コロナ禍に生まれた新しい生活スタイルの定着
図表1は、2020年1月を100%とした場合の東京の主要4駅(新宿駅、渋谷駅、東京駅、池袋駅)における平日14時台と20時台それぞれの人流および、アンケートで聴取した新型コロナウイルス(以下、コロナ)への不安意識を月ごとに示しました。
全体の傾向としては、コロナに対する不安が小さくなるとともに人流は回復していきました。1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月には、同年3月と比べて大幅に人流が減少していることがわかります。まん延防止等重点措置(以下、まん防)が終了した2022年3月からはコロナへの不安が減少傾向にあり、それにともなって人流も回復傾向にあることがわかります。
昼の時間帯では、今年の4月で90%まで人流は回復しました。しかし、5月以降はそれを超える回復を見せておらず鈍い状態です。このことから、アフターコロナ期も職場へ出社しない「リモートワーク」が新しい働き方として定着しつつあることがうかがえます。また、6月以降コロナの感染者数が再び増加に転じたことを受けてか、コロナに対する不安も増加し、人流も減少傾向にあります。
一方、夜の時間帯は昼の時間帯と比較すると人流の回復が遅れています。仕事や学校終わりの過ごし方として、友人や同僚と飲み会を行うよりも、自宅でゆっくり過ごすことを選ぶといった新しい生活スタイルが定着しており、今後もこの状態が継続する可能性がうかがえます。
コロナ前後における夏の娯楽施設・行楽地の人流変化
このようなコロナ禍からの回復や新しい生活スタイルの定着は、夏の娯楽施設や行楽地への人々の訪問傾向にも現れ始めています。ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用してエリアごとの人流データを提供する「モバイル空間統計(R)」を基に、2019年から2023年の「8月の休日14時台」における人流を分析しました。
図表2はプール、遊園地、公園施設、海水浴場・山のそれぞれの人流を2019年8月の数値を100%として示したものになります。どのカテゴリーでも共通した傾向として、2021年まではコロナの影響を受け人流が減少し、2022年から回復し始めていることが読み取れます。
しかし、多くの場所でまだ2019年の来訪者の数値までには回復しておらず、コロナ前と同じ水準まで戻ったというわけではないと言えます。これらはいずれも、アフターコロナとなった今も入場制限や、事前予約制があるなど、コロナ以前と比較すると気軽に行ける場所ではなくなっていることも、人流の回復が滞っている理由である可能性が考えられます。
このようなコロナ禍による人流の減少と回復には、カテゴリー間での違いも見られました。特に大きく影響を受けたのは人の密集が発生しやすいプールと遊園地です。
プールは2020年には2019年と比較して、来訪者が40%程度まで減少しました。一方2023年にはプールの来訪者は85%程度まで回復しており、来年以降には2019年の数値まで回復することが期待されます。
遊園地では2020年に来訪者数が約50%まで減少しました。2022年以降は回復傾向にあるものの、2023年も75%程度にとどまっています。2022年と2023年の人流の差が小さく、今後もコロナ前の80%程度で推移する可能性が考えられます。
プールや遊園地が大きく影響を受けたのとは対照的に海水浴場・山、公園では2020年でも来訪者は80%程度までしか減少していません。これは、海水浴場や山、公園など開放的な行楽地では、プールや遊園地と比べて人の密集が発生しづらく、コロナ禍でも避けられづらかったからだと考えられます。