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唯一無二のパーソナライズ体験をコミュニケーションでも FUJIMIのCVR向上と解約率低減の裏側

 理想の顧客体験は描けるものの、実際のコミュニケーションに落とし込んでビジネスインパクトを生むとなるとハードルは高い。ビューティーケアブランド「FUJIMI」では、唯一無二のパーソナライズ体験を提供するべく、コンセプトや商品の設計、顧客とのコミュニケーションまで一貫した取り組みを重ねている。複数チャネルをまたぐ一貫したコミュニケーションと、クイックなPDCAを可能にしているのが、プレイドのCXプラットフォーム「KARTE」だ。本記事では両社の担当者が登壇したセッションの内容をレポートする。

唯一無二のパーソナライズ体験を目指して

 トリコが運営するビューティーケアブランド「FUJIMI」では、パーソナライズ分析の結果を基にプロテインやサプリメントなどビューティーケア商品を提案し、定期便で届けるサブスクリプションサービスを提供している。

FUJIMIの商品ラインナップ(一部)
FUJIMIの商品ラインナップ(一部)

 幅広い層から支持を集め、特にプロテインは男性からの注文も多いそうだ。顧客接点はオンラインだけにとどまらない。ルミネ新宿店(2023年12月17日をもって閉店)に実店舗を構えるほか、ポップアップショップでプロテインの試飲会なども不定期に実施している。

 理想の顧客体験を「唯一無二のパーソナライズ体験」と定義するのは、トリコでカスタマーサクセスを担う若目田萌子氏だ。理想を実現するため、表層的な美の悩みの解決ではなく“本質的な提案”を心掛けているという。

トリコ カスタマーサクセス 若目田萌子氏
トリコ カスタマーサクセス 若目田萌子氏

「たとえば『痩せたい』と考えるお客様に対して、ただ商品を提案するのではなく、Web分析や当社のコンシェルジュを通じて得たデータを踏まえ、一人ひとりに必要な情報を提供するようにしています」(若目田氏)

 加えて、顧客が自身の生活を振り返りながら、新たな発見が得られる体験設計も意識しているそうだ。

「Web分析を受けると、自身が気付いていなかった体の状態を知ることができるのです。たとえば腸内環境や体の水分量など。『ここは気にしたほうが良い』『自分の理想の状態はこうだ』と認識する機会を提供し、いただいたデータを基に接客を行うことで、唯一無二のパーソナライズ体験を実現できると考えています」(若目田氏)

KARTE導入を後押しした三つの決め手

 理想に近づくまでの道のりは「非常に険しかった」と話す若目田氏。ブランドを立ち上げた直後は、問い合わせに対する返信とメールの一斉配信しかできておらず、ファーストパーティーデータの収集も十分ではなかった。顧客にプロダクトの良さを伝えきることができないため、解約率も高かったという。

 そんな状況を打破するため、トリコではプレイドのCXプラットフォーム「KARTE」を導入した。企業が収集したファーストパーティーカスタマーデータを統合し、メールやLINE、Web接客などの各チャネルにおける適切な活用を実現するものだ。プレイドでCXデザイナーを務める島田朝香氏は次のように語る。

プレイド CXデザイナー 島田朝香氏
プレイド CXデザイナー 島田朝香氏

「同じ内容がメールでもLINEでも届いたり、興味の薄いポップアップやプッシュ通知が何度も表示されたりするのは“良い顧客体験”とは言えません。これからはチャネルをまたいで一貫した体験提供と、パーソナライズされたコミュニケーションが重要なのです」(島田氏)

 若目田氏は導入の決め手を3点挙げる。第一の決め手は、顧客の行動や属性に応じた接客および配信が可能な点だ。パーソナライズビューティケアブランドのFUJIMIが目指す方向とKARTEの機能に高い親和性を感じたという。

 第二の決め手は、複雑な開発なしで接客のシナリオと実装ができる点にある。エンジニアに依頼すれば数週間を要する開発も、KARTEなら1営業日程度で作ることができるため、PDCAを格段に速く回せる。第三の決め手は、複雑なシナリオでもマルチチャネルで配信できる点だ。パーソナライズされた体験を提供するにあたり、タッチポイントの増加は不可欠だった。

「飲む習慣化」を促して継続率を向上

 ここから若目田氏は、KARTEを活用した具体的な施策を紹介する。FUJIMIでは、プロテインの飲み忘れによって自宅に商品が溜まっている顧客の状態を課題としていたそうだ。詳細な分析の結果、商品を2、3回受け取った後に定期購入を解約している顧客が多いとわかった。

「2、3回目で離脱してしまうということは、初回から飲む習慣がついていないのでは? と考えました。そこで、お客様に飲む習慣をつけていただくために『プロテイン10日間チャレンジ』というキャンペーンを実施したのです」(若目田氏)

 キャンペーンではLINEのID連携者を対象に10日間連続で通知を送り「飲んだ」「飲んでいない」のボタンを表示。ユーザーが押したボタンに応じて、コンシェルジュがアドバイスを送る仕組みだ。アドバイスの内容は毎日変え、飲用の有無によっても情報を出し分ける設計とした。この施策により、チャレンジに参加したユーザーへの翌月発送率は参加していないユーザーよりも18%高かったという。

