テクノロジーがもたらす「前向きな変化」と「後ろ向きな変化」
サードパーティCookieの規制強化やGoogleの検索アルゴリズムの変更など、近年のデジタル環境やテクノロジーの変化は枚挙にいとまがない。このような変化について、マーケティング戦略コンサルティング会社・ルシダスの創業者である池上氏は、「前向きな変化」と「後ろ向きの変化」の2つがあると語る。
まず前向きな変化とは、デバイスのバージョンアップなどで従来と比べて対応の必要がなくなるといった、“発展的な更新”を指す。
「新しいものに対応することで古いものが不要になる。たとえば、現在はHTMLメールが表示できないデバイスはないため、テキストメールの装飾などに費やしていたリソースが要らなくなります。こういった変化は前向きなものです」(池上氏)
一方で後ろ向きの変化とは、テクノロジーの変化自体ではなく、その影響によるものを指す。例として、自社の根幹事業がサードパーティCookieを使ってリターゲティング広告を打つことによって売り上げが成立するものだったとしよう。Cookie規制・廃止への風潮が加速する中、リターゲティング広告以外のまったく新しい売り方を模索する必要が生じるために、大きくリソースを割く必要に迫られるだろう。
「その機能が自社の施策に重要で、かつその施策が事業の根幹を成すような大きな役割を担っているにもかかわらず、機能の恩恵が減少したり使えなくなったりしてしまう。そういったビジネスへの負の影響が非常に大きいものは後ろ向きの変化です」(池上氏)
テクノロジーの変化でダメージを受ける要因とは
変化に対応する形で更新・調整すれば使える機能であればまだしも、使えない方向へと進んでいるテクノロジーに依存したままでは、軌道修正のためにリソースが大きく奪われてしまう。このような状態では、テクノロジーの変化によってダメージを負ってしまうのだ。
テクノロジーの変化による具体的なダメージとしては、「SEOのアルゴリズムが変わり、急にオーガニックビジターの流入数とPV数が激減」「サードパーティCookieの規制でリターゲティング広告が使えなくなる」「ファーストパーティCookieの有効期間が短くなり、マーケティングオートメーションの個人追跡が台無しになる」などが挙げられる。
これらの変化であまり打撃を受けていない企業がある一方で、非常に大きなダメージを負ってしまう企業も存在する。テクノロジーの変化によってダメージを負ってしまう根本的な原因は、「全体戦略がないまま、個別施策に傾倒しているため」だと池上氏は指摘する。一貫性のある戦略があれば、テクノロジーの代替案も比較的見つけやすくなるという。
テクノロジーの変化に影響を受けないため、企業はどのようにマーケティング戦略を組み立てていけば良いのだろうか。