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第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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MarkeZine Day 2024 Spring

積水ハウスが着目した“無意識の行動” 事業成長につながるデータ収集と活用の視点


 いまやマーケティングと切り離すことのできない、顧客のデータの収集と活用。自社の事業領域だからこそできるデータ収集とその解釈が、事業成長の鍵になりうる。積水ハウスでは、2021年12月からスマートホームサービス「PLATFORM HOUSE touch(プラットフォームハウス タッチ)」の提供を開始し、蓄積するデータから住まい手の潜在意識の可視化や他業界との連携を見据えた事業展開に取り組んでいる。MarkeZine Day 2024 Springでは、積水ハウスのプラットフォームハウス推進部長である吉田裕明氏が、AI解析から見えてきた生活者のインサイトの事例や、データベースを軸とした事業成長の戦略を伝えた。

「プラットフォームハウス構想」で幸せの創出を目指す

 1960年代にプレハブ建築を通じて日本の住環境向上に貢献した積水ハウス。同社は、2020年の創業60周年に、人生100年時代こそ“「わが家」を世界一幸せな場所にする”ことが重要と判断し、これをグローバルビジョンとして掲げた。このビジョン実現に向け、積水ハウスの常務執行役員であり、プラットフォームハウス推進部長である吉田裕明氏は、家庭内で生じる多様なデータの収集と、それを基にした業種を超えた共創によるデータベース構築の必要性を提唱。家庭内ビッグデータを活用することで、顧客のインサイトに基づく新しいサービスを創出できると述べた。

 従来、家屋は、新築時が固定資産価値のピークとされ、その後は価値が下落するというのが常識だった。しかし、積水ハウスは2020年の創業60周年に向けて、2016年ごろから住宅メーカーとして家の新たな価値を見出せないかと再考を始めた。この過程で、「家とは本来、住み始めてから幸せになりたいと思う場所ではないのか。ならば住宅メーカーは『どのようにして家での幸せな生活を実現できるか』を考えるべき、という想いに至りました」と吉田氏は述べた。

吉田氏
積水ハウス株式会社 常務執行役員 プラットフォームハウス推進部長 吉田裕明氏

 この理念に基づき、同社は幸せの要素を「健康」「つながり」「学び」の三つに分解。これらが幸せな生活の基盤であると判断した。家というプラットフォームがこれら三つを提供または育成することができれば、“幸せという無形資産”を増やし、住み始めてからの家の価値を高めることが可能になると考えた。その手がかりは住まい手の住環境データやライフスタイル・データから探れる。

 「今の時代はIoTで、様々なモノをネットにつなげられます。モノがつながるところには、必ずログが発生します。家の中で発生するこれらのログから学びを得て、三つの要素に寄与するサービスを我々が作り出せれば、それが幸せにつながるという『プラットフォームハウス』構想を立てました」(吉田氏)

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幸せにつながるサービス創出に向けた取り組み

 本構想を実現するために積水ハウスは、まず住まい手やデータを扱う関係者全員が、安心してデータ処理を行える環境が絶対的に必要であると判断し、セキュリティ強化用のエッジコンピューターを導入し、セキュア環境の構築に努めた。

 セキュア環境を用意できたら、次は住まい手の日常生活から得られる「生活ログ」の収集である。積水ハウスはこの目的のために、「PLATFORM HOUSE touch」というサービスを開発し、家庭内のエアコン、照明、給湯設備、シャッター設備の管理や、ドアや窓の開閉状態をデータとして収集する体制を整えた。本アプリは、不法侵入や窃盗を防ぐため「1階リビングの窓、不正開放を検知」といったメッセージを発する警告機能や、室内外に設置された温度センサーを利用した熱中症モニタリング機能など、住まい手に便利な機能も備えている。

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 202X年に向けて、積水ハウスは生活ログから得られる知見を基に、幸せにつながるサービスの創出を目指している。このサービスが使われるようになれば、さらなる生活ログの収集が可能になる。アプリの利用は、現在のところ新築住宅だけだが、リフォームやマンションへの展開も計画しているという。

 このように多様なサービスや生活スタイルに対応し、集める生活ログの幅が広がれば、さらなるサービス創出の循環も可能になる。吉田氏は「積水ハウスは、このプラットフォームハウス構想を、新たなサービス創出のエコシステムとして発展させたいと考えています」と述べた。

 生活者の行動データをマーケティングに活用する動きは盛んだが、収集において留意すべきこととは何だろうか。積水ハウスが収集する生活ログで着目すべきは、無意識の行動に焦点を当てていることだ。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・翻訳ツールなど...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/19 12:55 https://markezine.jp/article/detail/45211

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