第2回:カスタマージャーニーモデルの破綻はこちら!
USPからUBP(Unique Buying Proposition)へ
本連載で言及している「広告/マーケティングにおける7つの転換点」、三つめは「USP思考の限界」です。もちろんUSP(Unique Selling Proposition)を定義すること自体を否定しているのではありません。しかし、自社ブランドのUSPを、企業側だけの視点から思考する点には問題が極めて大きいと言わざるを得ません。
筆者は再三、コミュニケーションやマーケティング活動を、送り手から受け手へ、ブランド側から消費者へと、その主導権が移行していることを論じてきました。そのメガトレンドにSNSがドライブをかけています。
ですから、USP思想のS、Sellingという立場だけでブランドのコミュニケーションを思考することには限界があるのです。そこで、SNSからの情報抽出が可能であることを前提に、USPにおけるS、SellingをBuyingに変換してみましょう。つまりUBP(Unique Buying Proposition/ユニーク・バイイング・プロポジション)をいう概念を提唱してみます。
消費者が見抜いたブランドの価値に気づくには?
USPが「このブランドだけが提供できる価値(強み、売り)」と定義するなら、UBPは「私だけが見抜いているこのブランドの価値(良さ、買い)」になります。
「売る側」と「買う側」の主語が逆転するため、ユニークであることは「商品」から消費者である「わたし」に変換されます。USPではユニークであることは当然ひとつですが、UBPでは価値や良さを見抜いている「わたし」は複数存在することもあるでしょう。
「私だけがブランドの価値に気づいている」とつぶやく人や、その見立てが素晴らしい人(送り手も気がつかなかったことを評価してくれる人)は、何人もいるかもしれません。そうした緩やかな発信がSNS上にあることに、ブランド側は気づく必要があります。
ブランド側として訴えたいことは、もちろんあるでしょう。それを訴求することはいいのですが、それ以前に「そのブランドはどんなパーセプションを消費者に持たれているか」をベースにして、消費者の「買い」または「気に入っている」となるポイントは何なのかを観測しておくべきです。
その中でも特に「私だけが……」という発信から、ブランド側が気づいていなかった「見立て」を見つけられるように、アンテナを張って受信しましょう。それをねじ曲げてでも売りの主張をすべきではないでしょう。つまり、USPの設定のプロセスを変えようということです。