライアントの課題やその解決方法は様々ですが、その視線は少なくともカスタマージャーニー全体を俯瞰していなければなりません。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/25 14:21 https://markezine.jp/article/detail/42811

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