ANA Pocketの若年層利用を強化
――まず、ANA Pocketがどのようなアプリか教えてください。
板場:ANA Pocketは、これまで飛行機に乗ると貯まっていたマイルを、徒歩や電車、自動車などすべての移動手段においても貯められるようになるアプリです。
2021年12月にiOS版を、2022年7月にはAndroid版をリリースし、まもなく200万人(2024年7月時点)に達するユーザーの皆さまに利用していただいています。
――ANA Pocketの新規インストール数増加を目的に、TikTok広告を活用しようと思った背景を教えてください。
中村:ANA Pocketのリリース当初、ANAのマイルが貯まるという特性から、これまで出張などで飛行機に頻繁にご搭乗してくださっている40代から60代の男性の方に、多く利用していただいていました。
しかし直近では、飛行機以外の移動手段でもマイルが貯まる手軽さから、主婦層や今までと違ったユーザーの方の利用も増えており、ユーザー層が広がってきています。その中で弊社としては、より多くの方に利用していただきたいと考えるようになり、若年層へのアプローチを強化する方針を固めました。
アプローチ方法としては、複数のプラットフォームで広告配信をおこなっていきましたが、特にTikTokにはスタート時点から大きな期待を抱いていました。
TikTok広告の効果はクリエイティブで圧倒的な差が出る
――配信効果はどうだったのでしょうか。
中村:他プラットフォームではリーチできない層に届いている実感はありました。しかし、CPAをより下げていきたいとも考えておりました。
その中で、元々運用をサポートいただいていたアドウェイズさんに、TikTok Creative Exchange(以下、TTCX)のご提案をいただきました。
太田:それまで、ANA X様のTikTok広告では、他プラットフォームで配信している動画クリエイティブを転用していました。しかし、TikTokではエンターテインメント性の高いクリエイティブ、特にUGC(ユーザー生成コンテンツ)感の強いほうが効果が出ると認識をしていました。
太田:TikTokはレコメンドシステムが優れており、基本的なアカウント構成を整えれば、あとはターゲティングや配信時間などTikTokの機械学習によるパフォーマンスを最大化させる対応が基本となります。ANA Pocketのプロモーションでは、すでに運用の最適化ができていたので、クリエイティブの改善を目的にTTCXをご提案させていただきました。
TTCXにより広告主&代理店の制作負担軽減と効果向上を両立
――TTCXとはどういったサービスでしょうか?
村田:TTCXはTikTok広告の配信に特化したクリエイティブ制作をTikTok for Businessがサポートするプラットフォームです。そして、TTCXには大きく2つの特徴があります。
1つ目の特徴は手軽さとスピードです。クリエイティブ制作に困っている広告主様の広告クリエイティブを簡単に用意することが可能であり、TikTok for BusinessがTikTok広告に強い制作会社やクリエイターと広告主様をマッチングし、企画から制作、配信までをサポートしています。
村田:なお、TTCXを活用される際は、元々お持ちの広告素材をTikTokライクな縦型動画にする、クリエイターを起用した動画を制作するなど、お客様の要望に合わせた動画が制作可能です。
2つ目の特徴は、TikTokライクなクリエイティブを制作できる点です。効果の出やすいUGC感のある動画を制作したいと思った際は、こちらでクリエイター候補を提案し、ユーザーに受け入れられやすい動画制作をサポートいたします。
TTCXは多数のクリエイターとのネットワークを持っているため、ANA X様の伝えたい、大切にしたいポイントを押さえて、TikTokライクなクリエイティブを制作できるクリエイターを提案させていただきました。
ANA XがTTCXで制作した動画のポイントを解説
――クリエイティブの制作や配信はどのようにして進めていったのでしょうか?
