顧客との対話でプラスになったことは?
磯山:オフラインでの取り組みをしてみて、御社にとってプラスになったのはどんなことですか?
成田:弊社Webサイト上の「パーソナライズ分析」をその場でやっていただいているので、説明や設問でわかりづらい箇所があれば質問してもらいます。何がわかりにくかったのかが我々が直接認識でき、すぐに改善につなげられることがプラスになっています。
お客様が体験してくれている様子を目の前で見る機会はあまりないので、貴重な調査やヒアリングの場にもなっています。
小野:2023年の6月頃からオフラインでの取り組みを始めて、少しずつオフライン経由で新規購入してくださるお客様も増えて来ました。半年でやっと形になってきたと感じています。
磯山:オフラインとオンラインでLTVに違いはありますか?
成田:そこはまだ検証中です。ただ、弊社は年齢が高いお客様のほうがLTVが高い傾向にあります。オフラインで接点を持ったお客様も年齢が高めの方が多いので、まだはっきりとは見えていませんが、LTVは高いだろうと予測しています。
データだけでは見えない顧客の本当の姿
磯山:この連載でお話を聞く中で、直接お客様の声を聞くことを重要視しているD2C企業が多いと感じています。トリコさんもユーザーインタビューなどはやっていらっしゃいますか?
小野:はい。初回購入者からロイヤルユーザーまで、すべてのフェーズのお客様から1on1インタビューで話を聞いています。幅広くお話を伺って顧客解像度を上げ、商品として何が足りないのかを深掘りするようにしています。
成田:インタビューの回答は、バックオフィスのメンバーを含め社内の誰でも見られるようにデータベース化して、常にお客様の声に向き合えるようにしています。
また、インタビューに限らずSNSでの口コミもポジティブ/ネガティブともにSlackのチャンネルで共有しています。
磯山:そういうお客様の声を大切にする文化は、創業当初からのものですか?

成田:幅広くアンケートをとる文化はブランドを立ち上げる前からのもので、社内に根付いていますね。1on1インタビューも代表の花房が一番熱量高くやっているんじゃないかというくらいです。
磯山:やはり皆さん「ユーザーの悩みがわからないとビジネスもできない」とおっしゃいますもんね。
成田:データを分析すると見えた気になってしまいますが、そういう結果になった理由やお客様のインサイトは、結局聞かないとわからないですよね。
たとえば、以前に「朝ご飯置き換え」という訴求の広告クリエイティブでプロテインの新規獲得がすごく伸びたことがありました。このデータを見たら「みんな朝ご飯をプロテインに置き換えているんだな」と思うじゃないですか。
磯山:そう思いますよね。違ったんですか?
成田:実際に購入者に話を聞くと、朝ご飯にプラスしてプロテインを飲んでいる方も多く、全員が「置き換え」をしているわけではなかったんです。これは聞かないとわかりませんでしたね。
そこからクリエイティブを「1食置き換え」ではなく「食事の一部を置き換え」という訴求に調整するアプローチもできるね、という話にも発展しました。
小野:また「置き換えダイエット」というと、皆さん運動もした上で朝ご飯を置き換えていると思っていましたが、インタビューをすると運動が苦手という人が多いこともわかりました。「ダイエット=運動が前提」という固定観念があったなと気づかされました。
LINEのオープンチャットで「FUJIMI ダイエット部」というお客様同士のコミュニケーションの場を作っているのですが、そこでも運動の話題より簡単なダイエットレシピの方が盛り上がるんですよ。
磯山:やはり直接聞かないとわからないことは多いんですね。
小野:お客様の生の声をいち早くキャッチして次のアクションに活かすことを、会社全体としても意識しています。