三菱総合研究所は、総務省「平成17年国勢調査報告」速報値などをもとに、首都圏における「都心回帰」の実態についての分析結果を2006年7月に発表。2年後の今回、新たに「都心回帰」の“その後”について分析を行った。
前回は、都心3区(千代田区・中央区・港区)を中心に人口の「都心回帰」が進んでいる状況が明らかになったが、この傾向は現在も継続中。23区全体での人口増加は年1%程度なのに対して、都心3区では平成12年以降年4%を超える伸び率を示している。
また、平成17年までは東京都中央区での人口増加が目立っていたが、その後“都心回帰の重心”は東京都港区へ移っているという。港区での人口増減を年齢階級別にみると、増加が目立つのは、30歳代、40歳代および5歳未満の層で、住宅取得期のファミリー層の転入が人口増加の要因となっているようだ。
また、港区内の平成15~20年での「人口増加エリア トップ10」では、臨海部での増加が目立っており、芝浦地区では工場跡地などに建設されたタワーマンションへの入居が影響しているようだ。これらの物件は、ラウンジやシアター、スポーツジムなどの充実した共用施設を有していることから、所得の高いファミリー層が入居していると考えられる。
この人口増加傾向は、平成20年以降は落ち着くと見込まれているが、急激で局所的な人口増加を経験したこの地域では、小中学校などの公共施設の整備・確保など、生活環境の質的向上が課題となる。同レポートでは、子育て支援、プレスクールなどの幼児教育、高度予防医療、リラクゼーション、資産運用相談、生涯学習など、駅近隣や駅中を中心に、新たなビジネスチャンスが期待できると分析している。
しかし、35歳前後の世代が一時期に急激に流入してきたエリアでは、およそ30年後の2035年には高齢者が急速に増加することも予測される。「オールドタワー問題」が顕在化する可能性もあることから、変化に柔軟に対応できるエリアマネジメントも重要だと指摘している。
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