 本施策で活用したのは、KARTEの「ジャーニー機能」だ。対象顧客に合わせたカスタマージャーニーを描きながら、シナリオを設計することができる。参加したユーザーからは「飲めるようになりました」との声やコンシェルジュへの個別質問なども寄せられ「1to1のコミュニケーションが強化された」と若目田氏は振り返る。

ポップアップのCVRがメールやLINEよりも高いワケ

 次に取り組んだのは、Webサイトのマイページに表示するポップアップの設計だ。クロスセルユーザーの少なさや解約率低減のほか、メールやLINE以外のタッチポイントを増やすことが実施の目的だったという。

 ポップアップを設計するにあたり「セグメントを意識した」と話す若目田氏。購入商品や定期購入の契約状況、居住地や流入回数など、KARTEでは細かい粒度でセグメントを設定することが可能だ。

「『初購入のお客様はモチベーションが高い』という仮説の下、クロスセルを促すポップアップを表示したのです。逆に『定期購入2、3回目のお客様はモチベーションが下がる』という仮説も立て、他のお客様の成功体験談を掲載したポップアップを表示しました。一緒に頑張る機運を高める狙いです。」(若目田氏)

 KARTE上の豊富なテンプレートを利用しながら数多くのポップアップを制作・設定した結果、メールやLINEと比較してポップアップ経由のCVRが最も高く出たという。さらにKARTEでは、遷移先でのA/Bテストや定期購入の回数別での数値比較などが実行できるため「振り返りが素早くできて助かった」と若目田氏は語る。

「施策の実行と振り返り、数値の抽出をすべてカスタマーサクセスの部署内で行えるため、PDCAが非常に速くなりました。そのこともポップアップ経由のCVRを高めた要因かもしれません」(若目田氏)

botの即時性×コンシェルジュの温かみ

 若目田氏はLINEで実施した施策「コンシェルジュ相談室」の取り組みも紹介。FUJIMIでは、美容やライフスタイルの相談を無料で受けるサービスとして「FUJIMIコンシェルジュ」を運営している。1to1コミュニケーションの場である同サービスはパーソナライズの要とも言えるが、利用者の少なさに課題を抱えていたそうだ。

「かつては商品の同梱物として紙のチェックシートを封入していたため、お客様は回答済みのシートを撮影してLINEにアップする必要がありました。アナログなサービス設計も利用率の低さにつながっていたと思います」(若目田氏)

 そこで、LINEのbotを活用したコンシェルジュ相談室をスタート。ユーザーがLINEに送信したキーワードに応じ、botが現在の悩みや理想の姿などをヒアリングする。その回答内容に加えて、問い合わせ履歴や過去に受けたパーソナライズ分析の結果なども活用しながら、コンシェルジュが顧客の状況を把握する仕組みだ。

 botによるクイックな対応でヒアリングの稼働率を上げつつ、人が1to1の丁寧な対応を引き取るハイブリッド型のサービスを実現。その結果、FUJIMIコンシェルジュの利用割合は相談室導入前から8.22%増加した。数値の振り返りはKARTE上で行っているとのことだ。

「botによる対応だけでは温かみが不足します。担当制を敷いてコンシェルジュがお客様に名乗ることで、身近さが生まれてご相談も増えました。食生活からスキンケアの方法まで、お客様のお悩みに合わせてトータルでサポートしています。利用されたお客さまからは『こんなにしっかり回答してもらえると思わなかった』というお声を頂戴し、嬉しい限りです」(若目田氏)

開発工数の削減でPDCAを全社的に高速化

 KARTEの導入は二つの大きな変化をもたらしたという。一つはタッチポイントの増加だ。メール、LINE、ポップアップ、Webサイトのコンテンツエリアなど、多彩なチャネルをそれぞれの特性を活かして使い分けることにより、パーソナライズされた体験を提供できるようになった。

 もう一つは開発工数の削減。カスタマーサクセスがSQLを学んだり、開発に依頼したりせずともセグメントに沿ったメールやLINEを送れるようになった。「空いたリソースを他の業務に充てることで、全社的にPDCAを高速化できた」と若目田氏は語る。

 若目田氏は、今後KARTEを活用して「パーソナライズされたコミュニケーションをさらに強化したい」と話す。セグメントや顧客体験に基づき、よりニーズに合った情報を提供していくつもりだ。

「KARTEを活用すれば、サイト内の回遊データや購入履歴、診断結果などを基に、顧客の追加購入が完了したタイミングや新作を公開するタイミングで、パーソナルメッセージを即時送ることができます」(島田氏)

 実施した施策の詳細分析でも「さらなる高度化を目指す」と若目田氏。1通目のメールを開封して2通目のメールは開封しなかった要因を探るなど、顧客のジャーニーまで踏み込んだ深掘りに取り組む考えだ。「それができれば、お客様の体験を全体的により良いものにできると思います」と若目田氏は話す。

 最後に島田氏は、顧客体験の向上に日々向き合い、仮説を立てながら改善を進めるトリコの取り組みを称賛しつつ「KARTEの機能を使って引き続きサポートしたい」と語り、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社プレイド

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/43781