MUJIファンを巻き込む共創プロジェクトを推進中
野崎:内賀嶋さんが良品計画に転職された際は、デジタルコミュニケーションの部署に所属されていたと伺っています。キャリア支援をしている方で、デジタル文脈で事業会社のマーケティング職に転職する方の大半は、デジタルエージェンシーやCRMベンダーなどでデジタル寄りの職域を経験しています。
しかし、内賀嶋さんは営業職、販売職、プロモーションプロデューサーなどを経てマーケティング職に転職しています。今回の記事では、一般的なルートとは異なる内賀嶋さんのキャリアから、事業会社のマーケティング職を目指す上で必要なことを考えます。
まず、現職でどのような職域を担当されているか教えてください。
内賀嶋:私が所属するオープンコミュニケーション部は、商品やサービスの価値を最大化させることをミッションに、マーケティングやコミュニケーションプランを策定・実行しています。
そのオープンコミュニケーション部の中で、顧客分析やお客様・スタッフなど無印良品に関わるステークホルダーとの共創企画を推進する「CRM課」に所属しています。転職時から課は移動していますが、職域は特に変わっていません。
CRM課では、2022年11月より始動した「アンバサダープロジェクト」を主に担当しています。本プロジェクトでは、日頃よりSNSで無印良品をはじめとした様々な情報を発信されているクリエイターさんとつながり、展示会や先行体験、商品開発など、双方にとってwin-winな取り組みを通じ、認知・売上の促進を目指しています。
クリエイターさんは無印良品の1人のお客様であり、消費者代表でもあるので、企画の中でいただいた声や発信内容は、リアリティがあってとても参考になります。
お客様の声をダイレクトに商品化した共創企画
野崎:一般的に、CRM課というとデータを収集・分析しながらクロスセルやアップセル施策を考えるイメージが強いですが、少し異なりますね。具体的な共創観点の事例を1つ聞かせてください。
内賀嶋:たとえば、お客様のアイデアを形にした「靴下企画」です。アンバサダープロジェクトの立ち上げ当初、様々なクリエイターさんと対話する中で、「新商品情報を先に知りたい」「商品開発をしたい」といった声を多くいただいたことから、まずはメディア向けに実施していた新商品展示会にクリエイターさんをお呼びしました。
新商品展示会では、クリエイターさんに様々な発見をしていただけたとともに、商品開発に携わるメンバーが普段の開発では気づかないお客様視点の意見や専門的な知見に触れるきっかけを作ることができました。
さらに、新商品展示会で得たおもしろい科学反応とお客様の声に寄り添った商品開発を目指し、企画の1つとしてクリエイターさんと共同で商品開発をしてみようという運びになりました。その第1弾が「靴下企画」です。
本企画では、日常的に使用する商品の中でも毎日着用し、無印良品でも代表的なアイテムである靴下に着目し、計9名のクリエイターさんとともに、ママ視点、男性視点、キャンパー視点と様々な視点のお悩みを解決する靴下を開発しました。
ちなみに本商品開発に限らず、アンバサダープロジェクトはクリエイターさんと情報と機会のみでつながっており、投稿は任意です。報酬なども発生しない形での取り組みを軸としているので、いかにクリエイターさんに賛同・興味を持っていただける企画にするかを大切にしています。
野崎:クリエイターさんたちが、無印良品を好きな1人のムジラーとして参加し、仕事(案件)としていないのがポイントですね。新商品の情報を先に知ることができて、商品開発に自身の声が活かされるわけですから、経済報酬以上に嬉しい経験報酬ですね。
内賀嶋:そう思っていただけていたら嬉しいです。今回の企画は、ライブ配信でいただいたコメントやフォロワーさんへのアンケート結果をアイデアに活かしたり、発売のタイミングで店頭イベントを行ったりと、クリエイターさんと相談しながら経過も含めて一緒にやりたいを実現できたのが良かったです。またママさん視点で開発した商品は、その後アイデアが別商品に採用されるなど、横展開につなげることもできました。