公式アプリ起点で顧客データを収集 店舗の購買データとも紐づけ
イオンリテールは、東北地方を除く本州・四国エリアで、総合スーパー「イオン」「イオンスタイル」を運営している。店舗数は353あり、ネットスーパーやEコマースも展開する。
同社では、リテールメディアの起点となる公式アプリ「イオンお買物アプリ」を2017年から提供しており、現在の会員登録数は1,070万人超(2023年10月末時点)。同アプリでは、チラシやクーポンの配信、店舗での購買に連動したキャンペーンなど、顧客がお得に買物をするための情報を発信している。
「クーポンは毎週110万件以上利用され、一例では菓子・飲料・嗜好品・日配の各売上において、クーポン配信前と後では平均162%の伸長が見られるといった効果が出ています。また、無料クーポンキャンペーンでは、1企画100万人ほどの応募があります。アプリの改善を重ねてきた結果、会員の方々に積極的に利用していただけるようになりました」(田中氏)
同社では、アプリを起点に、顧客データと店舗の購買データを紐づけている。たとえば、どの店舗で誰が何を、どんなクーポンを利用して、どの決済方法で買物をしたかということがわかる。
「アプリ内での行動パターンや店舗での購買履歴など蓄積されたデータを分析していくことで、お客さまがどのような商品を望んでいるのかを理解することができます。その結果、誰にどんな情報を届けると有益に感じてもらえるのかといったことがわかり、より効果的なマーケティング戦略を策定できます。アプリは、顧客行動や嗜好に関する貴重なデータを収集するための優れた手段となっています」(田中氏)
適切なセグメントで顧客ロイヤルティを高める、顧客体験イメージ
来店前にアプリに配信されているクーポンを確認、来店するとビーコンが反応し該当キャンペーンを受け取る。購入後には関連商品のクーポンやお礼のメッセージが届く。アプリによってこのようなアプローチができる。アプリのデータを分析してセグメントすることで、各顧客のニーズに合った情報を提供するOne to Oneマーケティングが行えるのだ。
イオンリテールでは、アプリで得られる会員の属性データやクーポン利用データ、行動履歴データと店頭で得られる購買データを、Google BigQueryを使って蓄積。それをMAツールに連携してセグメントし、施策のターゲットを決め、コンテンツ情報を配信しているという。そうすることで、その情報を必要とする顧客に対して、適切なチャネルで、欲しいタイミングに情報を届けられる。
「お客さまは自分に関係ない情報が届くと、ノイズ情報や広告だと感じてしまいますが、パーソナライズされた自分に最適な情報の場合は、広告であってもノイズと感じられません。アプリのデータを活用し最適な提案をすることは、顧客ロイヤルティを高められると考えています」(田中氏)
最適な情報を顧客に届けるアプリマーケティングは、自分に最適な情報を受け取りたい顧客と、商品情報をダイレクトに届けたいメーカーの両者の課題を解決することができる。イオンリテールでは、顧客ロイヤルティを向上するとともに、新たな広告収入を得られるリテールメディアとしてもこの仕組みを活用している。