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マーケティングリサーチにおける生成AI活用の可能性と留意点を解説!

生成AIを活用する上での留意点

 しかし、生成AIは強力なツールである一方、使い方を誤ると大きな問題を引き起こす恐れがあります。リサーチャーは生成AIの特性をよく理解し、適切に活用していくことが求められます。ここでは、生成AIを活用する上での留意点を解説します。

倫理的な配慮

 生成AIの活用には倫理的な配慮が欠かせません。特に、バイアスのあるデータで学習した生成AIは差別的な判断をする恐れがあります。たとえば、特定の年代や価値観に関して偏見を含むデータで学習した生成AIは、その偏見を強化するような結果を出力してしまう可能性があります。

 また、生成AIによる意思決定の透明性や説明責任も重要な課題です。生成AIがどのようなプロセスで結論に至ったのか、その根拠を明らかにすることが求められます。ブラックボックス化した生成AIの判断をそのまま受け入れるのではなく、人間がその妥当性を検証できるようにする必要があります。

生成AIの結果の解釈と活用

 生成AIの出力結果を適切に解釈し、活用することも重要な留意点です。上述のとおり、生成AIは学習したデータの偏りがそのまま結果に反映されてしまうことがあります。たとえば、特定の年齢層や地域に偏ったデータで学習した生成AIはその集団の嗜好を過度に反映した結果を出力する可能性があります。

 そのため、リサーチャーは生成AIの結果を自身の専門知識や経験と照らし合わせて批判的に検討し、結果の妥当性を吟味することが求められます。

 以上のことから、リサーチャーは常に倫理的な視点を持ち、データの選定や前処理の段階からバイアスの排除に努めるとともに、生成AIの判断プロセスの透明性を確保することが求められます。生成AIの活用において、公平性や説明責任を担保することはリサーチャーの重大な責務と考えます。

生成AIを活用するリサーチャーに求められるスキル

 生成AIを効果的に活用するために、リサーチャーにはどのようなスキル向上が求められるのでしょうか。以下にリサーチャーに求められるスキルを4つ記載しました。

1.生成AIの仕組みの理解と質問力

 リサーチャーはデータの特性や分析手法だけでなく、生成AIの仕組みや限界についても理解する必要があります。これらの知識を持つことで、適切に活用することができるようになります。

 さらに、「質問力」も必要とされます。生成AIから有用な答えを引き出すためには、適切な質問をすることが求められます。生成AIに明確な指示を与えることは、生成AIの出力をコントロールするための非常に重要なスキルです。

2. 生成AIへの適切な情報提供

 生成AIからリサーチャーが求める情報を得るためには、適切な情報を整理・選定し、生成AIに提供するスキルが必要です。

 たとえば、社内データを活用する際には、データの選定が特に重要になります。企業内で蓄積された知見を生成AIに提供することで、より精度の高い出力を得ることができます。ただし、社内データは外部データと比べて量が限られている場合が多いため、慎重な取り扱いが求められます。また、社内データにはセンシティブな情報が含まれている可能性があるため、プライバシーや機密保持にも配慮し、必要な情報のみを生成AIに提供する必要があります。

 また、クライアントから提供された情報を活用する際には、クライアントの課題を正しく理解することが重要です。その上で、課題解決に必要な情報を特定し、適切な情報を選定する必要があります。そして、選定した情報を生成AIに提供する際には、情報の取り扱いに細心の注意を払い、不必要な情報は提供せず、必要な情報も適切に加工するなどの対策を講じる必要があります。これらの対策を適切に行うことで、クライアントとの信頼関係を維持しつつ、生成AIを活用して目的の情報を得ることにつながります。

3.生成AIの出力結果の評価と改善

 リサーチャーには生成AIの出力結果を適切に評価し、改善する能力も求められます。生成AIの出力をそのまま鵜呑みにするのではなく、人間の知見と組み合わせて解釈し、生成AIの結果から理解度を確認しつつ、徐々に求めるものに近づけていくプロセスが必要とされます。

4.専門知識と生成AIの組み合わせによる洞察の創出

 生成AIの結果を解釈し、ビジネスに活かすためにはリサーチャーの専門知識が欠かせません。自身の専門性やこれまでの知見と生成AIの力を組み合わせることで、より深い洞察や、新たな洞察を生み出すことにつながります。生成AIに任せるタスクと人間が担うタスクを適切に切り分け、両者の強みを生かすことが求められます。

 生成AIに任せっきりにするのではなく、リサーチャー自身も常にスキルアップする姿勢を持ち、生成AIと共存していく必要があります。データリテラシーと生成AIの理解を深めつつ、適切なデータ選定と前処理、出力結果の評価と改善を行うこと、さらに、ドメイン知識や自身の知見と生成AIを組み合わせることで、より深い洞察を生み出すことができるようになると思われます。

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生成AIとリサーチャーの協働の未来

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この記事の著者

中嶋 正純(ナカジマ マサズミ)

株式会社マクロミル カスタマーディベロップメント本部セールスディベロップメント部 リサーチプランナー
2005年マクロミル入社。リサーチャーとしてブランド調査やライフスタイル調査など、様々な業界・領域のリサーチを担当。現在はリサーチプランナーとしてリサーチの企画提案に携わり、マーケティングリサーチを通じて顧客のマーケティ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/04 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46019

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