お手本になるKura Sushi USAの堅実な米国展開
くら寿司の米国チェーン店(以下、Kura Sushi USA)は、わざわざ並び、“食”の欲求をお腹いっぱいに満たすことができる米国人に人気の場所になっている。次々回ってくるお皿を見る楽しみやサプライズがあり、お土産(景品)までもらえる仕組み。日本でお馴染みの仕掛け(機械)を米国基準に調整し、「食べたい・並びたい・ウワサの」を用意している。たとえるなら、ファストフード・チェーン店ではなく、ディズニーランドの人気アトラクション感覚だ。
実際、Kura Sushi USAの来店者は子ども連れの家族、女性同士が大半だ。単なる「早い・安い」のマクドナルドのような立ち寄り感ではなく、「わざわざ・計画的に・予約が取れない店」として訪れる顧客が多い。
顧客によるデジタル入力を基点とするマシンオペレーションは「エンタメ・テクノロジー企業」としての期待価値も膨らませる。Kura Sushi USAは、既に10年以上、50店舗にて、機材投資とテック投資を積み上げている。
Kura Sushi USA を「一度視察すれば十分」とか「あれは寿司ではない」とするのは、ニホンジン目線の固定観念による評価である。(回転)SUSHIはたしかに日本の文化や産業だが、それらを日本基準のまま輸出するのではなく、米国市場に輸入(適合化)させようとする姿勢がKura Sushi USAにはある。その証左が2021年のNASDAQ上場であり、米国市場からの資金調達(人気投票)を獲得した姿勢だ。ここが山登りの一合目である。
山登りは、「小さい山から始めて徐々に登り詰め、いつの日か高い山の頂上(IPO)へ」という「If Possible(可能ならば)」よりも、最初から頂上を定めて逆算し「高い山(IPO)に登った上で、次の山(再投資)へ」という発想が楽しい。Kura Sushi USAは、まだまだ小粒な事業には違いないが、堅実な山登りをしている様子が見える。