流入元によってユーザーの熱量は異なる
モバイル計測プラットフォームを提供するAdjustは、2012年にドイツで創業した会社だ。日本支社は2014年に設立され、国内のマーケットシェアは81.7%にも上る。
同社のプラットフォーム上で計測可能な指標としては「インプレッション/クリック」「インストール」「コンバージョン率」のほか、流入元に紐付けて「平均DAU」や「継続率」「収益の上昇」などが挙げられる。また「会員登録・ログイン・会員証をクリックしているかどうかが見たい」「Webストアの閲覧や購入を見たい」というクライアントニーズに応じ、カスタムイベントも設定可能だ。
「Adjustでは『ユーザーがどこで対象のアプリを見つけたか』まで把握できます。実店舗でQRコードやPOPを見てからアプリをインストールしたユーザーと、Web広告を閲覧してからインストールしたユーザーでは、熱量が異なると我々は考えているのです」そう話すのは、Adjustの大城圭右氏だ。
「店舗スタッフから声をかけられてアプリをインストールしたユーザーは、アプリ内KPIをどのように達成しているのか。Web広告から流入したユーザーと比較して、KPIを達成するまでの期間やアプリの継続利用期間に違いはあるのか。Adjustはそれらを可視化するのです」(大城氏)
なぜ店舗経由のユーザーは会員登録率が高いのか?
ユーザーの流入元とアプリ内の行動をAdjustではどのように紐づけているのか。大城氏は仕組みを解説する。
「流入元からアプリストアに飛んだ瞬間、流入元情報は途切れてしまいます。そこで、広告IDやAdjust内で独自に振っているIDを基に、流入元とユーザーの行動をマッチさせるわけです。これにより、ユーザーが会員登録をした場合は会員登録数をカウントし、継続率を計測することができます」(大城氏)
大城氏は、実店舗を展開する企業がWeb広告と店頭でのオフライン施策を実施した事例を紹介する。店舗Aのレジ横、店舗Bのレジ横、Web広告、三つの流入元で「インストール初日の会員登録率」に違いが出たという。
店頭ではスタッフが声をかけ、アプリのインストールを促すケースが想定される。店舗に商品を買いに訪れたユーザーは、そのまま会員登録に至るわけだ。一方、Web広告を閲覧してインストールしたユーザーはどうか。インストール初日の会員登録率は非常に低いものの、インストール後の継続率は店舗から流入したユーザーより高い。
「Web広告から流入したユーザーは、インストールから1週間後の継続率も、4週間後の継続率も、20%を超えているのです。恐らくこれらのユーザーは、アプリを見て『どの店舗に商品があるのか』『どのようなコンセプトか』『キャンペーンをやっているのか』などの関心を高く持っていると推測します」(大城氏)
この事例から得られる示唆は次の2点だ。
- インストールする前からユーザーの心理状況は異なる
- インストール後のユーザーの動きを可視化し、仮説と分析を繰り返す必要がある
モバイルアプリトレンド 2023:日本版
このレポートでは、ゲーム、Eコマース、フィンテックなどの業界における日本の人気アプリ、アプリ滞在時間、継続率などのデータ分析や、日本のアプリ広告で拡大するコネクテッドTVの役割を解説しています。