松田:今回はUGC感を出すべく、クリエイターさんを起用した動画を作るNet New Standardというメニューを活用しました。様々なクリエイターさんの候補をいただき、そこから弊社にマッチしそうな方にお願いさせていただきました。
航空会社として「安心安全」で「上質なイメージ」も重視しているため、様々な選択肢からクリエイターさんを選べることは大変ありがたかったです。
――今回制作に協力いただいたクリエイターについて教えてください。
中村:今回は2人の方向性の異なるクリエイターさんにクリエイティブ制作をお願いしました。
1人目は「たける」さんというスマホ活用術などの動画をアップされている方で、「日常において電車などで移動するだけでマイルが貯まる」というANA Pocketの特徴を強く訴求してくださっていました。場面場面で背景を変えていただいたことで、動画を視聴したユーザーに対して、使用イメージが想起されやすいクリエイティブになっていたと感じます。
2人目は、「わたしのライフハック」さんです。女性の視点から、旅行を切り口にしたクリエイティブを制作いただきました。「旅行では移動距離が長くなるため、それに応じたポイントが貯まる」というメッセージを伝えてくださり、ANAらしさも取り入れていただいた素敵なクリエイティブでした。
どちらの方もANA Pocketの魅力を異なる切り口で訴求してくださり、ユーザーに「おもしろい」と感じていただける内容で、ANA Pocketに興味を持つきっかけとなるクリエイティブに仕上がっていました。
実施前と比較しCPAは40%減、全プラットフォームのCPA低下にも貢献
――今回のTTCXの活用で得られた成果について教えてください。
太田:既存の配信から、設定をほぼ変えていないにも関わらず、TTCXを活用して制作いただいた動画を広告に追加した直後から、目に見えてパフォーマンスが向上しました。
特にCPAは変更前から40%低減させることができ、また既存のクリエイティブより再生完了数も増加しています。
中村:新規ユーザーの獲得はもちろんですが、認知施策としても非常に効果的だったと思います。幅広いTikTokユーザーにリーチすることができ、広告からの流入だけではなく、指名検索数の増加などの効果にも寄与していると感じます。
今回TTCXを活用したことで、これまでオウンドメディアなどを通じて獲得できていたANA Pocketの顧客層とは、異なるユーザーの獲得につながったと考えています。
さらに今回の施策でインストールにつながったユーザーは、わかりやすくアプリの特性を表現している動画を見て理解してくださっているのか、他プラットフォームに比べてアプリの使用継続率が高いというデータも出ています。
松田:広告のインプレッション数も高いため、すぐCVにつながらなくても、またどこかのタイミングで「ダウンロードしてみよう」となる、いわゆる「間接CV」にも貢献していると考えています。実際、広告配信期間中のオーガニックでのインストール数も増加しています。
太田:TTCXの導入背景である課題は解消されたため、TikTok広告の予算は以前よりも増加しています。デジタル広告全体のCPAも20%低下しており、その結果をけん引しているのがTikTok広告です。
TikTokはクリエイティブファースト
――今回の取り組みで、学びや気づきなどあれば教えてください。
板場:今回の取り組みで、TikTok広告を活用すれば若年層にリーチさせることができるということを実感できました。周りの若年層の友人に話を聞いても、TikTokをはじめとしたショート動画を視聴していることが多く、10秒〜15秒の動画であっても内容を細かく覚えていると言います。それが広告であっても同様であることが、今回の取り組みでわかりました。
松田:過去の経験則をもとに、今回制作したクリエイティブでは、冒頭にANAのロゴを表示しましたが、やはり今回のTikTokの取り組みでも良い結果が得られました。
加えてロゴが浮かび上がる際の効果音には、テレビCM、空港でのチェックイン時や機内の安全ビデオなどでも共通して使用している効果音を用いています。ロゴと合わせて、親しみや安心感につながったのではと思います。
村田:冒頭の音声もフックになっていました。TikTokは音声ありでコンテンツを視聴するユーザーが多いため、ANA様の特徴的な効果音が印象に残ったのだと思います。
TTCXを活用したクリエイティブを活用するのは航空業界や旅行業界でも先駆けた取り組みでしたが、初速から成果が出て、最終的に良い結果となり大変嬉しく思っています。
また、TikTokではクリエイティブをクリエイターコンテンツに変えるだけで大きな効果改善が期待できるということの証明にもつながりました。
太田:従来もUGC感を意識したクリエイティブを制作していたものの、クリエイターさんに制作いただくことで圧倒的な効果が生まれたのは、大きな学びになりました。
新たな広告プロダクトも活用し、ANA Pocketの認知を拡大
――最後に今後の展望について教えてください。
太田:TikTok 広告ではTTCXをはじめ、様々なアップデートやプロモーションに役立つサービスをリリースしています。これからも新たな機能が開発されると思うので、ANA Pocketのプロモーションにつながるご提案をしていきたいです。
村田:現在、TikTok for Businessでは、新たなソリューションとしてTikTok Creative Challenge(以下、TTCC)の開発を進めており、現在テスト中です。
TTCXではANA X様に合ったクリエイター候補を制作会社とともにTikTok for Businessから提案させていただきましたが、TTCCではクリエイターが自ら各広告主様の動画に応募をする仕組みとなっています。
具体的には、広告主様に投稿依頼のご条件をまとめていただき、その内容に合ったクリエイティブをクリエイターさんから応募をいただきます。
クライアント様はその中で好ましいと思ったものを広告として配信することができますし、クリエイターさんと直接やりとりをしてクリエイティブの修正依頼をすることも可能です。
より高いパフォーマンスを生み出すポテンシャルを秘めているので、ANA X様をはじめ、様々な広告主様に利用いただきたいですね。
松田:おもしろいソリューションですね! TTCCにもぜひ挑戦してみたいです。ANA Pocketは「飛行機に乗るタイミングだけではなく、日常でもANAを感じて欲しい」という、ANAグループの想いが込められています。
これからもTikTokをはじめ、様々なプラットフォームでアプリをご利用いただける方を増やす活動を行い、気軽に日常でANAを感じていただける瞬間を生み出していきたいと思っています。